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小海苔書店-conoli books-
2023年10月20日 19:56
平日の昼時の公園は、赤ちゃん連れの母親たちと入れ替わるように、サラリーマンやOLのランチタイムに占領されていた。 会社の近くにあるこの公園に、明日香も例に漏れず自作の弁当を持参し毎日来ていた。 ひと気のないトイレ脇のベンチは、明日香の特等席で、そこへ腰掛けると、程なくして携帯が鳴る。「あーちゃん、もういる?」 毎日きっかり12時10分に同じセリフでかかってくるその電話に、明日香も
2023年10月20日 07:33
まるで統一性のない物たちと、それを品定めする人間との隙間を縫って先へ進むと奥の衣類コーナーでソレは一際目を魅いた。 明日香は思わず値札に手を伸ばし、食い入る様にソレを値踏みする。「何か見つけた?」後ろから夫の信二がデジカメとプリンターを抱えて明日香に話しかける。「それ、必要?」信二の手元を見てすかさず明日香が言うと、「めっちゃ安いよ!あーちゃんとの思い出いっぱい撮れるし!あ
2023年10月15日 11:48
母の訪問時で目が覚め、カーテンを開けると見事な日本晴れだった。 早朝からフルパワーの月子の母は、すでに着物を着ており、のそのそと起き出す太一と月子に朝食を作っていた。「ほら、月ちゃん、シャワー浴びてきて。太一さんは先にご飯たべて。」 当の本人達よりもソワソワし、張り切り、アタフタと動き回る母を見て、今日は結婚式なんだと実感させられる。月子は言われるがまま浴室に向かい、太一もそれに合わ
2023年10月13日 16:56
のろのろと濡れた靴を引き摺るようにして家に辿り着くと、太一はすでに帰宅していた。「あ、おかえりー」ビールを飲みながら呑気な声で迎える太一を、月子はまじまじと見つめた。「なに?なんかあった?」と見つめ返す太一に、「何もあるわけないじゃん」と、月子はつっけんどんにいくら弁当の入った袋をガサっと押し付ける。 なに怒ってんだよー、と子どものように唇を尖らせながら、太一は袋の中身を確かめた
2023年10月7日 17:44
忘れ物市が開催されている様子を見たのは、朝のニュース番組の特集だった。 結婚が決まり、昨日寿退社した月子は、婚約者である太一の部屋で、出勤時間に煩わされることなく、優雅な朝を満喫していた。 電子タバコを吸いながら、見るともなしにテレビを見ていると、電車に忘れられた様々な物どもが、「忘れ物市」と称されて売られている様子が映し出されていた。 「そんなのがあるんだ」と、月子が画面に食い入る