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kao1248
物言わぬ葦
我は 物言わぬ葦
ただ風雨を耐え凌ぐ為のみに生きている
決して 妬まず ひけらかさず
自己嫌悪も自己憐憫も内的復讐心もおよそ無縁である
無念無想 ひたすら春の訪れを待ちわびている
踏まれても決して怒らない
痛いとすら言わぬ
人知れず平和について深刻に考えている
世俗的な幸福には程遠いがだからといって生きておられぬほど不幸でもない
急がず 貪らず 同情することはあっても干渉はせずまたそれをされることを拒絶する
弱きを助け 強きを挫く
勧善懲悪や偽善をことのほか嫌う
常に小銭しか持たず
かといって吝嗇でもない
むしろ気前はよい
時には身を削り奉仕する
自らが富むことに含羞を感じる
清貧を愛す
愚鈍ではあるが白痴ではない
利害の観念には頗る疎い
情に棹差せば流されると知りつつ 見事に足元を掬われる大馬鹿者である
自虐的なきらいがある 破滅願望に近い
憂悶の士である
あらゆる不幸に聞き耳を立ていつも胸を痛めている
他人の邪魔になることを嫌い
常に身軽な出で立ちで辺りを徘徊している
貞操観念が強く
晴れの日も雨の日も頑なに身を閉ざしておる
孤高を愛し 心に慈しみを忘れず
罪も人も哀れみ
汚れゆく者を愛しむ
世情に疎く 浮き世の事にまるで関心を持たない
よって空気などに流されることもない
死ぬまで兵士たれど 静かに明日の平和を祈り続け
昨日の過ちに一人懺悔する
我は 物言わぬ葦
ただ風雨を耐え凌ぐ為だけに生きている