ことのはいけばな 雨水;第4候「土膠潤う」
花を活けるように、言葉を三十一文字の器にのせて活ける。
はなとことばを立てて相互記譜。七十二候の「ことのはとはなの旅」。
松岡正剛さんの『日本文化の核心』を読んで、
僕は面影を立ち上げたいのだと、よくわかった。
あの日、あの場所に花をいけたことが「ことの始まり」だったのか。
大好きな雑木林があって、ちょっと入るとそこは秘密の場所だった。ある時花を始めたばかりの僕はお花屋さんで好きな花を買って、木漏れ日の綺麗な午後、沢沿いに森へ入っていく。そこで活けてみたものの、なんだか貧相な、予想とは大きく異なるものがあった。とても悔しくて、まだ歯が立たないと、何も、力の無い花だったと思い出す。
それでも、残像が妙に光って焼き付いたままだ。
とても大事な場所だったのだ。思っている以上に。とても大事な振る舞いだったのだ。
しかし、その後あの場所は無くなってしまった。
だから、そこに向けて。
つまり松岡さんのいう面影の場、想いの場、きのふの空を立ち上げようとしてきたのかもしれない。
そして今確かに思い出すのは、
あの時あの場所を見ていてくれた何者かがいた。和光同塵して。
そうだったのかと 、布団の中で泣きたいような、
忝いおもいに満たされる。
雨上がり夕映にじむ片袖に
光る涙の花が触れたり