
仕事の話とも、雑談とも違う ⏤ チームのつながりをひらく対話の場づくり放浪記
こんにちは。UX/UIデザイナーの鈴木誠人です。
このnoteは、自分のちょっとしたミスから部署を超えたさまざまなチームで対話の場をひらくことになった私が、「対話」がすべての人に必要だと確信するまでを記したものです。

場がないならつくればいいじゃない
コンセントに入社して半年。個人的な事情で京都からのリモート勤務となった私は、人と話すことに飢えていました。
もともと他人と日常の些細なあれこれを共有しあったり、誰もが割り切って隅に置いておくような答えのないことを延々と話しあうのが好きな私には、仕事の話が終わったらプツンっと途切れてしまうオンラインの会話が物足りなかったのです。
前職でカルチャー浸透の名のもとにメンバー同士が自分たちの価値観について対話する場をつくっていたこともあり、「話せる場が少ないならつくるしかないな」と思い立ちました。
「話せる場が少ない」とは書きましたが、コンセントは2024年7月のオフラインの全社員参加型社内イベント「コンセントカンファレンス(Concent Conference)」で、哲学者の永井玲衣さんをお招きして全社員で丸一日哲学対話を行うなど、対話に重きを置き投資している稀有な会社です。(哲学対話の詳しい説明は下記の記事をご参照ください)
その会もとても盛り上がったので、対話の場さえつくれば参加したいと思う人は多いはずという期待がありました。
メンション間違い転じて福となす
とはいえ、いきなり200名以上いる全社員めがけて「対話しようぜ!」と投げかけるのもちょっと怖いなと二の足を踏んでいました。そのため、まずは自分の部署内でみんなが一度経験している哲学対話の参加者を募集して、徐々にひろげていくことにしました。
ところが、幸か不幸かその目論見は最初から頓挫します。社内のチャットツールでメンション先を間違え、自部署だけではなく全社員に呼びかけてしまったのです。間違いに気づいたのは投稿して何日か経った後だったのですが、今考えると軽い気持ちで実は全社向けにメンションしていたの、恐ろしいですね….。
結果的にはこのミスが良い方に転がり、他部署のさまざまなチームから即座に「興味あります!」と反応してもらえました。みんな優しい。

主催者も参加者になる場づくり
何はともあれ、自分がひらく対話の場に参加してくれる人たちがたくさん集まったので、ワクワクしながら準備に取りかかりました。
私の主催する哲学対話では、オンラインホワイトボードMiroを用いました。
あるキーワードから連想される問いをまずは参加者ぞれぞれが書き出します。そして共有された問いの中から、みんなで考えていく最初の問いを投票で決めて対話していきます。
キーワードから連想する形式をとっているのは、より幅広くて面白い観点の問いが出やすいためです。みんなの身近にありつつも実は深く考えたことのないキーワードだと、対話が面白い方向に転がっていきやすいです。また、「こういう場では仕事から離れたことを扱いたい!」という私の強いこだわりも背景にあります。
京都の鴨川やお寺を散歩しながら思いついたキーワードをiPhoneのメモ帳に書き留め、気づけば30個以上貯まっていた中から、当日の私の気分で扱うキーワードを回によって変えました。

また、私の哲学対話では、ホストは最初の説明とルール確認だけをおこなった後、参加者とほぼ同じ立場で対話に参加します。参加者のニーズや満足だけを優先するのではなく、主催者自身も楽しめるようにすること。これも私の場づくりへのこだわりの一つです。
私の社歴が浅く、参加表明してくれたチームのほとんどの方が初めましてだったので、特に参加者にあわせてキーワードを選んだりはしませんでした。しかし、不思議なもので毎回終わるたびに「このチームにぴったりなキーワードだったなぁ」と感じていました。巡りあわせってあるのかもしれませんね。
対話の意義はモヤモヤすること
私が社内でひらいた哲学対話は、全部で9回にのぼります。それぞれの回で話された内容すべてを紹介することはできませんが、特に印象に残った「私生活」というキーワードの哲学対話を少しだけ紹介します。

最初は、「仕事ではできるのに家では感情をコントロールできないのはなぜだろう」という問いから出発しました。
この問いを挙げてくれた方にはお子様がいらっしゃり、仕事では絶対にしないのに子どもに対してはついつい怒って荒い言葉を使ってしまうとのこと。
その場には、すでに成人を迎えたお子様がいらっしゃる方、私のように子どもがおらず自分の親としか親子関係がない方などさまざまな人がいました。
それぞれが自分の立場からの経験や意見を語っていくうち、次第に話題は「健全に怒るにはどうすればいいか」へと移り変わっていきました。さらに話は進み、「怒りも前向きな関係性が築けるように伝えるのが大事」という意見が出たところで結論がきれいにまとまりかけました。
ところが、終了2分前に「前向きになれるように加工された感情は本当に自分の感情なのか」という問いが投げ込まれました。(投げ込んだのは私ですが)当然ながらその問いについて話す時間はなく、モヤッとした空気のまま対話が終わりました。
「私生活」という言葉から生まれるささいな疑問から「感情の健全さ」にまで飛躍するのが、哲学対話の面白いところです。話が飛躍するという意味では雑談にも似ていますが、日常的な雑談で怒り方や感情の話まで扱う人はなかなかいないのではないでしょうか。
また、ディスカッションやディベートと違い、哲学対話は時間になったら突然終わります。結論めいたものが出ることはほとんどありません。というか、私のひらいた哲学対話では、もし結論が出そうになっても、できるだけ前提をひっくりがえす問いかけをして参加者をモヤモヤさせたまま帰します。
でも、それが大事なことなんです。結論を出せるものなんて本当はこの世にないんですから。哲学対話の時間が終わった後も、対話は自分自身の中で続いていくのです。
対話とは人間が生きるための営み
さまざまなチームで対話の場をひらかせていただき改めて私が考えたのは、対話は仕事の中で私たちが人間として生きるために必要な営みであるということです。
哲学対話のあいだ、参加してくださったみなさんそれぞれが真剣に自分の中の感情や考えと向きあっていました。自分の中で結論が出ていたことも、参加者同士の問いかけや意見によって揺れ動き、新たな自分の側面を発見する人もいました。
昨今、ビジネスの世界でも対話の場は数多く存在しますが、そのほとんどがチームの相互理解を強める、心理的安全性を向上させるための手段として扱われています。もちろん、対話にはそういった効能もあるでしょう。
しかし、人生の矛盾や葛藤に対して、「そういうものだから」と割り切らず、安易な結論に落ち着こうとせずに考え続けることは、合理性と生産性が求め続けられるビジネスの世界だからこそ人間として必要だと、私は信じています。
その信念を胸に、これからも対話の場づくりを続け、拡げていきます。
最後に、哲学対話に参加してくださったみなさんの感想の一部をご紹介します。
“うちのチームは長いつきあいなメンバーもいるのですが、仕事の話とも、雑談とも違う会話ができて、発見があって、みんなのことをまたひとつ知ることができたなという感じがしました。”
”結論があるわけではないけど、雑談とはちがう満足感。「話した感」「考えた感」がきちんとあるから、短い時間でも満足度が高いのかなあ…とぼんやり思いつつ。テーマがあることで一本の紐を手繰るように会話が進むのもおもしろかったです。”
”その場で共有された考えや問いかけもそうですが、参加者一人ひとりの話を遮らずに聞いたり、手を上げて発話するなど、普段意識しない会話の仕方を意識することで、普段の会話・コミュニケーションでの自分の行動や視点を見直すきっかけになりました。”

ここまで読んでくださりありがとうございました。またどこかで。
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