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[ゲームレビュー] Life is Starange 2 狼兄弟の逃避行
はじめに
前作『Life is Strange』をプレイして、ぜひともこの続編をプレイしたいと思い数か月たち、丁度半額ほどでソフトを手に入れられる機会があり早速3,4日でエンディングまでを一通りやり終えた。エンディングを見終えた時に率直な感想は、「全然前作と違うじゃん!?」と、「この内容は一体どう考えたら良いの!?」というものだ。あまりに想定と異なる展開と結末に、おそらく自分だけでなく多くのゲーマーが少なからず困惑を覚えたはずだ。以下では、クリアしてから少し時間が経ちまとまった考えを書いている。
とんでもおてんばな弟
まず、Amazonレビューでも酷評されている弟、ダニエルについて。自分もゲームをプレイしていて、何度も「頼むからおとなしくしといてくれよ...」と思ったが正直なところだ。もちろん、9歳という年齢で超能力の発現や父親の死といった難問を抱えて、正気でいられるわけでないのは分かっている。それでも、ちょっとは事情を分かってくれよと再三思わされてしまったのは、自分の心が狭いからであろうか...。
中でも、おてんばが過ぎるんでないのと思ったのは、オレゴンで祖父母に匿われている時と、ネバダで宗教団体に祭り上げられていた時のこと。前者の場面では、何回人前で超能力を使うなと言ったか、それでも悪びれず近所の男の子との遊びで物を浮かせていたり。後者の方では、ショーンが病院から命からがらの脱走を経てダニエルの元に来たのに、あっさり宗教指導者リスべスを妄信してショーンを拒絶したり。正直、自分がショーンだったら心折れているだろうなぁと思いながらプレイしていたのを覚えている。ただ、冷静になって、やはりこの年頃の男の子+ショッキングな環境の変化となると、そりゃこうなるかと。そういう意味ではリアルだったのかもしれない。
超能力は弟のもの
このゲームをプレイしていて特に他のゲームと違うもどかしさを感じさせられたのは、いわゆるSuper Powerが自分ではなく隣を歩く弟に与えられたからだ。例えば最近はやりのラノべ的な展開だと、大抵主人公が特権的な超能力を得ていてそれが故の優越感を共有できる。それが概してラノベの場合、「売り」となっているんだろうなぁと感じているが、今作はまぎれもない弟がそうした立場にいるのだから苦い思いをさせられた。この能力が自分のものであったら...と何度思ったことか。
何度かショーンが自分にも能力がないかと手を伸ばして試しているシーンがあったが、見ている自分も歯がゆさを感じた。「特別な才能」みたいなものは、誰しもが一度は憧れるものであるだろう。しかし、それを持っているのは紛れもない弟。自分が守らなくてはならない存在が、はるかに強大な力を持っている。嫉妬半分でもうどうにでもなってしまえば良いじゃないかとか思ったり...。というか、特にダニエルが能力を鼻にかけているシーンはそういう気分になってしまった。
やはり根深い差別問題
そしてもう一点、どうしても現実へと立ち返らなければならない気持ちにさせるのが、道中で描かれる差別の問題だ。今作に顕著なのは人種差別、南米系の主人公兄弟、特にショーンは旅の途中で非常に厳しい差別の現実に苛まれることとなる。最近では今作も含め政治問題を問うようなシーンがゲーム作品で描かれることが増えている。そのことに関しては賛否両論であると思うが、ある種アートとしてものを描く以上逃れられないものなのではないかと感じている...。それはさておき、Life is Strangeは無印も含めこうした生生しさと向き合うゲームなのだと改めて認識した。南米系の見た目をしているというだけで泥棒呼ばわりされたり、そんなシーンは本当に画面を見ていて怒りが沸き立つ。寛容さが足りなかったのかもしれない、最後のあたり牢屋の場面、自分は兄弟を捕まえた白人の二人から目を背けるようにストーリーを進行させてしまった。
やはり考えさせられるゲームであったLife is Strange2
いろいろともどかしい思いをしながらではあったが考えさせられる良いゲームであったというのが、今作に対する率直な感想だ。兄弟の逃避行は結局何のためであったのだろうか。エンディングを迎えた時はそういう疑問で評価をするのが難しいと感じたが、時間をおいてみるとやはり賞賛されるべき作品だと思うようになった。自分なりには、過酷な逃避行も前作「Life is Strange」同様に逃れられない厳しい現実と向き合わなければならないというメッセージであったと捉えている。行為としては警察の手から逃げていたわけだが、実際は日常では浮かび上がり難い生々しい社会の裏側と相対する経験であった。直訳すると「人生は奇妙だ」となるLife is Strange。奇怪な現象を軸にしながらも、えぐみのあるリアルさを実感させられるゲームであった。