井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た #32
#32 自分の「好き」を見つけて授業する
対症療法に陥りがちな子育て③
(#31の続き)
その子に合ったストレッチゾーンを見て、「喜びどころ」を逃さないために親は何ができるでしょうか。身支度のような基本的な事柄についてのスモールステップは親から見ても分かりやすいです。でも、その子の世界が広がるにつれて、親の目にはより分かりづらくなってきます。
先日、「Co-musubi」の小学校高学年ミーティングで「授業博覧会」がありました。自分の好きなテーマを決めて、ほかの子どもたちに対して、各自5分間の授業を行う、というものです。
数週間前から準備はスタート。まずはそれぞれ自分の好きなものに気づくためのワークをします。白い紙の真ん中に「私」と書き入れ、その周囲に、自分の好きなものをどんどん書き出していきます。例えば歌を歌うことが好きなら、「私」から線を引いて「歌を歌う」と書く。さらに具体的に「好きなアニメの歌」「〇〇(アニメの名称)」「かっこいい歌」など書き足していきます。本を読むことも好きなら、「私」から別の線を引き出して「読書」と記し、書名やジャンル名などを書き加えてつなげます。
書き進めると、網目状にどんどん広がり、好きなもののマップが出来上がる仕組み。すらすら書ける子もいれば、時間がかかる子もいます。私自身もやったことがありますが、書きながら自分の好きなものを改めて認識できて楽しい作業です。
「自分の根っこ=アイデンティティを見つける作業の一つでもあります」と井上さんは説明します。
出来たマップをみんなで見せ合う場面では、「たくさん書けてすごい」「私も〇〇は好き。一緒だ!」といった声が、子どもたちや井上さんからあがります。
子どもたちはそのマップを手がかりに、各自の授業テーマを決めました。「5分間の授業」と聞くと、大人はいわゆる学校の教科の授業を想像して、「難しそう」と思いがちです。でも、そんな概念に囚われない子どもたちが披露した授業は本当に多様。
「マンガ」「ゲーム」「お天気」「ランダム」「起承転結」「リバティプリント」……。
このテーマをどうやって5分間の授業にするのだろう?と、横で見ている大人の好奇心も大いに刺激されます。
(#33につづく)
書き手:小林浩子(ライター・編集者/小学生の親)
新聞記者、雑誌編集者などを経て、フリーランスのライター・編集者に。 自分の子育てをきっかけに、「学び」について探究する日々を重ねる。現在、米国在住。