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まなかい;立冬 57候『金盞香(きんせんかさく)』

「金盞」とは水仙のこと。

「金盞」の「盞」…「戔」に「薄くて重ねたもの」の意があると『字統』に記されている。水仙の花は、3枚の花びらと3枚の萼に、副花冠が合わさっていて、確かに薄い盃を重ねたようだ。輝くように黄色い薄物の盃と見立てて「金盞」とついたのだろうか。

爽やかで苦味も効いた濃厚なあの香りに、お酒を注いで飲んだらどんな味がするのだろう。

漢名は「仙人は、天にあるを天仙、地にあるを地仙、水にあるを水仙」。中国の古典から取られたという。きれいな花の姿と芳香がまるで「仙人」のようなところから命名されたそうだから、一口盃から啜ったら羽化登仙できるのかもしれない。

             「其のにほひ桃より白し水仙花」           松尾芭蕉


早咲きの水仙は、今ごろから蕾を伸ばし立ち上がってくる。房咲きの日本水仙など。お正月にも欠かせない花だ。甘苦い香りが懐かしい。活花では「袴」と言われる株元の薄皮を外さないように気を使う。取ると葉がバラバラになってしまうから。

遅咲きの水仙(写真は八重のラッパ水仙)が、雪に埋もれて、鮮やかな黄色い俯き加減の花と、蝋を潜らせたようなすっとした葉が見えていると、この花は春の使者だと誰もが思うだろう。冬を超えて、健気に咲く花に勇気をもらう人は多いはず。

群れ咲く水仙が風に揺れると、祝杯の歌が聞こえそう。まだ遠い春を眼裏に思い浮かべて。



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