白のオンガク
ジョン・ケージの『4'33’’』がネオダダの画家ロバート・ラウシェンバーグの『ホワイト・ペインティング』に着想を得たという資料を読んでから、8月はひたすら白いペンキを塗っていました。
単なる壁の塗装ならローラーが早いのだけど、あえて刷毛と筆を使って白い絵の具の上に何度も同じ白を重ねていきました。面白かったのは、同じ白のはずなのに、重ねられた回数や筆跡によって壁の表情が変わることです。窓からの光によっても朝から晩まで変わっていく。とにかく白だけを塗ったのに、「手描きの絵」はとても情報量が多いのです。
しかも心身共に、日に日に「白を塗る私」になっていく。1日に数時間、白い画面を見つめながら手を動かし、今までの人生を振り返るくらいあらゆることを考えた1ヶ月でした。
白は楽譜にとっての休符(無音)だと考えたケージは、その余白の情報量の多さに気づいたのだろうと思います。だからこそ楽譜をすべて白で埋め尽くすように『4分33秒』を生み出したのだと、自身の身体を使って実感した1ヶ月でした。結果的にDIYになって(笑)生活とアートもつながった。
そして今朝、ラウシェンバーグと自分の誕生日が同じだったと知って神妙な気持ちになっています。