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“もっと知りたい!枠予算のススメ”②『制度の柔軟な運用』_財ラボ分科会2024
みなさん、こんにちは。
一般社団法人新しい自治体財政を考える研究会(通称:財ラボ)事務局です。
今回は、財ラボ分科会2024「“もっと知りたい!” 枠予算のススメ②制度の柔軟な運用」についてお届けします。
財ラボが実施する分科会とは、通常の講演会とは異なり、より狭く深く、財オタと会員が一体となって考えるワークショップです。
本分科会では、福岡市に枠配分予算を導入した財オタの今村寛さんを講師にお招きし
「枠配分予算の仕組みは分かるけど、うちの自治体に導入する時にはどうしたら良いんだろう」
「枠配分予算を導入しているけど上手くいかない。何を改善したら良いんだろう…」
など、講演会では質問しにくい個別の課題・疑問について全4回に渡って今村さんが相談に乗っています。
*本分科会(全4回)の各テーマは、財ラボ会員の皆さんから募集した枠予算に関する課題や疑問を基に下記のとおり設定しており、各回先着応募のあった会員(5自治体)が、オンライン上で講師との対話を通じて枠予算に関する課題や疑問点を積極的に解決できる場となっております。
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第1回:対象事業の選定、配分額の計算
第2回:制度の柔軟な運用
第3回:政策推進・財政健全化と枠配分予算
第4回:自律経営と枠配分予算
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第2回目のテーマは『制度の柔軟な運用』。
参加した皆さんからは、次のような感想をいただいております。
・他の自治体のリアルな状況を聞くことができ、枠配分について悩んでいた部分の参考になった
・枠配分予算の意義について知ることができた
ご参加いただいた自治体の皆様、ありがとうございました。
本記事では、分科会第2回目の質疑応答の内容をお届けします。
※第1回分科会記事はこちら
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【会員対象】
・自治体財政部門職員
・自治体政策・企画部門職員
・財政課での業務の経験がある自治体職員
・財政に関心のある自治体職員
【質問者】参加者の皆さん
【回答者】財オタ 今村さん
◆首長や管理職の理解
①当町では枠配分を導入していますが、枠を無視する課もあれば、真面目に守ってくれる課もあり、温度差があります。他課のために自分のところの事業を減らされることに納得がいかない、といった声が上がっています。
まずは、 管理職が財政の全体構造を理解することが重要です。「財布は一つ、総額はこれしかない」ということから、「事業には優先順位がある」ということを理解していただく必要があります。
そして、予算編成通知などでそのことを全庁的に示し、優先順位が決められているという環境を作ることで、原課からの「どうしてあそこばかり」という意見を封じることができます。
福岡市では、7月に事前調査で経費の見込を照会するのに合わせて、企画部門で重点施策をピックアップして「強化施策」として位置づけ、これを枠外経費として要求してもらうことで、優先順位の考え方が盛り込まれます。
枠配分についても、優先順位の濃淡をつけた配分や圧縮率の程度で差異を示すことで、事業は等しく平等ではないという仕組みを作っています。
②(①回答を受けて)町全体として施策の優先順位が曖昧であることが課題だと捉えられました。そのために、予算ヒアリングの中で「(原課)三役で方針を決めてくれれば」、「(三役)担当課でどれだけやりたいと思っているか」という声が聞かれ、財政課は板挟みの状態にあります。
これまでの財政運営で余裕があった時は、近隣自治体と足並みを揃えたり、判断基準を設けずに希望の事業を個別に判断できたと思いますが、財源が厳しい状況となったいま、全体最適を見据えた調整が必要になっているのにそれが皆さん自分事になっていないがために、誰かが上手く調整してくれると思っているように感じます。
それを「みんなで考えよう」ということで、財政部門と企画部門が一緒になって、三役に対して優先順位そのものを判断してもらい、それを打ち出す必要があると感じています。
そして、優先順位が決まれば、限られた財源(枠)の中で、現場(各部門)で何を続けて何を辞めるか判断してもらうことが良いと思います。
まずは、三役に「なぜ枠予算やっているか」を分かってもらうことが大事ではないでしょうか。
また、大事なものは企画で優先順位をつけて、それ以外は担当部局で考えてもらう仕組み、ということを全体に知らせる場も必要だと感じます。
◆枠予算制度における現場のモチベーション
③枠よりも減らせた課に翌年度予算の追加確約をしている事例を見ますが、当町では翌年度に追加配分等をするだけの財力がありません。毎年の資金に余裕がない場合でも、各課のモチベーションを上げられる方策はないでしょうか。
毎年の資金に余裕がない場合でも、各回のモチベーションを上げられる方策はあります。福岡市では、枠配分に収まったらではなく、創意工夫(委託料を自前でやるなど)して、執行額が減らせたら、節約インセンティブ制度を導入し、原課の節約意識やモチベーション向上を仕組み化しています。(参考:第1回分科会回答)。
決算剰余金となる執行残を、当該年度または翌年度に追加配分するような仕組みです。
この取り組みは、執行額を10万減らしたから5万配分するというような話で決して大きな金額の話ではないが、原課のモチベーションとしては大事な取組だと捉えており、財政課ではできない執行上の工夫が可能となります。
◆枠配分制度と財政規律
④枠配分制度を導入すると財政課での情報把握が希薄になり、執行管理などが疎かになるのではないか危惧しています。例えば、枠内で後年度負担があると把握できずに困ることがあるのでは?
私自身の福岡市財政課長時代の経験からお話しますと、財政課で全ての事業を管理すると言っても結局見切れずに、数字調整だけをしている時間が長くなってしまいます。
そこで流用も制限をなくして、現場に権限を与えた代わりに、政策の推進に関わる重要な事業は一件査定にして市長まで上げる仕組みに変えましたら、非常に議論の質が高まって深い議論ができるようになりました。
後年度負担がある事業や、枠内だけで動かせないような事業についても(枠予算制度導入前よりも)きちんと中身を把握できるようになりましたね。
本来、守るべき“財政規律”とはそういうことではないでしょうか。
⑤現状、当市では配当や流用をすべて財政課で判断していて、事務負担も立ちゆかなくなってきているため、どの経費を(枠予算の)対象にするかを洗い出して協議してみたいと思います。
枠予算導入の初年度は、「現場が枠に入れるための工夫」を財政課が現場にレクに行かないといけないでしょうね。財政課経験者を現場の財政担当に置くなどで、うまくやるための工夫が必要です。できないから任せないではなく、任せたうえでできるようになるまでしばらくの間は助言指導することが重要だと思います。
◆物価高騰と枠予算
⑥物価高騰や人件費高騰により枠決めの適正な価格が出せず、またこれまで枠配分で薄く減らしてきた経費が、物価高騰で戻ってきています。原課からは「もう減らすところがない」という声もあり、限界を感じています。
物価高騰分も見込んで配分するしかないのではないかと思います。夏の事前調査で、必要な額を把握すると対象経費が増えるはずですが、それを100%は配分できないため、ある程度の圧縮率を掛けて配分します。
守れなくてもそれは全庁みんなで痛み分けするしかない、これもビルド&スクラップの一つ。必要な経費であれば、他を見直すしかないですし、そもそも見直せる経費かもしれない。
福岡市では、市のマスタープランの実施計画策定に合わせて同時に行革プランも作成し、見直し対象の事業をピックアップしています。優先順位をつけるとは、実現する事業だけではなく、辞める事業のことも勿論含まれます。
やはり、最後は「財布は一つ」ということですね。枠外経費(義務的経費など)で財政課がきっちり査定していくことも大事です。
また、財源を生み出したり、前倒し補正を実施したりといった財政課でしかできない差配をしていくことも必要です。
⑦当市でも枠配分予算を導入していますが、物価高騰もあり、特に電気料金が急激に上がっているため現状、光熱水費のみ枠対象外としています。枠配分予算の制度自体、今後どうするか検討しています。
令和4年度~5年度にかけて特に急騰しましたね。そんな時は緊急避難で枠外経費として計上させることもあり得ると思います。予算編成で大切なことは、政策上重要なことは財政課が議論してトップまであげる、そうではないことは現場で考えてもらうという方針です。
光熱水費の高騰への対応は政策としては大事ではないので、現場で考えてもらう方がよいのではないでしょうか。福岡市では、準義務経費(リース料など)は枠内だけど圧縮率はかけないことにしています(参考:第1回分科会回答)。
また、必要な額を照会して全体調整して配分する、というやり方もあります。
◆枠配分予算と大型事業
⑧当市でも枠予算を導入していますが、財政調整基金ありきの予算編成になってしまっています。財政主導で大型事業や事業の見直しを夏から調整して、収支均衡第一で進めている状況です。
枠配分と大型事業のレビューは一体で考えるものであり、それぞれの立場でやらなければいけないことをやる仕組みです。どこかで線引きをして、大きな取り組みは市長や行革といった大きなテーブルで判断し、小さな取り組みは枠配分の中で見直してもらうのが理想的です。枠配分は自分たち(原課)の中で何とかできる範囲の話となります。
(一社代表理事 定野)
原課に自由度を与えてモチベーションをあげることもポイントですね。締め付けすぎると、やりたいことも出てこない、そんな状況にならないようにしたいです。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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