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Newmoon 『Temporary Light』 (2024)
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6/10
★★★★★★☆☆☆☆
90年代後半には一旦廃れたシューゲイザーだったが、21世紀に入るとエレクトロニカやポストブラック、ヴェイパーウェイヴ、そしてメインストリームポップなどの他ジャンルのアーティストが自らの音楽にアクセントを加える要素として積極的に使い始め、今では欠かせない音楽ジャンル/表現技法の一つとなった。
しかしNewmoonの3rdアルバムは90年代初期を思い出させる王道中の王道。中でも、MBVの偏執ノイズやRideのブリティッシュロック感やSwervedriverのガレージ/コア感は無く、Beach Houseの室内ドリームポップ感も薄い、つまり何かと言えば残響と空間構成で聴かせる完全なSlowdive系統。実際にSlowdiveのドラマーにしてアンビエント作家のSimon Scottがマスタリングで参加している。
しっかりとしたボーカルメロディで聴かせるというよりは、ギターノイズの残響で生み出した幻想的な雲のような心地良さと、時折見せる雨雲や雷雲のように不穏な空気感、そのグラデーションの美しさで聴かせる。近いアルバムとしてはそれこそSlowdiveの1stだけど、あのアルバムが持っていたゴシック感は無く、何か人知を超えた自然界の息吹すら感じさせる音作りとなっている。歌詞も諸行無常を唱え死に思いを馳せていて、この音に何ともマッチしたものになっている。
王道過ぎて個性や面白みは特に無い。だけどこれが1992年にリリースされてたら名盤として語り継がれてたかもと思うくらい質は非常に高い。何より私が一番好きなSlowdive系統なので、ただただ感謝。