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『ガラクタ学級の奇跡』---本の中の障害者05

題名:『がらくた学級の奇跡』
原題:"The Junkyard Wonders"
作者:パトリシア・ポラッコ 作,入江真佐子 訳
発行:小峰書店(2016年)
ISBN:978-4-338-23515-0

パトリシア・ポラッコの自伝絵本三部作のうちの一つ.

トリシャの両親は離婚しており,普段は母方のカリフォルニアで学校に通い,長期休暇は父方のミシガンで生活をしていた.ある年,「字が読めず特別学級にいた事を知る人が居ない」はずのミシガンの学校に通うことにした.

ところが配属されたのは「ガラクタ学級」と呼ばれる特別学級.トゥレット症候群,糖尿病,弱視,成長が速すぎる病気,緘黙など様々な障害を持っているクラスメイトがいる.担任のピーターソン先生は.何事も班活動でチャレンジさせる.保護者も様々なアクティビティに協力してくれる.普通級の生徒から揶揄われてもみんなで乗り越える.支えたり,支えられたり,協力したりしながら,それぞれがそれぞれに努力する様子が丁寧に描かれている.クライマックスでは,邪魔が入りながらも学校の科学フェアでみんなの思いが詰まったエンジン飛行機を無事に屋上から飛ばすことに成功する.

後日談も凄い.弱視のトムはアメリカン・バレエ・シアター・カンパニー(世界最高峰のバレエ団の中の一つ)の芸術監督に,緘黙のラヴァンヌはパリで活躍するファッション・デザイナー,トゥレットのギビーは月着陸船の設計にも携わったNASAの技術者(ギビーの告白によると,飛行機を飛ばした時の集合写真をアポロ11号の月着陸船に忍ばせたらしい.冗談かしら?本当かしら?),ポラッコ自身は有名な絵本作家,それぞれの能力が発揮できる道を歩んでいる.変わった子ども達がそれぞれに活躍する様子は『窓際のトットちゃん』のトモエ学園にも通じる.


*三部作の残り二つは,以下の作品.

題名:『ありがとう、フォルカーせんせい』
原題:"Thank you, Mr. Falker"
作者:パトリシア・ポラッコ 作,香咲 弥須子 訳
発行:岩崎書店(2001年)
ISBN:978-4-265-06806-7

題名:『ありがとう、チュウ先生 わたしが絵かきになったわけ』
原題:"The Art of Miss Chew"
作者:パトリシア・ポラッコ 作,さくまゆみこ 訳
発行:岩崎書店(2013年)
ISBN:978-4-265-85038-9



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