EUのマイクロプラスチック流失撲滅作戦
サスティナブルな社会の実現の文脈で、にわかにCircular Economy(CE)が注目されているのは、皆さんもご案内のところかと思います。
環境政策の最先端を走るEUにおけるサーキュラーエコノミーの原点は、2011年の「資源効率のロードマップ」かと思いますが、2018年のサーキュラーエコノミーパッケージ、2020年のサーキュラーエコノミーアクションプランと、変遷してきました。
その対策の中心は、これまた注目を集めている「マイクロプラスチック」
現在は、3本の柱で施策が推進されています。
この中の「Plastics strategy」におけるアプローチ方法は、次の3ステップ。
1.の達成のために着手したのはエコデザイン指令の改訂で、設計段階の配慮により、リサイクルを容易にしたり、耐久性を向上させたり、修理・修繕を可能にしたりすることで、汚染の源泉となるプラスチック流通量の削減を図りました。
2.については、「意図的」に添加されるマイプロプラスチックがやり玉に挙がりました。例えば、化粧品や洗剤、塗料、肥料あるいは人工芝などには、機能を発揮させるために、様々な種類のマイクロプラスチックが使用されています。
浅学ながら知らなかったのですが、人工芝には、顆粒状の充填材料が表面に散布されるそうです。これにより、フィールドのクッション性が向上し、自然な芝のフィールドのような外観と感触が得られると同時に、プレーヤーが滑るのを防ぎ、衝撃を吸収し、傷害のリスクを低減するのだとか。
具体的には、有機物で、不溶性で、分解しづらい5mm以下のポリマー粒子を、「意図的」に添加した製品の販売が禁止されます。産業分野や使用中に放出しない製品は対象外ですが、放出防止のための使用方法や廃棄方法について、マニュアル等での説明を要求しています。
3.については、EUが調査を行い、塗料からの流出がナンバーワンだったとか。
しかしながら、予備的な分析により、ペレットとタイヤ以外の排出源に対処する最も効果的かつ効率的な対策を特定するためには、その排出プロファイルと適切な代替物質のさらなる評価が必要であるとの結論に達したそうで、まずは、ペレットの規制を打ち出しました。
タイヤについては、摩耗によりマイプロプラスチックが放出されることから、既に、EURO7規則案において、タイヤの磨耗に関する具体的な制限値が設定され、その対象になっています。
ちなみに、ペレットとは、プラスチック製品を製造する際の原料で、一般的にシリンダー形状で、直径及び長さが数mm程度です。この業界に長く携わってきましたが、はっきり言って、簡単にこぼれます。これを防止する対策を講じなさい、というものです。
なお。マイクロプラスチックの辿り着く先については、塗料に関しての調査ですが、予想どおり、ほとんどが海域です。海中のマイクロプラスチックの撲滅には、陸域でのこれらの流失防止がマストであることは、言うまでもありませんね。
規制があるところに、事業者の負担あり。またしてもコストアップかと思われるところ、EUが曰く「逆に恩恵を受けますよ」ということらしいです。
とはいえ、年間使用量1,000t以上の事業者は、第三者認証をおける必要があるとのことなので、額面通りに受け取ることは難しいかと。キャパビルやサプライヤーに対する手順書整備といった、事務的作業は発生しますから。なお、1,000t未満の中小企業には緩和措置があり、認証の義務はありません。
ということで、3ステップが一応の決着を見ました。
今後「ペレット損失防止規則」は、欧州議会とEU理事会で審議されます。
両者で採択されればめでたく成立。EU、非EUを問わず、全ての事業者は発効から18カ月以内に、この規則で定められた要件を遵守義務が発生することになります。
欧州を見ていると、次から次に規制の法案が出てきて、正直、キャッチアップしていくのが困難極まりないです。ですが、エコデザイン・CEやEU-ETS・CBAM、CSRD・ISSBといった感じで、テーマ毎に捉えると、少しは理解も進みます。
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