【読書メモ】「知識ゼロ」の人のための 超ざっくり分かるファイナンス
「企業価値の最大化」のために必要な知識である『ファイナンス』について、知識ゼロの人にも、わかりやすく解説している一冊です。
石野雄一氏は、金融機関の勤務後、米国でMBAを取得し、日産自動車などでファイナンス分野の実務経験を積まれてきた方です。
ファイナンスは「企業価値の最大化」を実現するために、企業の資金調達・運用の意思決定に関わる領域です。ただ、難解な専門用語も多く、よくわからない人も多いと思います。
そんな方々に向けて、ポスト会計時代の基礎知識であるファイナンスをわかりやすく解説してくれているビジネスマンの必読書です。
おススメの読者
「ファイナンス」は聞いたことがあるが、よくわかっていない方
企業を経営するマネジメント層/起業を検討しているビジネスマン
企業の経理・財務部門で働いているビジネスマン
本書の概要
2022年に出版された180ページ程度の書籍です。
ファイナンスのゴールは「企業価値の最大化」です。
一見、株主だけにメリットがある話に聞こえますが、株主への配当は、従業員・取引先・債権者・国(税金)に対する支払いが終わった税引後当期純利益から充当されます。
そのため、企業価値の増加は、従業員とその家族、株主、債権者、取引先など、多くの人が幸せにつながります。
本書では、貸借対照表や損益計算書などの会計(アカウンティング)との違いを整理した上で、ファイナンスの基礎概念である「リターンとリスク」「資本コストと要求収益率」「投資判断のプロセス」などをわかりやすく解説してくれています。
本書の「なるほど!」ポイント
自分への備忘録として、本書を要約しています(原文ママではありません。興味がある方は購入をお勧めします)
<会計とファイナンス>
会計は「利益(収益-費用)」、ファイナンスは「キャッシュ(現金収入-現金支出)」を扱う。利益はルール内である程度調整できるが、キャッシュは嘘をつかない
会計は、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書など「過去の業績」、ファイナンスは、企業が将来生み出すキャッシュフローといった「未来」を扱う
経常利益」は日本だけの概念。本業で儲ける力を表す「営業利益」が大事
企業価値の源泉が、機械や不動産などの有形資産から知識やデータ、ブランドなどの無形資産に変化している。会計では無形資産が表れてこない
<ファイナンスの基礎概念>
ファイナンスは、「投資するか否か」「投資に必要な資金をどのように調達するか」「運用して得たお金(リターン)をどう配分するか」といった意思決定に役立つ
企業価値とは「投資家(株主+債権者)にとっての企業価値」。株主は、株主価値の増加を求めて、有利子負債の活用による「成長性」を重視する。一方、債権者は、確実な元利金返済を求めて、有利子負債は少ない「安定性」を重視する
企業価値 = 事業価値+非事業価値 = 株主価値+債権者価値。株式時価総額が株主価値よりも高いと「割高」、低いと「割安」と判断される
<リスクとリターン>
リスクとは「将来の不確実性」「想定リターンのバラツキ」。リスクには「危険」と「機会」の両方が含まれる。リスクを避けるのではなく、リスクに見合ったリターンを上げることが重要
利回りとは、投資した元本に対して、1年あたりどれだけの収入が得られるかという割合。ファイナンスのリターンには「何かを得るために何を使ったのか」という考え方が根底にある
税引後営業利益を企業の収入と認識する。税引後を用いるのは、営業利益から税金を差し引いた税引後営業利益から、株主への配当、債権者への利息を支払うため
フリーキャッシュフローは、投資家(株主+債権者)が自由に使えるキャッシュフロー。フリーキャッシュフロー = 税引後営業利益+減価償却費-運転資本増減額-投資額
経営者にとってのコスト(資本コスト)は、投資家(株主+債権者)の視点から見ると要求収益率になる。資本コスト=WACC。WACCは、企業が資産を活用して生み出すべき最低限の収益率
「WACCを下げること」こそ、IR(投資家向けの広報活動)のミッション。適切なディスクロージャーを通じて、企業のリスク認識を下げる
リスクフリーレート(国債投資に要求する収益率)以上に求める部分を「リスクプレミアム」と呼ぶ。リスクが高まると、投資家が要求するリスクプレミアムが増加する
株主資本コスト(CAPM)=リスクフリーレート+β×マーケットプレミアム。リスクフリーレートを0.3%、日本のマーケットリスクプレミアムを6%と仮定し、個別企業とマーケットの株価の連動性を表すβをサイトから検索する
投下資本利益率(ROIC)とは、税引後営業利益を投下資本(株主資本+有利子負債)で割って求めたリターン。ROICとWACCの差を「EVAスプレッド」と呼び、この値をプラスにすることが経営者の使命
投下資本にEVAスプレッドを掛けることで、EVAを算出できる。EVAとは、単年度で企業価値がどれだけ増加したかを表す指標
有利子負債を活用することを「レバレッジをかける」という。自己資本だけでは動かせなかったプロジェクトが動かせるようになる
格付けは、債権者の立場から企業の債務償還能力を分析判断しているにすぎない。企業の総合的な競争力を示すものではない
企業が成長ステージにあるときは、株主は「配当における税金が無駄なので、再投資してキャピタルゲインで報いて欲しい」のが本音。マイクロソフトはの創業から2003年まで無配を貫いた。その後、自社株買いや特別配当するようになって「有望な投資案件がない」とネガティブに受け取られた可能性がある
<将来価値と現在価値>
お金の時間価値とは、明日のお金よりも、今のお金のほうが価値があるということ。将来価値から現在価値を計算するときの利率を「割引率」という。これは投資家からの要求収益率と表裏一体
金融商品の理論価格とは、その商品が将来生み出すキャッシュフローの現在価値の合計
「キャッシュフローの現在価値」から「キャッシュアウトフローの現在価値」をマイナスしたものがNPV。NPV法は、NPVが0よりも高ければ「投資すべき」、0よりも低ければ「投資を見送るべき」と判断する
ハードルレートとは、WACC(資本コスト)+α。つまり、経営の意思を載せたレート
将来の投資判断には、すでに支払っていて回収できないキャッシュフロー(サンクコスト)は含めない。また、投資する場合(With)と現状のまま投資しない場合(Without)とを比較して、どれだけキャッシュフローが変化に基づいて判断すべき
終わりに
この本を読んで「リターンを得るために、どのぐらい使ったのかといった生産性を意識する」「サンクコストに囚われない判断をする」ことの重要性に改めて認識させられました。
「売上や利益がどのぐらい増加した」といった話は分かりやすいですが、そこで費やしたコストも含めて判断しなければ正しい判断はできません。
上記は、インプットとアウトプットの比である「生産性」に通じる概念であり、共通点が多いと感じました。
また、将来の投資判断には、すでに支払っていて回収できないキャッシュフロー(サンクコスト)は含めないことも、頭ではわかりますが、それまでの費用や時間を考慮すると、なし崩し的になりがちです。
ただ、サンクコストに惑わされて、将来の大きなキャッシュフローを逃すことは避けるべきだと感じます。
今後の仕事において、以下を意識して実践しようと思います。
本記事では、石野雄一氏の【「知識ゼロ」の人のための 超ざっくり分かるファイナンス】を取り上げました。
このnoteでは、若手ビジネスマンのスキルアップに関する情報を定期的に発信していきます。