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カヌーを自分で作って漕ぎ出そう!ワークショップ③ 振り返りの発表会

4週間連続での手作りカヌーワークショップもいよいよ最終週。
今回は、これまでのワークショップを通じ、それぞれが気になったことについて、調べたり、実験などをし、それをZOOMでのオンライン発表会で発表してもらいます。
事前のお約束も、こちらから提示する問いも、「こんな風に発表してね」などの型もありません。
完全にお任せなフリースタイルです。

これまでの3週間の事前学習 & 手作りカヌーWS & カヌーカーニバル(乗船!)の様子はこちらにまとめてあります↓

1週目:ZOOMを使用したオンライン事前学習


2週目:カヌー制作
3週目:カヌーカーニバル!運河で乗ってみよう

そして今回。
4週目:ZOOMを使用した振り返りの学習
の様子をレポートしたいと思います。

まずは先週までの振り返り。
" いくぼん " こと、東京都中学校理科教員の井久保 大介 先生は、
「みんな、楽しかったですか?私も帰ってから一週間ずっとことあることにカヌーのことを考える一週間でした!」
と笑顔で語りかけ、みんなも笑顔で頷きます。

芝中学校技術科教諭・寺西 幸人先生は、
「先週のカヌーカーニバルは、午前中はみなさん、おっかなびっくり漕いでいましたが、午後からは慣れて鬼ごっこまでしていた。鬼ごっこができるって自分の行きたいところに行けるってことだから、すごいことだなぁと思いました。」
と、カヌーを自在に操れるほど本気で遊んだ先週の様子を褒めてくださいました。

先生方のおかげでリラックスし、やわらかい雰囲気で発表会がスタート。

完全におまかせ、準備等も各ご家庭に投げっぱなしのフリースタイルの発表会でしたが、だからこそ発想も発表スタイルものびのび自由に羽ばたき、浮力、速度、地理、体積、廃棄とリサイクル、乗り心地の6項目評価、理想のカヌーのデザインと提案、溶接、振り返りと選んだテーマもバラエティに富み、どれも興味を惹かれる発表となりました。

新小学6年生の男子くんは速度について発表しました。
なんと、事前に定規と共に自作のカヌーを漕ぎ進む様子を動画で撮影。
帰宅後、その動画を元に、進んだ距離と時間から自分たちのカヌーの速度を計算。
世界一速いカヤック選手の速度と比べ、どれだけ違いがあるか、それはなぜか?も考察を行い、スライドにまとめ発表してくれました。

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理科教員のいくぼんから、
「速度に注目した所がよい。科学でも条件を一つに決めて探究することが大事。速いってワクワクするよね。オリンピックでもカヌー競技がありますよね。船体をどう改良したら速くなるのか、研究している人達もいるんだよね。」
とオリンピック競技にも視野を広げてもらい、「あぁ!」とうんうん頷くこども達(大人たちも)。

そして、プラスチックダンボール、木材、鉄などいろいろな素材に着目し、それぞれのメリット、デメリットからカヌーに適した素材を再検討し、さらに、自分たちがつくったカヌーで使用したプラスチックダンボールのその後の行方が気になり、日本におけるプラスチックの廃棄やリサイクルの現状について調べた新中学1年生の女子。

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これまでは、日本で排出された廃プラスチックの8割が中国へ輸出され、再加工されリサイクルされていたが、環境汚染の原因ともなり、2018年から中国は廃プラスチックの輸入を禁止。以降、日本では廃プラスチックのリサイクルや処理が滞り混乱が起きていること。また、深刻な海洋汚染の問題から、世界でもプラスチック製のストローやレジ袋などの使用を禁止する国が増えていること。そして、日本で廃プラスチックを新たなプラスチックに再加工する会社があることを調べ、カヌー制作で使用したプラスチックダンボールは汚れがないので、再加工しやすいと思う。と提案していました。

先生方からは、その視点を褒めていただいた上で、
「プラスチックは人間が作った有機物で、人間が作っちゃったから、本来、人間がどうにかしないといけないんですよね。ブラスチックダンボールはポリプロピレン(PP) という種類で、ペットボトルはポリエチレンテレフタレート(PET ) だったりと、プラスチックにも種類がある。種類によってリサイクルのしやすさも変わってくる。PPは強くコストが安く使いやすい。なので経済優先で世の中で多く使われているのだと思う。しかしPPはリサイクルされにくい素材。
今回のように「素材」に着目したことで、今後、プラスチックを手にするたびに種類が気になってくるよね。視点が科学者顔負けですね。」

と、課題を分かち合ってもらうと共に、今後の日常に自然と探究がつながるよう、視点を増やしていただきました。

また、カヌーカーニバルでは他の家族のカヌーに乗り合う和気あいあいとした姿が印象的だったのですが、なんと、それぞれのカヌーの乗り心地を6個の評価項目に分け独自に評価した結果を発表してくれた新小学6年生の男子くんも登場。

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この基本の6項目でまずは評価。それぞれを点数に直し、一旦合計点を計算しました。通常であればそこで単純にランキングを出してしまうところ。
ところが彼のすごいのは、「ふと思ったんですが、その他の工夫で、カヌーの縁に手が当たっても痛くないようにとガムテープでテーピングされていて、そこを評価に入れたら順位が変わりました。」というところ。
丁寧な視点での評価は、企業の製品評価部門も顔負けだと感じました。

そしてさらに彼は、高さ1cmの飛行機型の型で野菜や果物をくり抜き、体積を揃え水に浮かべ実験をしました。

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さらに、水を入れ上部に少し隙間のあるペットボトルと、満タンに水を入れたペットボトルを水に入れて実験。

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事前学習での浮力の実験と問いを発展させ、鋭い観察眼を持ち、今回の一連の学習や体験を通じ多面的に考えを深めた探究力に脱帽でした。

いくぼんからは、
「よいカヌーって何かって考えた時に、" よさ" ってすごく曖昧。それを項目を立てて比べたことで、すごく説得力がありました。
また、野菜の体積を揃えたことが素晴らしい。そうすると水の重さをきちんと比べられるものね。この考え方を持ってすれば、どんなことでもできると思うので、自信を持って頑張ってください。」

寺西先生からは、
「理科でこの先習う考え方を、最もわかり易い言葉で説明できていたので、素晴らしいなぁと思って聞いていました。また、事前学習の実験も持ち出し、自分の考え方を導き出していたので素晴らしいなぁと感じました。」
と褒めていただき、ほっとした顔をしていました。


カヌー制作で、大きなプラダンのパーツを空気が入らないようにピタッとテープで貼り合わせることが大変だった(彼のカヌーは浸水し、現地で大きなラップでぐるぐる巻きに補強してもらった)からと、その課題を克服する新しい代替案はないかと実験をした新中学1年生男子。

まずはプラダンをガスコンロで炙り(!)溶接できるか実験。

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「大失敗したんだけれど、分かったことがひとつあって... 」
くっついたが溶かすことによりプラダンが変形し固くなった。溶かすとプラダンは固くなることがわかった。

もう一つ、隙間にグルーガンを使えば溶接していることと同じことになるので、水が入りづらくなるのではないかと考えた。と発表。

寺西先生は、
「接着剤って、同じ素材だとつきにくいいんだけれど、素材が違うとくっつくってあるんです。今の話でぼくはすごくヒントをもらって、ガムテープを貼りづらい先端部分など、接着剤を使った方がうまくいくのかも知れませんね。とグルーガンの話からなるほどね〜と思って途中から話を聞かずずっと考えていました。」と言ってくださり、誇らしいやら面白いやらでみんなで笑いました。

さらに寺西先生のアイディアがどんどん溢れはじめ、またデザインやものづくりを仕事にしている母メンバーからも新しいアイディアが共有されて、盛り上がりました。

いくぼんからは、
「失敗があったよね。でも、君がとても科学者っぽいと思ったのは、『失敗した中でもひとつ分かったのは..』という言葉。それってすごく大事なことで、自分の目的と違うものを失敗と呼ぶんだけれど、その目的とは別のことで何かわかったことがあるっていうのは、自分の探究心を進めるにあたり大事なことなんだろうと思います。色々な場面で使える考え方だと思うので、私も『失敗した中でもひとつわかったことは』を使わなくちゃと思いました。」
と珠玉のメッセージをいただきました。

他に、理想のカヌーを実に具体的に考え提案してくれた新小6男子。

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事前に小型船舶の免許に関することをしっかり調べた上での構想で、寺西先生からの問いかけにもしっかり受け答えできていることが驚きでした。
また、科学好きな彼らしく、素材にカーボンファイバーを、電源を太陽光とし、豊かな想像力と彼らしいユニークな発想でワクワクをみんなに渡してくれました。

他にも、勝島運河や立会川の地理を調べ、水源にたどり着き発表してくれた新中学1年生と新小学4年生の姉弟。

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地理に目を向け発表してくれたおかげで、他のこども達も東京都の水路全体に興味を持つことができましたし、いくぼんから「汽水」を教えてもらい、川と海の境目はどうなっているのだろう?と新たな疑問の種を撒いてもらいました。

レゴで様々なタイプの船を作り、重りを乗せての耐久実験や、浮くのに最適な船の形を研究した新小学4年生男子君。丁寧に考察し、自分の言葉でしっかりと発表してくれました。

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さらに彼の素晴らしいところは、他の人の発表を興味を持ってしっかりと「聴き」、ほぼ全員の発表に笑顔でとてもポジテイブな感想を伝えてくれたところ。「楽しんで興味を持って聴いてもらえた」と感じるフィードバックに、自信をもらった子はたくさんいたと思いますし、発表会の場を和ませてくれる貴重な存在で、たくさん助けられました。
類まれなるリーダーシップの才能だと感じます。

そして、カヌーそのものに興味を持ち調べたり、カヌー作成や乗船を通じ感じたことを、過去に乗ったことのあるたらい舟と比較し丁寧に振り返り、それらを自分でスライドを作成し発表した新中学1年生の男子君。

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見る人を楽しませる工夫(効果)に人柄を感じました。
最後の発表者としてしっかりとまとめてくれました。

どの子の発表もとても素晴らしく面白いものでした。

総評として、いくぼんから
「ありがとうございました。みなさんの探究する力をすごく感じた数週間でした。皆さんと会ってから、学校での生徒たちへの向き合い方が私も変わりました。ここで出会った子たちと同じように、きっと頭の中で色々なことをそれぞれが考えているんだろうなぁと思いながら授業ができるようになりました。皆さんにも感謝していますし、また機会があったら一緒に遊びましょう。」

寺西先生から
「私も良い経験をたくさんさせてもらいました。作る場面は私が一番楽しんでいて、みなさんの作り方が新しくて、色々な考え方があるなぁと思いましたし、比重に関しても皆さんの取り組みが色々あって、とても新鮮でした。ありがとうございます。」

プロフェッショナルなお二人の、柔軟で温かいお人柄に包まれて、大変たのしく刺激的で、そしてとても幸せな4週間でした。
先生方、関係者の皆様、大変お世話になりました。
ありがとうございました!!



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