金子みすゞを読んで、表現し、発表しよう。
Co-musubiは、日々の暮らしの中でその子自身の生きる力を育み、自分で人生を創造しながら歩みはじめることをゴールとして、ひとり一人に今必要なサポートを考え、保護者とともにその子の日々に寄り添い続ける円環的な教育のエコシステムです。
Co-musubiが特にユニークな点は、以下の3点ではないかと思います。
「なんじゃそれ。」
という心の声が聞こえてきます。うん、わかります。そうですよね。
ということで、本日は、仕組みの解説ではなく、実際に起きているこどもの学びの様子について、ご紹介したいと思います。
9月〜10月のテーマの中心は金子みすゞさんの詩です。
小学生の多くは、自分の詩集から詩を自分の感性で選び、選んだ詩をそれぞれの方法で表現し、こどもミーティング(オンラインでの対話や発表の時間)で発表をしてもらう予定です。
その過程で、子どもたちはみすゞさんの視点を借りて、日常にあふれるふしぎを暮らしの中で探したり、刺激を受けて詩を自分で書いてみたりして、それをコミュニティの中に還し、お互いに学びを膨らませながら日々を送っています。
その中で、小学6年生で中学受験勉強も並行している子どもたちは、発表のための準備を行う時間的な余裕がありません。
そこで今回は、事前準備のいらない彼らだけの時間を別に設け、金子みすゞさんの詩を題材に対話で考えを深め、作文を書く時間をつくりました。
以下が、その流れと目的になります。
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1) 自分で詩を選ぶ
選び方:作文に書きやすい詩ではなく、一番心に響いた詩を選ぼう
2) 自分がなぜその詩を選んだのか、対話をしながら自分の中を探ってみる
・無意識を紐解き、自分の興味関心を意識してみよう
・理由を抽象化することで、自分が共感したエッセンスを抽出してみよう
※ エッセンス(essence)
本質的なもの。最も大切な要素。精髄。
3) 2)で抽象化し取り出したエッセンスと重なる、自分の具体的なエピソードを思い出してみよう
4) 2)3)を経て、金子みすゞさんの見ている世界に「自分」を接近させ重ね合わせてみよう
5) 作文にまとめてみよう
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作文を書くこと自体が目的なのではなく、金子みすゞさんの詩を通じて「自分」を知ることが目的となります。
集中度高く作文を書き上げた6年生たち。
その作文はどれも躍動感があり、彼らも感想で言ってくれた
「好きなように書いていいから楽しかった!」
に溢れていました。
そしてここで、複雑系の中での学びに起こる「思いがけない広がり」が生まれたのを発見しました。
Hくんの作文の中に、対話にも出てこなかった「宮沢賢治」が唐突に登場しました。
作文としては要素が多く盛り沢山で、伝えたいことがぼやけた印象です。
きっと、通常の作文指導では、要素を絞りシンプルで読み手に伝わりやすい文章を薦めるでしょう。
しかしこの場の目的は、上手に作文を書くことではありません。
自分の中を探り、自由に書き出すことで、その子の内側の世界が見えてきます。
Hくんは以前、Co-musubiで知った宮沢賢治にとても惹かれました。
きっと、「科学者の視点を持った童話作家」という共通点を両者に感じたのでしょう。
私は、彼に質問をしました。
「金子みすゞさんは、いつの時代を生きたんだろうね?宮沢賢治さんと時代は重なるかな?」
はっとするHくん。
「もし、彼らの生きた時代が重なるならば、アインシュタインが相対性理論を発表した時代とも重なるね。」
と続けると、笑顔で頷きます。
Hくんの、すぐに調べて確認したい衝動と、思いがけず点がつながるかも知れないドキドキが伝わってきました。
自分の感性で詩を選び、自分の中を丁寧に探り、自由に作文として書き出したからこそ、彼が直感でつなげた点と点。
そこに大きな意味が立ち上がったら、感動しますよね。
もしかしたら次は、見えないものを見ようとする科学者の眼を持った稀有な童話作家たちが生まれた、アインシュタイン来日に日本中が熱狂した時代背景に関心がつながるかも知れません。
このように、Co-musubiの学びの中では、静かに熱が生まれる素敵な瞬間が、毎日のように誰かに起きています。
そして、子どもの世界ってこんなにおもしろく感動的なんだ、と保護者が知ることで、結果的に保護者自身も変わり、子どもとの時間が丁寧になっていきます。
その気づきはコミュニティ内で伝播し、他のご家庭にもよい影響をもたらします。
オンラインを活用した学びのエコシステムは、こうやって、出来事や人が有機的に結びつき、循環しながらよりよく共に生きる仕組みなのです。