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ことのはいけばな’22 穀雨 第17侯『霜止苗出』

花を活けるように、言葉を三十一文字他の器にのせて活ける。はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅。

そうだ、もう霜が降りることも無くなって、緑はうるうるふくらんで肺活量を最大にし、花は一斉に歌うのだ。人も肺葉をふくらませ、彼らの精と混ざってしまおう。目を花に、皮膚を葉に、胴体を幹に、足は動く根に、一挙手一投足が五感そのものの木になろう。
 風と共にみどりなすからだが生まれる「あ うん あ うん」と。
 テリハイバラはコーン状にぎゅうっと尖りて、ふはぁっと開く。なんと優雅に繰り出される無数の旋回。千回では足りない満開。それでも足りない奥界。
 24節気のちょうど霜降の裏側を駆けている。『奥の細道』では卯の花や茨を見て、松尾芭蕉は雪を幻視する。夏へ向かう緑あふれる時、半年向こう、あるいは前の霜や雪を想う。

浪速なみはやの茨の白の傷傷キズいた
*花二輪浪花荊を悦びて
*ピラミッド蕾逆巻きペンタゴン

*藤蔓の椋の木いっぽん鷲掴み
*巻きつかれ混じり合ひてむ藤と槻
*藤色に色変わるなり凪の海
*ふさふさと乳房のやうに藤ゆする
*たおやかに尾を振りさげて月を釣る
*ふさふさと乳房の宮に熊ん蜂
*小さ子の産毛は空に思いきる天地の重さ引き合う潮目
*海沿いの霞の空に藤伸ばすその指先で触れるたしかさ
*やはらかき藤の巻き取る大紫オオムラのうわむく蘂の甘さたそ知る
*兎に角も目指すところのありし藤
*からまりて砕ける日まで藤の浪
*いつしかも鉄と藤とが思いやる
*空茎といふ文字描く藤の筆
*空茎で「花」と見えしか藤の蔓
*空茎の「花」と見えけり藤の蔓
二而不二ににふにと藤空に置く密度かな
*二而不二と藤の夢先ふれてゆく

*二而不二と藤の乳房や熊ん蜂
*熊ん蜂羽音や蜜をいざないて
*熊ん蜂花粉団子で油売り
*花も待ち伏せ花蜘蛛も待ち伏せて
*躑躅咲きネクターガイドの色濃ゆき花も待ち伏せ蜘蛛も待ち伏せ
*花蜘蛛の臈長けてをり若緑
*花蜘蛛のツツジの花やまんま罠
*花網で待ち伏せしをり花蜘蛛の揚羽大きややり過ごすべし
*つつ花の秘密は漏れて蜜流る
*蜂去てつつ花の蘂そり返り
*蜜標の色褪せてゆく黒揚羽

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