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『赤い月の香り/千早茜(集英社)』を読んだ感想。

※章ごとの感想になっています。ネタバレには特に配慮していませんので、お嫌な方はお気をつけ下さい。
簡単な全体の感想でいい、長文がお嫌な方は、読書メーターへどうぞ。
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1:New Moon


辞書を引きながら読まないので、脾病って何か分からなかったけど、前回とはまた違った感じで面白そう。
ローズウォーターの白湯なんて出されたら、すごく匂いそうだけど。
新城は、ガサツなイメージが強かったけど、カフェの場面では、揉め事をおさめるのが上手いなあと思った。

2:Crescent Moon


今回の主人公?朝倉満は、怒りをコントロール出来ないらしいので、もっと暴力的な人かと思ったけど、そうでもなかった。
後部座席もシートベルトを着用しないといけなかったと思うんだけど。
ピンクの髪の歌姫は、洋楽にP!NK、邦楽にもBONNIE PINKがいたので、頭に浮かんで仕方がなかった。(※BONNIE PINKは、むかし赤に染めてたというネット検索も出て来たし、PV見てもオレンジピンクに見えることもある。LiSAもピンクにしてたし、ピンクの髪の歌姫は検索すると沢山でてくる。)
オリザちゃんって、前作で出て来たモデル出身?の女優さん?
リリーが頼んだのは、三年前に再会した時に、おにいちゃんだと認識できた匂いなのか、今のおにいちゃんの匂いなのか、気になった。
さすがに、暴力団の用心棒をしていた人間が、芸能人の関係者、しかも兄だと知られたら、リリーはメジャーではやっていけなくなるかも知れないけど。お兄さんも、彼女といる限り、罪を重ねそうだし。それでも、彼女とお兄さんとの関係は、これで終わりなのかな?と思ってしまった。
前作より、物語も、文体もパワーアップしているように感じられたせいか、私もここで働いてみたいと思ってしまった。
献本プレゼントはずれたし、私には前作の、主人公・一香さんのお兄さんの話がもひとつだったので、読むのやめとこうか迷ったんだけど。

3:Pale Moon


一香さんから預かったものって、何だったんだろう?
朝倉くんは、女が苦手なのかな?と少し思った。
男が憎いから、レズビアンになる人もいるみたいだけど、仁奈さんが幸せそうで良かった。
夫に女性との浮気を認められず、離婚できない女性も、望む結果を手に入れられるといいね。
蓬ベースのハーブティーが気になった。
カンパーニュもしばらく食べてないので、食べてみたいな。食パンは、本格的なパン屋さんじゃなくても、パン・ド・ミで売られてるけどね。
天然酵母までは聞くけど、「薪を使って焼いてるパン(P.64)」って、高そう。
朔さんは日常的に買えそうだけど、一香さんは今何をしてるんだろう?

4:Flower Moon


また、一香さんのストーカーと、一香さん、クリムゾンスカイが出て来た。
朝倉くんは、クリムゾンスカイを、「夕焼けのことでしょうか(P.86)」と言っていたけど、私は夜型にも関わらず、朝焼けかな?と思った。
朔さんは、本当に、一香さんに甘いなと思った。
「一香さんはカリグラフィーの勉強をしている(P.89)」そうだけど、「香りに合った書体でラベルを作ってもらっている(P.89)」なんて。
二人の関係が男女関係に発展しても不思議はないけど、個人的にはそれ以上の強い絆で結ばれた関係希望。
仕事内容も、朝倉くんの方がきつそうに思えるし。(単に、作者が細かくなってきただけかも知れないけど。)
一香さんは下の名前で呼ぶのに、朝倉くんは苗字だし。
前作『透明な夜の香り』では、朔さんの求人は、女性が対象だった。
母の日?に、カーネーションを送るイベントはやめた方がいいと思う。
私は施設育ちではないけど、母親を早くに亡くして、「お母さんがいる子は赤いカーネーションを、いない子は白いカーネーションを送るように」言われて、ものすごく嫌だった人を知っているし。私も、子ども時代、母の日は負担だった。
ダマスクローズは化粧品や香りに興味がある人達にはよく知られた薔薇だけど、ローズ・ド・メは名前くらいしか知らなかった。
今回は、依頼された香りのスケールが大き過ぎて、またすごく具体的だったので、成人男性が通っていた小学校の教室の香りなんて作れるのかな?と思ってしまった。
嗅覚と記憶が密接な関係にあることは、よく言われているけど。プルーストの『失われた時を求めて』、知らんのか?と思ってしまった。
歳が同じだったというだけで、依頼人(持田くん)を、「くん」呼びし始めた朝倉くんが妙に馴れ馴れしく思えてしまって、最後まで慣れなかった。
元々、ここには、欠落した過去に取り憑かれた、感覚の鋭い人が雇われるみたいだけど、働いているうちに感覚が鋭くなっていってしまうようなので、ここを出た後、他の職場で働くことができるんだろうか?と思ってしまった。
人にしたことは、いつまでも、された方がよく覚えていると言われるけど、あんなにキッパリ忘れてしまえるものなんだろうか?
電話の内容では、今でもいいように使われているみたいだけど。(P.106の、「いまちょっと出先。今日は私用で、営業車じゃないから行けない。ごめん」ってとこ。)
持田くんをイジメていた男は、本当に、全て忘れてしまっているんだろうか?自分が彼に何をしたか、持田くんのように細かいことは覚えていなくても、イジメていたことは忘れていない気がする。
一香さんの時より、リキュールの出番が早い気がした。
赤い月もよく聞くけど、朝倉くんを追いかけてくる月は、どんな月なんだろう?
朝倉くんに、朔さんに頼まれたものを預けず、一香さんがこの洋館にやってくるのは、いつなんだろう?と思ってしまった。
朔さんは、何か、一香さんの時よりもパワーアップしたカウンセラーみたいになっているような気がする。一香さんの時にはあった感情が、朝倉くんにはないからだろうか?

5:Half Moon


「トラウマを抱える人はどこか自分に似ているような気がする(P.134)」
これは、今回の依頼人、橘さんについての言葉だけど。
朔さんが、一香さんや、朝倉くんを雇う理由が分かったような気がした。(それぞれの理由は、個別に明かされてるけど。)
一時期、スメハラで、きつすぎる柔軟剤の香りが問題になったことがあったけど。
お線香も、きつい香りのものが多いように思う。
私は、お隣の駐車場がフル稼働するようになってから、雨の日は音を遮断してくれるから好きになったけど。
子どもの頃は、雨の日は苦手だった。家の中にいても、ムッとしたり、肌寒かったりするから。
雨に濡れた植物や物は色鮮やかで、生き生きとして美しく感じられるけど、匂いも立つし、朔さんみたいに嗅覚がものすごく良い人には大変なんだろうな。「雨の日は匂いが押し寄せてくる(P.137)」ってのは、ちょっと分かるような気がする。私は、「匂いの記憶の蓋が開く(同)」とこまではいかない/知覚できないけど。音が押し寄せて来て、耳が痛かったり、しんどい時とかあるもん。
P.119で、朔さんが眉間に皺を寄せてしばらくかたまっていたのは、依頼人の女性の柔軟剤の臭いがきつかったからだろうか?
何の匂いもしないのに、柔軟剤を使うって、不思議な気がしたけど、そういうものかも知れないな。
味覚に異常がなくても、たまに体調不良などで味が分からない時があるけど、私は食事をつまらないと思ったことは殆どないし、依頼人のように、「ある意味、食に対してフェアになれたような気がし(P.127)」たこともないな。「エディブルフラワーみたいなものだと思(同))」ったこともないし。エディブルフラワーって、お刺身についてくる菊くらいしか食べたことないし。あまり好きじゃなくて、ベタッとした大葉やツマさえ避けてしまう。
依頼人が、自分を殴った母親をどうして求めるのか?は、父親が早くに亡くなって、二人で暮らしていたこともあるんだろうけど、身体と違って、心は嘘をつけるからかも知れないし。感情も一つじゃないから。読んでいると、彼女の世界はお母さんに支配されてしまっているのが分かるけど、彼女がそれを受け入れてしまっているので。
お母さんが、依頼人に厳しくなったのは、お父さんが亡くなった頃からだったらしいけど。
朝倉くんが依頼人にかそうとしたワンピースは、一香さんが着てたものだと思うから、襟がなくても、肌もあまり出ないだろうし、はしたないものではないと思うんだけど。
依頼人は、ものすごく厳しいお家に育ったような気がした。
私は、袖や丈の長さ、胸元の開き具合について言われて育ったけど、今はそこまで気にしてたら、お洋服が買えないし。
ゆったりした服が多いし、サイズも大きいものが多いので。

6:Blue Moon


何で、こんなに、朝倉くんは、卑屈になってるんだろう?私も、持田くんと同じで、朔さんに、朝倉くんは大事にされていると思うけど。
源さんの野菜は、確かに、「素人の野菜(P.146)」だけど、売ったら高そうな気がする。
?源さんの娘さんが熱中症で倒れた日、朝倉くんは、「熟れすぎたトマトで保存用のトマトソースを作っていた(P.156)」けど、こういった香りが強いものは、朔さんが留守にする日しか作れないんじゃなかったっけ?
一香さんにそう伝えた時と、状況が変わったのかな?
源さんの娘さんを登場させておかないと、源さんが死んだ時、相続の問題などで困るのかも知れないけど、「住んでいた人間の匂いは、薄まることはあっても消えません。(P.159)」というのは、ちょっと怖かった。中古には住めない…と思ってしまった。
朔さんが、雨の日が苦手な理由はよく分かったけど。
「僕はあなたの過去の幽霊と暮らしているので、すぐわかりましたよ(同)」は、言い過ぎじゃないかな?朔さんは、ユーモアは言いそうにないし…。
貯蔵庫の中の備品をくすねるというのは、あってもおかしくないエピソードだけど、朝倉くんが欲しいのは、朔さんが纏っていた香り(P.14)だけでなく、朝倉くんが複雑な感情を抱く女性という生き物の温もりでもあるのかな?
彼女?の茉莉花も、すっかり朔さんの作った化粧品などの支給品に染められてしまっているようだけど。
朔さんには、備品の減り具合だけでなく、性交や、性欲の匂いも分かるでしょ…。

7:Blood Moon


朔さんが待っているのは、源さんがいうように、一香さんだけなのかな?
四季折々の庭の植物の香りを閉じ込めた記録用のラベルも、源さんが言ってたように、朔さんには必要ないだろうし。
だったら、朔さんは誰を待っていて、何のために記録用のラベルを使っているんだろう?
一香さんが余りヒロインっぽくない気がするのと、私も二人の今の関係、距離感が気に行っているので、そのポジションに置かれるのが何となく嫌な感じがすることもあるけど。
自然は強いので、私はよく子どもの頃かぶれたし、香料があわない人もいるので、朝倉くんは確かに危ないことをしてたんだろうけど。しかも、彼に渡されていたのは、朔さんお手製のオーダーメイドの香りだ。
朝倉くんも入れる貯蔵庫に入れていた朔さんもどうかと思う。朔さんなら、朝倉くんがどんなことをしそうか香りで分かりそうだし。
朔さんはただ知りたいだけなのかも知れないけど、朝倉くんが「自分を落ち着ける香りがないと女性に触れられない(P.189)」のであれば、母親に取り憑かれたままの橘さんの時みたいに、突き放した方がいいような気がする。
(精神科医や、カウンセラーにも何か出来るとは思えないけど。彼が自分で、アンガー?マネージメントなどを身につけた方が良いような気がする。身体の方から精神に働きかける方法もあるし。)
朝倉くんも、いつか、ここから出て行かなければならない日が来たのかも知れないけど。
浦島太郎の玉手箱の話、煙ではなく香り説は、自分でも調べてみたい気がした。
(朔さんがいうと、どこまで本当か分からないので。)

8:Full Moon


祖母と母親との関係が良好ならああはならなかったと思うけど、朔さんちも父親はいなかったみたいだし、前作のお兄さんの問題を抱えた一香さんちにもいた記憶がない。
幼い朝倉くんが、猫は簡単に触らせてくれないことを知っていれば良かったのにと思った。
ジャスミンの花の香りを構成するアロマには、「不快や嫌悪を覚える糞尿臭や動物臭がある(P.196)」そうだけど、高級コーヒーのコピ・ルアクはジャコウネコの糞から採られる未消化のコーヒー豆(Wikipedia)だし。ムスクはジャコウジカの香嚢から得られる分泌物を乾燥した香料、生薬の一種(同)だし…。
今回の朔さんは、ずいぶん手の込んだことをしてたけど、あの診療所の先生って、漢方とか自然療法とかも扱ってたのかな?
朔さんと朝倉くんは同じ施設にいたそうだけど、朔さんは、朝倉くんが「どんな人間に育ったのか知りたかった(P.205)」そうだ。「人は変われるのか。親に拒絶された人間が正しい執着を抱けるようになるのか(同)」知りたくて、捜したそうだけど。朝倉くんのバイト先のカフェに「新城と行ったのは偶然じゃな(P.199)」くても、求人の誘いに乗ってくるかは賭けだったんじゃないのかな?幾ら、朔さんの鼻がきくとは言っても、人を支配することは出来ないし、そこまではしないと思うので。
朔さんが、朝倉くんが落としてしまった茉莉花の花を拾ったのは意外だった。
6:から、茉莉花とジャスミンが交互?に出てきて、ややこしい。おまけに、朝倉くんの恋人の名前は、「茉莉花まりか 」だし。
ジャスミンは、万人受けする香りではないと思うんだけどな…。生のものは違うのかな?
最初に来たのが持田くんで良かった。
私には、最後まで茉莉花の魅力が分からなかった。
(7:で、彼女を「危険に晒した(P.188)」ことに気づいて、何回も電話したり、メッセージを送ってたりしてたけど、それに対しては何もなかったし。)
一香さんにとって、源さんの館が隠れ家なのは、朔さん達がいるからなんじゃないかな?
あと、少し気になったのが、4:で、朔さんが持田くんに、「あなたの通っていた小学校の教室の香りを作ることは可能です。(略)ただ、あくまで、あなたにとっての教室の香りだということを覚えておいて欲しいのです。人はそれぞれ違う感覚を持っているのが普通なのです。同じ教室にいたからといって同じ香りを感じていたとは限りません」と言っていたんだけど。
だから、私には、朝倉くんが朔さんに伝えなかった、「(略)あなたが感じている世界を香りに変えて、二人で永遠を共有すればいいんじゃないですか。」という考えも、不可能に思えたけど。前作で、朔さんとミツコさんのやり取りを読んでいるし。
朔さんにとっての、「正しい執着(P.220)」は、「赦し(P.221)」らしいけど、これもちょっと今の私にはよく分からなかった。
新しく始まった朔さんと一香さんの関係が、一香さんが、「唯一無二の人の香り(P.219)」と、あまりにも大切に、特別視されすぎているように思えて、ちょっとついていけなかったし。
一香さんは朔さんにとって確かに特別だけど、源さんや新城のような存在にも、前作に出てきたミツコさんのようにもなれないのは確かなので。
生活も、人との関係も変わっていくものだけど、最後には、一香さんが、「風のような人(P.221)」にされてしまっていて、ますますついていけなかった。

朔さんは、源さんがいなくなったら、この洋館を離れるんだろうか?
朝倉くんには、会いに行くように言ってたけど、朔さんは、自分の母親の居場所を知っているんだろうか?今は会いに行く気がなくても、そのうち会いに行くんだろうか?などと気になったけど、このシリーズ?まだ続くのかな?


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