優しく“死”に触れるアドベンチャー「The First Tree」――インディーゲーは解説音声を入れてくれ
キツネを操作しながら美しい世界を旅しつつ、ある男性の過去を紐解くアドベンチャー
2018年11月リリースなので今更感もすごい「The First Tree」だけど、なかなか面白かったので改めて話をしよう。
本作の登場人物は子供を探す母親キツネ、ジョセフという男性、レイチェルという女性。ジョセフはある日、自分がキツネになった夢を見る。プレイヤーはその夢の中のキツネを操作しながら色鮮やかな世界を旅し、その間ジョセフがレイチェルに対して語る父親への複雑な想いを聞く……という内容だ。音声はすべて英語なので、プレイ前に「設定」から字幕を日本語に変更しておこう。
キツネを操作していると、そのうち光るオブジェクトを見つける。ここに触れるとジョセフの語りがスタートし、それを聞きながらまた次のオブジェクトを探していく。フィールドにはいくつかオブジェクトがあるが順番は関係なく、内容もどこから聞いてもとくに問題ないものになっている。オブジェクトをすべて見つけると次のフィールドへ移動できるようになり、ジョセフが語っている状況をより深く理解できるようになる。
一方、キツネにも物語がある。彼女はいなくなってしまった子供を探して世界を巡っている。その先にたどり着くのが「はじまりの樹」だ。キツネの行動はなんとなくジョセフの語りと似ていて、彼女の結末についても何となく「生」や「死」、ちょっと抽象的だけど「巡る命」のようなものについて考えさせられる。あと、ウサギとか鹿とか色んな動物が出てくるのもいい。
それと、ゲームなのでジャンプとか、気持ちパズルのような操作を求められることもある。ただ、それはジョセフが語る内容の一端を体感するためのギミックで、プレイヤーの力量を試すようなものではない。あるアイテムを収集する実績要素は多少シビアだけど、クリアするだけなら深く考えなくてもいい。ただ、これもまた別の仕掛けと連動しているのがウマイ。最後に「そういうことか……!!」と唸らされた。
美しい背景グラフィックの世界を歩き回るだけでも満足度は高いし、この世界に不釣り合いな人工物もジョセフの過去とリンクしていて、彼の夢というのがよく分かる。ジョセフの語りそのものがBGMのような部分もあるが、ここぞというところで映画的に盛り上げる演出もあり、サウンドにもしっかりとこだわりが感じられる。よく練られたゲームなので、気になったら遊んでみてほしい。
インディーズゲームは開発者の声をゲーム内に入れてくれ
それで、ここからが本題なのだけど。
本作にはストーリーを進めるオブジェクトのほかに、設定を変えるとフィールドに開発者の音声メモのようなオブジェクトも現れる。これに触れると、開発者がこのゲームについて色々と語ってくれているのが分かる。もちろん音声は英語で字幕もないので内容そのものはほぼ分からなかったけど、これはすごくいい仕組みだと思った。
断片的だけど「このゲームのコンセプト」「グラフィック」「音楽」みたいなゲームの根幹とか、ストーリーをより理解する上で必要そうな「狼とは」とか、めちゃくちゃ聞きたい話題だろそれみたいなものばかり。あと、英語だからまったく分からないし間違っているかもしれないけどこのゲームのジョセフは開発者の体験が色濃く反映されてるのかなと思ったし、「好きな(影響を受けた?)ゲーム」とかも話してて、タイトルだけはかろうじて聞き取れたのでフフッとなった。
それと、このジョセフの声を担当しているのは開発者のDavid Wehle氏みたいなんだけど、普通にナレーション上手くてひっくり返った。英語だからそう感じただけかもしれないけど、アクターかと思ったよ。音声メモにはレイチェルを担当した女性のアクター(こっちはプロっぽいのか?)も入ってて、彼女もかなり色々な話をしていたようですごく興味深かった。
※あとでウィキみたらこの女性が開発者の奥さんとか出てたけど、色々腑に落ちた。まあどこまで書いてあることが合ってるのか分からんけど
いわゆるインディーズって、コンシューマのように取り上げてもらえるかは微妙なところで、何か言いたいことがあっても聞かれる機会は圧倒的に少ないじゃないですか。ただ、こういうカジュアルなインディーズほど好むのはコアゲーマーって面もあると思うし、そういうプレイヤーって開発の裏話は聞きたいと思うんじゃないかなと。まあ自分がそうだってだけなんですけど。なので、言いたいことがある開発者には(あえてプレイヤーに委ねるならねほりんぱほりんする気はねーですけど)、こういう知りたい人は知れるような仕組みを入れてほしいなと思いました。