市場では手に入らない素材を探して~SDGsも視野に入れ、仕入れ先をゼロから開拓する~デニムリースの坂下恵子先生の挑戦【ハンドメイド講座情報マガジン】
『独自の仕入れ先をいかにして開拓するか』
という問題も、魅力あるオリジナルレッスンを作るにあたり、
とても重要な問題のひとつ…
仕入れ先開拓方法は、本来ならば
ビジネスの生命線でもあるので
なかなか大っぴらには話せない内容でもあるのです。
でも、この影の努力を知ったら、
オリジナルで講座をつくることの凄さについて
すこしでもみなさんにお伝えできるかもしれない。
ハンドメイドの講座やレッスンを作るって
生半可なことじゃないのです…!
オリジナリティあふれる
大人気のデニムリース講座を運営する
Fleur cafe * Flannelの坂下恵子先生が
快くお話しくださいました。
デニムが可愛いリース素材に変身?!大人気『デニムリース』誕生のきっかけ
「リースってお花でつくるものでしょ?」
Fleur cafe * Flannelのリースはそんな既成概念を覆します。
坂下恵子先生がメインで使用しているのはお花ではありません。毛糸やデニム、Tシャツ生地などの色とりどり、素材とりどりの糸類(ヤーン)なのです。
▲『ふわふわ!癒される!可愛い!』と、minneでも販売すれば即完売。
大人気のファブリックヤーンのリースやコサージュの生みの親は、Fleur cafe * Flannelの坂下恵子先生です。ご自身が開発したオリジナル技法のレッスンをオンラインで全国展開しています。
▲使用する可愛い素材(1)カラフル毛糸
▲使用する可愛い素材(2)Tシャツヤーンやデニムヤーン
現在は大人気のデニム素材を使ったリースのオンライン講座を開催中です。
▲デニムリース(1)四角いフォルムもスタイリッシュ
デニムでリースをつくるという発想、リースのエレガントさやかわいらしさと、ボーイッシュなデニム素材の新感覚の組み合わせ。
オリジナリティにあふれていて、人気になるのがとてもよくわかります。
実はこのデニム素材の裂き布なのですが……
「デニムのリースを作るために使える、デニムヤーンを安定して仕入れたい。どうしたらいいのだろう」
そのことでずっと悩んでいたという恵子先生に、一般のお店や問屋では手に入らない素材を探したい時の、仕入れ先開拓の苦労についてお話をお伺いいたしました。
コロナの影響で市場から素材が消えた!
篠原「そもそも、なぜデニムでリースを作ろうと思われたのでしょうか?」
恵子先生「そもそもは、可愛い毛糸を見つけて、これが可愛いお花にならないかしら? と、2004年頃から、あれこれ試していたのです。
フラワー講師をしていたのですが、夫の転勤で引越しが多く、造花やプリザーブドフラワーが近くで簡単に手にはいらなかったりしたのもあり、どこにでもある資材がお花になったらいいな、と考えたのです。
可愛く、量産できないかと試行錯誤を始めたのですが、途中子育てやさらなる引越しで中断せざるを得ず…。
2017年には旭川に引越しして、お友達も生徒さんもゼロに。子供が学校に行ってる間に何かしよう、と思い立ち、毛糸リースをもう一度考え直しました。
そしたらスイスイアイディアが浮かんできて! ミンネにトライしたら、飛ぶように売れたのです。
毛糸のリースは見た目も暖かくて、クリスマスシーズンにはぴったりで大忙し。でも冬が過ぎたら毛糸は人気が落ちるな、と思い、別素材でも色々考えました。
そこで、デニムやTシャツ素材のファブリックヤーンで作ることを思いついたのです。
▲デニムリース(2)ハート型 形も自由自在
それで販売して見たところ、やはりとても人気でした。そこで、2019年から毛糸リースとデニムリースのオンライン講座を始めました」
恵子先生「でも2020年のコロナ第1波で、まず伸縮性のあるTシャツヤーンが店頭やネットからなくなってしまいました。なぜかというと、淡い色などはマスクの紐不足で代用品に使われるようになったためです。
そうこうするうちに、国際的な流通の関係なのか、デニムヤーンがどこにも無くなってしまったのです。
でも、布からでもヤーンはできるし、受講生さんには、手芸ショップでデニム生地を購入してやりましょう、と言うことをお伝えして対応してました」
▲デニムリース(3)革タグとの組み合わせも素敵
恵子先生「でも、自分のもう一つのコンテンツである、子供の古着でリースを作ろう、というSDGs(※1)の取り組みとのリンクを考えると、素材のデニムやTシャツヤーンは、工場で廃棄される物を取り入れて、地球環境や社会の循環のためにもなる講座を作りたいと思っていたのです」
▲古着を使ったリース(1)
▲古着を使ったリース(2)
篠原「なるほどです!それでデニムヤーンリースに取り組まれることになったのですね」
仕入れ先開拓はアタックあるのみ
篠原「仕入れ先の開拓について素晴らしい進展があったということで、まずはそのお話をお聞かせいただけますか?」
恵子先生「はい。結論からいうと、工場で規格外となって廃棄されるデニムが5月末に1反手に入りました。私の受講生さんがそれをヤーン状にして使えることに。そして、受講生さんのうちおひとりの方が、専門的にカットを担当して販売用を作ってくれることになりました」
▲JAPAN DENIM(1)
篠原「おお、それは良かったです!よろしければ、どのような道筋で、仕入れ先を開拓されたのか、差支えのない範囲内で教えていただけますでしょうか」
恵子先生「はい。3月に東京でジャパンデニムの展示会があると知り、何かピンと来たんです。でも実際どう行動していいかわからない。
ちょうどその頃、篠原さんと一緒に話題のSNSのクラブハウスをやっていて、お話する機会がたくさんありました。
私からみると、篠原さんは活動的で常に道を切り開いている憧れの存在。
篠原さんだったらどう行動をする?と相談しました。
色々な経験談を聞いて、その行動力に驚くことばかり。そして出た結論、それは〈アタックあるのみ‼️〉(笑)
お話を聞かなければ、多分今もただ考えるだけの日々だったと思います。
私が今までやらなかった〈アタック〉、それを実現できたのは篠原さんのお話のおかげなんですよ!
もうこれは展示会に突撃しかない‼️と思い主催側の自治体に電話をしました。
そしたら何と!
その展示会はオンラインの展示会で、出店者と話すのは専用のメッセンジャー、実際の展示会場には商品が置いてあるだけで誰もいません…といわれたのです💦
ご時世だなぁ、と」
篠原「うわわ、恵子先生、そんなにもおっしゃってくださって、ありがとうございます!(恥ずかしくてうろたえます!突撃体質なだけなのに……!)なるほど……!コロナで展示会はどこもオンライン化ですよね💦今までのように展示会で担当者さんと繋がりたくてもなかなか難しい状況ですね」
恵子先生「はい。そこでとりあえず、その出展側の岡山、広島エリアの自治体のうち、広島の某市に、私の取り組みや工場の規格外品を譲り受けさせてくれる工場は知らないか聞いたところ、工場はお知らせしかねるのでご自分で調べてください、と💦
他の自治体にも聞いてみて同じ反応だったので、オンライン展示会に出してる工場に問い合わせました。
3つの工場のうち、1軒は、うちは廃棄する生地がないようシステムを整えてる、というお話。
それは素晴らしいのでいいとして、もう1軒は、まぁ販売するのは可能です、くらいの反応で価格も高く決めかねる状態。
そして1軒は、取り組みはとっても素晴らしいです、賛同します!という好反応で、来週に切れ端のサンプル送りますね!と言ってくれました」
▲デニムリース(4)どんな形も自由自在
恵子先生「ところが……。その来週、待てど暮らせどサンプルは来ず、10日くらい経って連絡したけど反応なし。その後も何度も連絡したけど連絡つかないという結果になってしまいました(泣)
先方からサンプル送ると提案して下さり、こちらからは特に無理なお願いはしてないのになぜだろう??と思いましたが、色々なご事情があるのかもしれません。ご縁がなかったと諦めました。
そして、一からジャパンデニムの関係者探しを始めました」
篠原「(恵子先生、そこで諦めないのが凄いです…!)」
▲岡山・倉敷 JAPAN DENIM使用作品(1)
恵子先生「そこでもう一度考え直してみました。
日本には世界に誇る素晴らしいジャパンデニムを作っている工場がたくさんあります。その中で、ビビッと来たエリアが、岡山・倉敷。
以前(素敵だな)と思ったジーンズが、倉敷のものだったことを思い出しました。
それで、倉敷のデニムの関係者を探し始めたのですが、普通のネット検索ではうまく探せず。
なので、ふとクラブハウスのプロフィールから探してみるのはどうだろう、と思い、岡山・倉敷とプロフィールに書いてある人をかたっぱしから検索してみました」
篠原「えええ?!そんな方法を…?!」
恵子先生「そうなんです。するとお二人ほど可能性のありそうな方が浮上しました。おひとりの方は岡山倉敷で、衣料品店を経営、学生服などを中心に生産販売をしている方。
商工会議所関係のことも色々書いてあったので、この人しかない!と思い、インスタでアタックしたのですが、『デニムは扱っていないので、ちょっとわかりません。誰かに聞いてみますね』と言うお返事。でもついに追加の連絡は来ませんでした。
そしてもうおひとりの方は、岡山倉敷で、裁断士という、お洋服の生地を裁断している方。裁断で出るゴミの廃棄などからSDGsにも興味を持ってると書かれてました。
この人だ!と思ってクラハのプロフィールからSNSに飛ぼうと思ったら、インスタやTwitterの記載がない💦
クラハはその人がルームを開くか、SNSの連携をしてくれない限り連絡出来ないんだ、と痛感。
その方に連絡を取るためにいろいろと方法を模索したのですが、どうにもアプローチの方法がなく、やっぱりだめか…と。
他の手段でだれか探すか…とあきらめ半分で、でも数日後にまた裁断士さんのClubhouseをみたら、その時はTwitterが連携されていました。
そこで慌てて事情をDMで説明、賛同して頂き、トントン拍子にサンプルを頂きました。ただ、色々説明を聞くと問題も多く…」
篠原「恵子先生、人脈を切り拓いていく力が凄いです…!」
予想もしていなかった問題が。まさかデニムが使えない?!
篠原「ちなみに、色々な問題というのはどのような問題だったのでしょうか」
恵子先生「それが、そもそも普通のジーンズの厚さのデニムそのままでは、リースには使えないかもしれないという問題でした」
▲JAPAN DENIM(2)
恵子先生「そもそも、デニムは洋服にする前の織りあがった状態は、ガチガチに硬い。それを洋服にするには洗い加工が必要。でも、規格外品は洋服にしないので基本的に洗い加工がしていない。
普通のジーンズの厚さだとリースには不向きで柔らかい薄手が希望なのに、ガチガチの硬さでは絶望的でした。
規格外品(※2)でも頼めば1反丸ごと洗い加工してくれるとのことですが、コストもかかる上、洗うとシワシワになりそのままでは真っ直ぐに切れないというお話しもでて…
とにかくもともと薄手で洗い加工が必要ない生地が出たらお願いしたい、と頼み待つこと数日。
海外ブランドのシャツにも使うようないい生地があります、と連絡を受けてサンプルをいただき、一反買い取るまで漕ぎつけました」
▲デニムリース(5)お花と組み合わせて
恵子先生「深めのインディゴで柔らかくとても良い生地だったのです。つい先日、生徒さんに切り分けて配送しました」
これからのチャレンジ~生徒さんたちと一緒にウェブ販売会を計画中~
恵子先生「本当はコンスタントに色々な生地を仕入れ、福祉施設の方にお仕事としてカットして頂く、というところまでできたらという夢があります。
でも今は一反仕入れて、私から受講生さんに分配するのがやっと💦
これからもまた生地を仕入れられるかはわかりませんが、チャレンジしてみたことで色々と勉強になりました。
改善できるところをより良くしていって、前へ進みたいと思います」
7月中旬には生徒さんたちと一緒にデニムヤーンリースの作品のウェブ販売会を計画中だという恵子先生。
今後の展開がたのしみで目が離せません。
リースやお花が大好き、布や毛糸でも作ってみたい! 地球の環境のことも考えながら、社会や人に優しい活動をファブリックヤーンリースを通してしてみたい、と思われた方は、まずはぜひ恵子先生のInstagramで素敵な作品の数々を見てみてくださいね!
Fleur cafe* flannel
Instagram https://www.instagram.com/fleurcafeflannel/
注釈
(※1)SDGs……SDGs:Sustainable Development Goals 2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された,2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標のこと。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます(外務省HPより引用)
(※2)規格外品……この記事内では、衣料品として流通するA品に対して、おりや傷などで衣料品とはならないが、布地としては十分に使用可能なB品のことを規格外品と表現しています。B品は買い手がいなければ廃棄となってしまいますが、地球環境や再生可能な社会のために、価値ある資源を有効に活用していくことも大切であると考えます。
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