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くろいアレとみどりのアレ 〜絵のない絵本〜

妻を亡くし、何年になるか。
もう思え出せないほど必死に働いている。

幸い3人の子供たちはすくすくと育ってくれている。
私が仕事に行く間は食事の世話などは私の姉が面倒を見てくれている。

姉はいつも仕事に出かける前に言う。

「とにかく緑のアレには気をつけて」

私も十分に気をつけているつもりだ。

この暖かい時期は稼ぎ時。
子供たちのためにも働かねば。

ある日のこと。
帰ると一番下の子が泣いている。
姉に事情を聞くと、下の子が母親に会いたいとグズりきょうだいを困らせ、喧嘩になったようだ。

「ママに会いたいよぉ、どうして会えないの?」

私は言葉を詰まらせる。
「そうだ!明日はパパが仕事から帰ったらみんなでお出かけしようか!」

「ほんとぉ?」
「あぁ、本当だ。」
「やったぁ!楽しみに待ってるね!!」

翌日私は早く帰るために早めに仕事に向かった。

ところが、遭遇してしまった。
緑のアレに。

その緑の缶スプレーをかけられてしまったのだ。

あれほど気をつけていたのに。

妻も同じだった。

この緑の缶スプレーを作っている人間は、我々を駆除するため、薬剤を実験するため、あえて我々を飼っているという噂を聞いた。
そこで飼われている我々の仲間は、実験されるともしらず、いい環境の仕事を見つけた、と喜んで出かけ、みなそのまま帰らなかったという。

加えて人間は我々の触覚の先にスプレーが触れると察知し逃げられることを知り、お尻からめがけてスプレーをかけてくるのだ。

太刀打ちできなかった…

最後に聞こえたのは
「キャー!Gが出た!」
という人間の悲鳴…





「パパ、遅いね。
今日はお出かけするって約束したのにな。」

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こむぎ
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