「メンバーnote」 自分でガイドをつくれば美術鑑賞が面白くなる
メンバーの手記より。
美術館や博物館に行っても、猛烈な勢いで通り過ぎ「行っただけ」になっていたこどもが、じっくりひとつの作品を鑑賞し「面白い!」と体感するには?
月1回、週末にじっくり時間をとって行われるこどもMTGの中学年。
前回は、VTS ( Visual Thinking Strategy) の手法を取り入れた鑑賞教育をオンラインで行ったこどもMTG。
今回はオンライン鑑賞プログラムの第2回目。
小2から小4までの子どもたちが参加し、美術企画展の特設サイトから好きな作品を選んで、その作品の音声ガイドを作ろうというもの。
美術館、博物館に行っても、ものすごいスピードで会場を通り抜けて「さ、帰ろ」と言われる展開が多かったこれまでの我が小4の息子。
音声ガイドも「聴きたい」と言われて渡すけれど、聞いてるんだかいないんだか、途中で「もういらない、はい」と渡されたりもする(500円ぐらいするのに!)…。
行った後も、親の私もどうやっていいかわからなくてうまく話を深められず、「行った」という事実しか残せない。
連れていく労力に対し、どこかがっかり感が大きくなりがちだった。
そんなこんなで、音声ガイドについては、一応どういうものかわかっていた我が子。
MTGでは、まず参考動画を視聴。
小学6年生が美術館に出かけて、好きな作品の音声ガイドを作る様子を追ったもの。
少し年上の子どもたちが作った音声ガイドを聞いて理解し、現在、都内で開催中の美術展のサイトから自分の好きな作品を選んで書いてみようとなった。
我が子が即決で選んだのは、葛飾北斎の「富嶽三十六景神奈川沖浪裏」
字を書くことに苦手意識がある息子がためらいなく書いてる、書いてる。
全部ひらがなだけど、頭の中にある言葉を、すんなりと文字にできている感じがする。
「奥に富士山が、たかだかと書かれていますって、変かな。たかだかとって、どうかな。」
「面白いねー、自分がそう感じたんなら、それでいいんじゃない?」
何か、説明する言葉がほしかったみたいなのだが、少し考えて、「おくには、ふじさんがかいてあります。」とだけ書いた。
書き終わっても時間がたくさんあったので、今度は伊藤若冲の「象と鯨図屏風」を。
「(象の)みみがゆでたまごみたいにみえておもしろいですね。」など、細部の描かれ方を面白く見た様子。聞く人を想定した投げかけなどもしっかりあって、面白いなあ。
発表には北斎を選び、元気に読み上げた。
「富嶽三十六景という作品は、荒れている海を描いている絵ですね。ふねは、何そうあるでしょう。波が荒れていて空気のつぶまではっきりと見えますね。奥には、富士山が描いてあります。さあふねに乗ってる人たちは、なにをしにここにきたのでしょう。ぼくはふなたびをしに来た人だと思います。みなさんもぜひ考えてみてください。」
他の子たちも、絵のなかの小さな小さなセミを発見し、ふたつの季節を描き分けたことに気づいたり、絵の世界に自分自身が入り込んで情景をいろいろな角度からダイナミックに描写したり、まるでだまし絵のように捉えた新しい解釈を伝えてくれたり、同じ絵を選んでも全然違う視点から表現してくれたり…どれも個性が出ていていい着眼点! それぞれの面白さを認め合ったり、そこからまた考えを深めた感想も素敵だった。
息子も
「△△君と同じ絵を選んだけれど、考えることは違って、一つの絵でも作者のいろいろな感情が伝わっているんだなと思った。作者はもしかしたら一つの考えを持っているのかもしれないけれど、みんなで考えてみると面白いと思った。」
と、感想を言っていた。
「今度、自分で音声ガイドの原稿を作ってから美術館に行ってみようかな!」という男の子もいた。
絵の見方、これから変わるんじゃないかな。
「僕はこう思う」「私はこう思った」って、私も身構えずに話し合うことも、できるようになるんじゃないかな。
これからが楽しみ。
春休みはさっそく、美術展に行こう! ありがとうございましたー!