清明 第15候・虹始見(にじはじめてあらわる)木を立て 気を立てる
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春の土用を前に 個人邸のお庭は大体 引き渡しまでこれた
木を立てるのは 気を立てること
彼らがおさまるところにおさまると 気立てのいい庭になる
沓脱ぎ石も据えた 飛び石も打った 園路も整えた
石は静かに 放散しがちな気を 鎮めてくれる
新しい時が動き始めるのを確認して お客さんへお渡しする
デザインの仕事はいちど手を離れる
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夜間作業となるホテルの仕事はまだ途中だけど 空中庭園なので 土公神も多めにみてくれるかな
大きなクレーンで吊り上げられる前に 玉掛けされ 荷台に横たわる樹々と手をつなぐ 伽羅木 スプルース松 細葉の茱萸 不安そうな木というのは そう見える
職人さんたちの技術の掛け算で みんなスクッと 今までとは異なる環境におずおずと立った 強い風にも耐えるように 補強をして この場所で頑張ってくれるように 願う
こうして樹々を立て 石を立て 花を植えるということは
そこに気を立てて 命の循環を生むことになる
それは水の循環でもあるから 光が降り注げば 虹が生まれる