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井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た

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書き手:小林浩子(ライター・編集者/小学生の親) 新聞記者、雑誌編集者などを経て、フリーランスのライター・編集者に。 自分の子育てをきっかけに、「学び」について探究する日々を重ね…
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井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た #はじめに

書き手:小林浩子(ライター・編集者/小学生の親) 新聞記者、雑誌編集者などを経て、フリーランスのライター・編集者に。 自分の子育てをきっかけに、「学び」について探究する日々を重ねる。現在、米国在住。  「子育てはどうしてこんなにつらいんだろうーー」 そう思ったことはありますか。私はあります。  ライター/編集者として、「仕事と子育てを両立すること」に疲労困憊している親(特に母親)の姿をたくさん見てきました。ちゃんと育てなきゃという内側からの使命感や、ときにはプレッシャー

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た#10 

 社会的な評価に縛られることのもったいなさ (10) ひとり一人の子育てがもたらす尊い力  前回(#9)、自分が思い込みに囚われて不安になっていたことに気づいた、という話をしました。突き詰めれば学校や学年も、もともとは人間が便宜的に作り出した手段だったはずです。でも、いつの間にか自分の中で目的のようになってしまっていました。そして、それに縛られて焦っていました。  親は、しばしばそんな状況に陥りがちです。例えば、テストの点数や偏差値、「〇〇大学合格」といった指標も、親の心を

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た#11 

仮説を立てないことのもったいなさ (11) ポジティブでクリエイティブな「もったいない」  タイトルをはじめ、この連載では「もったいない」というキーワードを多用しています。「もったいない」という言葉は、ときと場合によってネガティブに響くこともあるかもしれません。  例えば、時間がなくて焦っているときに、リサイクルすべきものをつい廃棄してしまい、その瞬間を見た家族の誰かから「あ~、もったいない!」と厳しい口調で言われたとします。そんな「もったいない!」は批判の言葉に聞こえる

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た#9 

既成のものさしを手放せないもったいなさ (9) 不安になる理由は自分の中にあった  親になると、教育というテーマが突然「自分事」になります。「どういう子育てや教育がいいのか」を知りたくて、本や講演などで学んだことのある人は多いのではないかと思います。  自分自身も子育て中の親なので、仕事としてだけでなく、自分事として子育てや教育、学びなどについて探究してきました。  本を読んだり、講演を聞いたりしても、なかなか不安が解消しない、という人は少なくないと思います。それは内容

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た#8

#8 アメリカで見た、親の「応援表現力」 (8) 謙遜の文化と「私なんて……」のつながり  前回(#7 多くの親が陥りやすい「ちいさな病」) の続きです。親の「ちいさな病」がある上に、日本には謙遜の文化があります。  自分の子どものよいところを誰かにほめられたら、「いえいえ、うちの子なんて……」と謙遜してしまうことはありませんか。でも、それこそ「もったいない」と思います。  せっかく気づいてくれたのだから、素直に感謝して、そのよいポイントを伸ばす機会にしたいものです。反

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た#7

多くの親が陥りやすい「ちいさな病」 (7)自分の子に対しては「解像度が落ちる」    「親はどうやったら不安を手放せるのか」。この大きな問いについて引き続き考えます。親が覚えておくと「不安解消」に役立つことがひとつあります。  それは、多くの親が陥りがちな「ちいさな病」とも呼ぶべきものです。  Co-musubiの「大人ミーティング」でこんな場面を目にすることがあります。「大人ミーティング」とは保護者が集まって対話する月1回のオンラインミーティングです。ある人が「自分の

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た#6

(6)勉強を「教科」だけで捉えることのもったいなさ アンラーンのひとつのきっかけ  「学校で勉強している内容なんて、実際の生活にはほとんど役に立たないよね。どうして勉強しなくてはいけないの?」  いつごろかはっきり覚えていないのですが、学校というものに自分が所属していた時代に、そう思った瞬間が何度もありました。買い物をするための最低限の計算や、好きな本を読むための読み書きなどはもちろん役立っています。でもそれ以外については、あまり思いつかなかったのです。そんな思いを誰か

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た#5

(5)分かりやすい成果を最短で求めるのではなく 「これで私は子どもの手を離せると思った」  ヨーロッパでの留学体験プログラムの経験を高1のAくんがシェアしてくれたCo-musubiミーティング(#1参照)の話を続けます。  Aくんは、今回の経験の中で「英語の学び方が分かった」と話してくれました。  Aくんは自分自身が英語が得意でないと感じていました。プログラムのほかの参加者の中には英語を流暢に操る高校生もいたそうです。  そこでAくんは、ほかの人たちが話す英語を、それ

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た#3

(3)親は誰もが新人。 情報の嵐が吹き荒れる荒野にポツンと立つ親たち  「親は、不安を起点にした子育てをしないほうがいい」    では、親は不安をどうやって取り除けばいいのでしょうか。言葉にするのは簡単ですが、実行するのはなかなか難しいものです。子育てと不安は表裏一体のようです。 「どんな習い事を小さいころにさせておいたほうがいいの?」 「小学校に入るまでに読み書きを学ばせたほうがいいの?」 「そろそろ何かスポーツもさせたほうがいい?」 「中学受験はさせる? させない?

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た#1

(1)「自由になること」の本質を体得した高校1年生のAくんの話 「うちの子もそろそろ習い事をさせたほうがいいかしら」   「不安を持っていると自由になれない」  Aくんが言いました。Aくんは、高校1年生です。    Aくんはこの夏、ヨーロッパを訪れ、短期の留学体験プログラムに参加してきました。その経験をCo-musubiの小学生、中学生たちにシェアしてくれるZoomミーティングが先日、開かれました。  Aくんは、スライドも準備して、自身の経験を分かりやすく伝えてくれます

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た#2

(2)子どもたちが「自分」を表現できる場が少ないというもったいなさ 親がしんどいのは「不安」起点だから?   「親の不安を起点にした子育てはしないほうがいい」と井上さんは言います。    その大きな理由は以下の2つです。  1つ目は、親自身がしんどい状態になってしまうこと。  2つ目は、子どもが育つときにはその環境が大事であり、親もまたその環境の一部だということです。分かりやすくいうと、親が不安起点で子育てをすると、それは子どもにも少なからず影響するのです。  高1のA