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ゑ本 古代緑地 Ancient Green Land 19『歳寒三友 竹久兎之氶(タケヒサウサノジョウ)の巻』

この村へ入るには3つの道があって そのひとつ「細蟹(ささがに)の道」はその一本

かつてこのみちは恋人たちの通い路でした いくつかの悲恋の物語も語り継がれています 村はずれには悲恋の物語のお姫様が飛び込んだ池もありました 細蟹とは蜘蛛のこと 笹に蜘蛛が巣を張るのを見て 恋人がやってくることを占ったといいます

昨今では細蟹の道の先の 村はずれには遊女の街ができていましたから 峠を越えて通う男達も多いのです 

 
遊びもいつか本気になったりするもので 恋には情念がつきものですから 

腕の立つ弓使いである竹久兎之氶が 魔物に取り憑かれた物の怪が入らないように 竹林から続く笹の道を守っています。


兎之氶は竹の精です 竹や笹から手に取るようにいろんな情報を読み取ります

 細蟹たちが教えてくれることもあります

どうやら今日も 魔物に取り憑かれた者達がやってくるようです

竹久兎之氶


 さあ ゾロゾロやって来ましたよ 

 いつもは多くても一週間に一体くらいなのに 今日は多いみたい

「こんなに来るなんて 一体何の記念日なんだよ」


竹林には仕掛けがあって 素早いウーが それを発動させて行きます ウーというのはパートナーの青兎の名前です

小梅熊太夫 2

たくさん貢いだのにと逆恨みの虜になったものだったり

小梅熊太夫 4

美しい遊女への妄執に取り憑かれてしまったり 

 ほら 紫のが 何か憑いています


小梅熊太夫 3

中には武器を持っているものだっています

そんな魔物が時に竹林を抜けて里に下りていくこの道を通るのです


罠はいろいろですが 落とし穴 網 あるいは鐘つき 相手によって変えるのです

それで魔物が抜けなければ 竹久兎乃氶の出番 

  弓を引き 魔法の矢で射抜いて 魔物を祓います

  不思議な矢で 魔物だけ押し出されるのです

森の黒熊 空の白熊 6

  弓の弦を弾けばその音波で魔を祓うこともできます

  音波は物の怪を打ち割ります

森の黒熊 空の白熊 5


格闘が終わった時 ようやく背後から 細蟹の声が聞こえました 彼らの声は小さいので これまで聞こえなかったみたいです よく聞くと「危ない!」と叫んでいるではありませんか

 ハッとして振り返ると 兎之氶の後ろに巨大なウワバミが目を光らせて迫っていました

 咄嗟に矢を放ちましたが その矢はウワバミの顔をそれ 岩山に突き刺さりました

小梅熊太夫 1

兎之氶は一呑みにされてしまったのです


このウワバミは実は 報われない恋の果てに村はずれの池に入水自殺した姫の 成れの果てでした

近頃は村人が手を合わせることも少なくなったと言われています

一見幸せそうな村でも いえ それだからこそ ほころびがどこかにあったのかもしれません


兎之氶という結界が破れると 峠には変な風が吹き上がって来ました

竹はザワザワ鳴り 笹がカサカサ震えます

物の怪が押し寄せてきました

ひとり残ったウーだけで守りきれるものではありません

それでもウーはいろんな罠を全て使って 奮戦しました

もうしかし限界が近づいて来ました


背後のウワバミに一太刀浴びせるしかない

そう思ったウーは反転し 猛烈なスピードで斬りかかりました

竹久兎之氶ウー

ウーの小刀は 毒牙を一本折ったものの それが関の山 地面に跳ね飛ばされ 

気絶しました


ウワバミは大きな雄叫びをあげ いよいよ魔物たちと村へ入っていこうと 体をもたげました 村を襲おうというのです

しかしその瞬間 大きな音が轟き 兎之氶の放った矢が突き刺さった崖が ウワバミ一党めがけて 崩れ落ちて来たのです 

兎之氶の放った矢は このためだった!


次々落ちてくる岩塊に さしものウワバミも 為す術なく 一味諸共 生き埋めとなりました


しばらく経って ウーは目を覚ましましたが 見る限り廃墟のようで 目の前には大きな岩の塚が聳えています あまりの景色の変わりように 何が何だかわかりません

…何れにしても全て失ってしまった  ウーは泣き崩れました

「兎之氶さま〜!どうして死んでしまったのですかー!!」

ウーは天を仰いで叫びました




「死んでないんだけど。。。」どこからか声が聞こえます


「え!?」

ウーは目をパチクリ


見上げると 塚の天辺で笑っている兎之氶が見えました


「うわあ 良かったようー」

泣笑いのウー

小梅熊太夫

兎之氶は 瓦礫に埋まった ウワバミの口から這い出してきたのです


「ほら みて お腹の中で暇だったから ついでに お姫様もお祓いしといたのさ」

パーカーのポケットから取り出したのは

桃色の透き通った玉で

本当のお姫様は こんなに綺麗な魂だったのです


崩れた大岩の一つは ゴロンゴロンと遠くまで笹薮を転がって

池の中に落ちて 島になっていました


大事に玉を抱えて池に返しにきた兎之氶とウーは 島になった石に お姫様の魂を祀りました

小梅熊太夫

池は途端に青く澄み 静かな波は 笑っているようでした


今ではその大岩は「お姫様」と呼ばれて大切にされています

ウワバミが生き埋めになった小山も蛇塚として祀られています


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『歳寒三友』は三つで一つのお話です

かつて村人たちは目に見えたり見えなかったりする彼ら精霊のことを言い伝え 彼らの力をお裾分けしてもらい その力に肖ろうとしてきました 村に入る三つの道の松竹梅の枝をちょっとずついただく「門松」はそんな物語を伝えるものなのです

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