私が捨てたもの(朗読)

私が捨てたもの(朗読)

こんちくけ
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声:VOICEVOX Nemo:女声2(透川ナナ)→https://voicevox.hiroshiba.jp/nemo/
詩:こんちくけ→https://note.com/conchiqueke/all


「私が捨てたもの」

蝉が透き通りながら羽の皺をのばしていた
幼い頃の青味掛かった曖昧な記憶
私は古井戸の洞に小石を落とした
水音は聞こえなかった

それは小さな鍵だった
見つめると縮む
見つめるほどに縮み
やがて私は見失い
大切だった筈の冒険を簡単に諦めた

そして重たい鍵だった
触れると冷える
触れるほどに冷えて
やがて凍りつき
私諸共粉々に砕かれそうだった

胸に打ち寄せる少し先の未来が怖かった
翌朝にきこえた騒めきが
あの時羽を整えていたあの蝉の声だったと
思いが至らなかった
私が捨てたものを
蝉は抱えてあの季節を生きた


私が捨てたもの(詩)→https://note.com/conchiqueke/n/n015f13b627f1
Twitter→https://x.com/conchiqueke/status/1818980536138023141

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