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<漫画>伽と遊撃<1>(有間しのぶ)
「伽と遊撃(とぎとゆうげき)」は、「その女、ジルバ」で手塚治虫文化賞・マンガ大賞を受賞した有間しのぶさんの最新作で、現在コミックビームにて連載中。
待望の1巻ということで、単行本が出るとわかった時点からわたしの期待はキュンキュンだったんだけど、その期待に違わぬ面白さだった。
「ジルバ」でもそうなんだけど、有間さんの作品はとにかく、伏線のひきかたが細かくて周到。
とあるコマでポロッと描いてあることや台詞が、後々に「あれか〜!!」という驚きとともにつながったり、回収されたりする。
この「伽と遊撃」も、すでに1話でカラーになっているタイトルページに伏線があるっぽい。
もちろん、本編にも細かくいろんな伏線が散りばめられてる。
ネタバレになるのでそのへんは書かないけど、一見まったく関係なさそうな角度から描かれた人物や物事がキレイに出会い、さらに豊かに複雑化していくストーリーテリングは、いつもながら圧巻だった。
絵こそふんわりしてるけど、扱っているものはとっても深い。
「近未来」「現代人の滅び」「宗教」「創作」「婚姻」「人工生命体」「ディストピア」「親子」「トランスジェンダー」「殺人」「テクノロジー」「人身売買」「隔離された世界」…そうそうたるキーワードがたくさん出てくる。
表情、なんのことはない台詞、仕草によるキャラクターの心理描写も丁寧で、気持ちを引き込まれる。
実はわたし、「ジルバ」も1巻が出た時点で注目していて、どの単行本も手擦れがつくほど読み込んだ。
最初はストーリーや設定のアクセント的な扱いのように見えた「ブラジル」「福島」が、やがてはストーリーの中心となり、3人のメイン・ヒロインに大きく関わることになるとは、1巻を読んだ時点ではまったく想像できなかった。
いい意味で驚いたし、その驚きがさらに夢中になるモチベーションになった。
メイン・ヒロインだけではなく、かの女たちに関わる各人物を「サイドストーリー」で綿密に描きながら、決して本筋から乖離せずにきちんと戻ってくる。
そして、その「サイドストーリー」があるゆえに本筋はより太く、濃くなっていく。
その巧みなストーリーテリングの予感が「伽と遊撃」にもすでにある。
これから先が楽しみで仕方がない!!!
あの「イムリ」を完結させたビームには、どうかこの「伽と遊撃」も「有間さんの考える形」で完結させてほしい。
月刊誌連載ということもあって、ものすごい情報量なので、読むときは心して、ガッツリ時間をとるのをおすすめ。
下記リンク先で試し読みができる。
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