キュレーターってどんな仕事?
キュレーターの仕事をしていますと自己紹介しましたが、そもそもキュレーターってどんな仕事?という方も多いのではないかと思います。基本裏方仕事なので世間的にはなかなか理解されづらい職業ですが、楽しいことの多い仕事なので、まずはざっくりご紹介できたらと思います!
キュレーター勘違いあるある
キュレーターという言葉を聞いて、みなさんどんなお仕事をイメージされますか?
最近ではネット記事の情報収集や編集をする方もキュレーターと言うようですが、もともとは美術館・博物館で働くある職業のことを指します。
「キュレーターしています」と言うと「??」という表情をされたり、「学芸員です」と言うと「美術館の展覧会の会場で椅子に座ってる人ね!」と言われたりします。
一方で、海外に行くと結構知っている方も多く、数年前仕事でドイツに行った際に入国審査で「仕事で来てるの?職業は?」と聞かれて、「キュレーターです」と言ったら、「え?!君キュレーターなの?ドクター(博士)なの?!」と驚かれたことがありました(当時私は30歳前後でしたが、特にドイツなど身体が大がらな人の多い国では、私のような小柄な日本人は若く見られやすく、こんな若いのに?という意味を含んでいたようにも思います)。
こういった経験をいくつかしてみて、どの国でもというわけではありませんが、とくにヨーロッパ方面では、キュレーターという職業の認知度が高い印象です。
裏方仕事なので、知られていないこと自体私自身は何とも思わないのですが、一緒に働く仲間や関係者を見ていると、もっと彼らのプロフェッショナルな仕事を知ってもらいたい!とも強く思うのです。
またみなさまが美術館に行ったり展覧会を鑑賞する際に、キュレーターの仕事について知っていただいていると、より楽しんでいただけるかもしれないと思い、記事にすることにしました。
キュレーターの仕事
では本題です。
キュレーターとは、展覧会の企画をして準備する職業で、主に以下のような内容です。
展覧会の企画立案をする(〇〇展をやりたい!)
展覧会の構成を考える(展覧会会場の1章はこんな内容で、2章はこんな内容で…)
どんな作品を展示するか考える
作品の出品交渉をする(作品の持ち主や美術館にこの作品を貸して!と交渉する)
展覧会図録に掲載する調査研究の論文を書く。
展示替え現場の管理監督(実際に作品を壁にかけるときの現場立ち会い)
展覧会に合わせていろんなイベントを考えて実施する(トークイベントなど)
取材対応など広報業務
ただキュレーターと一口に言っても、美術館専属のキュレーター、新聞社の文化部や企画会社で働いているキュレーター、フリーで働いているキュレーターなど、働き方はさまざまです。
学芸員とキュレーター
ところで日本ではキュレーターという肩書きよりも、学芸員という肩書きをもっている方の方が多いです(ただ名刺裏面の英語を見るとCuratorという肩書きになっている確率高いです)。
どうして日本ではあまりキュレーターという言葉が使われず、学芸員なのか?
いくつか違いをご紹介します。
まず、キュレーターと学芸員の大きな違いのひとつは、学芸員というのは、日本では博物館法に基づいて、国家資格として「学芸員資格」という資格があります。この資格に基づいて、美術館で働いている方が多いので、日本では学芸員という肩書きが一般的になっているように感じます。
学芸員資格は年々取得が難しくなっていると聞きますが、文系の大学で決まった講義の単位をいくつか取れば取得できる資格です(教職免許なんかより全然簡単に取れます…!)。
海外にも似たような資格やトレーニングプログラムなどはあるのですが、日本で「学芸員資格」が必要となった場合、なかなか海外で該当する資格はありません。
次に実質的に挙げられる違いとしては、フリーやインディペンデントのキュレーターではなく、日本の美術館のキュレーターとして働いていると、先ほど書いたキュレーターの仕事以外の仕事が山ほどあります。
たとえば、その美術館の収蔵作品の管理や他館への貸出、ワークショップや学校との連携などのエデュケーションプログラム、取材対応などの広報業務、展覧会図録や書籍の編集作業、…などなど、スーパーマンなのではないかという仕事ぶりです。
こんななんでもやってのける学芸員は、スーパーマンではなく、「雑芸員(ざつげいいん)」と呼ばれたりもします(雑務が多い何でも屋さんということでしょうか…)。
これが海外に行くと、とても分業化されているのです。
キュレーターの仕事:日本と海外の違い
日本の学芸員も、展覧会の企画の仕事がメインとなりやすいことから、近年では日本でも学芸員のことをキュレーターと呼ぶことも増えてきたように思います。
では日本の学芸員の仕事って、海外ではどのように分業化され、どんな職業名がついているのか?というと、大まかに以下の通りです。
キュレーター:展覧会の企画立案
レジストラー:収蔵作品の管理や借用作品の管理
コンサヴァター:作品の修復
エデュケーター:教育普及プログラムの企画実施
カタロガー:展覧会図録の編集・制作
さすがにコンサヴァターのような修復のお仕事は、学芸員がやらずに、その専門家にお願いすることがほとんどですが、日本と海外でこんなに違います。
そしてここで言う海外とは、欧米のみならず、アジア圏や南米なども含めたものを指します。
なかなか文系の専門職・研究職って日本では理解されづらいのかもしれませんね。
キュレーターや学芸員になるための条件
ではキュレーターや学芸員ってどうやってなれるの?というと、
学芸員は一応国家資格なので、頑張って単位をとらなければいけません。
ただ資格を取得したからといってなれるかというと、そういうわけでもなく、ほとんどの学芸員志望の方は、公立の美術館、私立の美術館の求人募集に応募して、その道の就職活動をします。
そしてほとんどの募集要項に含まれている条件がこんな感じです!
学芸員資格をもっていること
大学院の修士課程以上を修了していること
専門分野の知識(たとえば日本近代美術、デザイン、工芸、現代アート等)
業務で使えるレベルの英語力
そしてもう一ヶ国語(…!)
コミュニケーション能力
(地方の場合は自動車運転免許)
最近はかなりいろんな美術館で募集が出ていますが、かなりハードルの高い条件を入社前から求められていますね…。そして中にはしっかり博士課程を修了した方までいます(冒頭のドイツのエピソードはそういうことなのです)。
一方でキュレーターは日本で資格はないですし、実力さえあれば、フリーやインディペンデントのキュレーターとして自分で名乗って、がしがし働くこともできます。
おわりに
そんなこんなでキュレーターや学芸員て何してる人なの?ということを少しご紹介させていただきました。キュレーターや学芸員以外にも、美術館で働いているスタッフはたくさんいますし、輸送会社さんや額装会社さんなどなど、プロフェッショナルな方々がいてこそのお仕事です。今後も展覧会をつくるプロセスや、他のプロフェッショナルなお仕事なども紹介していけたらと思います😘
最後まで読んでいただきありがとうございました!