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閉鎖病棟の窓の外。溶けない雪が積もっていた。
窓はある、開けられないだけ。
外の眩しさが、怖いだけ。
微かに聞こえてくる無邪気な声が、怖いだけ。
たったそれ"だけ"が、あまりにも重大なだけだ。
やさしさを孕んだ季節があったとして。
その風が僕の部屋に吹き込むことはない。
これまでも。たぶん、これからも。
季節のない部屋で僕は相変わらず愚かしくて。
窮屈で退屈で、鬱屈で寂寥で、秒針しかない時計と共に日々を過ごしている。……ようするに、死んではいないだけ。
いつかの日、閉鎖病棟で告白された。
僕が恋愛の話を嫌っているからわかるけれど、これは恋愛の話ではない。ないから、だから…忌避せずにもう少しだけ読みすすめてくれると嬉しい。
当時は遠距離に恋人がいたから、丁重に断った。
次の日の朝、洗面台で顔を洗っているとその子が来た。
『元カレと連絡とりたいからスマホ貸して』
鏡の中の僕はどんな表情をしていただろうか。
気持ちは、わかる。痛いほどわかる。
(閉鎖病棟は文字通り、行動範囲だけじゃなく時には人との繋がりも閉ざしてしまう。心を病んだら欠かせない温もりだろうに。退院してからも必要な糸だろうに。)
※病院及び精神医療への批判ではないです。
話を戻す。
言われる側の気分をせめて小さじ一杯くらいでいいから考えてほしかった。別にほんの一摘み分だって構わない。
病室に帰り、いつまでも慣れることのない天井をぼんやり眺めて。さっきの出来事を回顧してみる。
胸に渦巻く名前のない靄みたいな感情に、不快感を抱いた。
真っ白なベッドの上で、思い返して。
でも、思い直して、ふと気づいて。
苦しくなった。
なぜって……そう考えている自分こそが、どうしようもないほどに省みるべき自分だったから。
身を守るための卑下でもなく、事実として。
僕はちゃんと屑だから、似たような事をよくしでかす。
ほんの一摘み分でも相手の感情を想えたとしたら、バケツ一杯分だってきっと容易いだろう。少なくとも僕はそうだから。
誰かに"やさしさ"を撃ち込みたいのだとして、撃鉄がその"想いや思考そのもの"だとしたら。その引き金はきっと……生まれたての"感情"だと思う。
なんにしたって、遠いのはいつだって一歩目で。
重たいのはいつだって、相手を想った優しげな思考や価値観なんかではなく。引き金をひくための些細な感情だ。
会話のなかでそれをするために必要な"機微を拾うアンテナ"みたいなもの。たとえそれが備わっていたとしても。その部位がちゃんと育っていたとしても。
実際のところ、自分の心を守るために閉じている事がほとんどだ。……僕の場合は。
それがせっかく良好な感度をしていても、いや…感度が良すぎるからこそだろうか。
その機能をちゃんと使ってやるのはとても疲れる。
柔らかなクッションから核ミサイルみたいな言葉まで、平等に受信してしまうから。
そんなふざけた言葉たちをちゃんと味わって、意味を知った上で飲み込んで。傷ついて、選ぶことに迷って。きっと何も選べなくなっても『それでも』と。
それでも……選ぶ人たちと、短い人生で何度もすれ違ってきた。
まるでゴミ屑な僕の対義語を、優しい人とするなら。
選べないふりをしてなに一つ選ばない僕の対岸に居るのは、きっとそんな彼らだ。
くだらない話をだらだらと、ずいぶん長くなってしまった。
もう何が言いたかったのかわからない。
どうでもいいか。なんにせよ。
冷静な対応や、大人びた言葉たちは
その実とても感情的なんだと思う
そういえば…、今日だっけ。
成人式。
追伸
僕が大人になれないのは、成人式をバックレたせいです。
…だと思いたいです。
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