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時をこえて、大和男子はイタリアの花嫁と出合う

そのメーカーと出会ったのは、5年くらい前だろうか。

わたしは、玄米炊飯を上手くやるために低圧が使える圧力鍋を探していた。

探索の日々を過ごすうち、わたしはイタリア製の圧力鍋を見つけた。
シュッとしたデザインが好みだったし、鍋蓋の構造が独特で面白い。マニュアルなしでこの蓋を開け閉めできるひとは、まずいないだろう。

そんな個性的なところが氣に入って、購入した。

やがてやってきた圧力鍋は大活躍の運びとなり、玄米炊飯がはかどった。
簡単な手入れだけでいつも鏡面が綺麗に保たれていて、わたしはとても満足している。

その後、わたしはノン・スティックのフライパンを探していた。
そもそもフッ素加工は大嫌いだから、セラミック・コートのものを使っていたもののどうもしっくりこなくて、「なにかいいやつ、ないかなぁ〜」と、あれこれ探索していたのだ。

そんなときに見つけたのが、圧力鍋と同じメーカーの「チタンコート・パン」だった。
「やっとこ鍋」のように、深めのフライパン自身には取っ手(ハンドル)はなく、必要なときに専用のハンドルを合体させて使うスタイル。

メーカー名は圧力鍋と同じ「Lagostina(ラゴスティーナ)」。
調べれば評判も良く、さほど高価でもない。

鍋物も作れる大きさ(24センチ)かつ、デザインがシンプルで取っ手がないから、そのまま食卓に出しても大丈夫なのだ。

わたしは誕生日のプレゼントとしてこれを買っていただいた(当時「お誕生日ファンド」でご協力くださったみなさま、ありがとうございます)。

しかし、このフライパンはアメリカでの取り扱いがなかったため、支配人はなんと、フランスにオーダーした。

それがまあ功を奏したとでもいうか、当初の予算でフライパンのほかに、同じメーカーの多重構造のステンレス鍋がふたつ、ついてくることになった。
つまり、予算内でフライパンと小ぶりの鍋がふたつと、それぞれの蓋、そしてハンドルがひとつ買えてしまったのだ(蓋とハンドルは別販売)。

オーダーされた鍋と蓋はまとめて配送とはならず、ポツポツと届いた。
やがて、事務方のミスなのか、品物が多重配送されていることに氣がついた。

品物がそのまま届いて請求がないならいいが、もちろんそんなことはない。届いた分だけ、ガンガン請求が来る。
なので、クレームをした。

先方は「送料は負担するしダブった分の返金もするから、鍋は返して欲しい。でも、蓋はあげるね!」という、よくわからないことを言ってきた。
つまり「鍋はダメだけど、蓋はタダでもらってくれていいよ」…ということなのだが、鍋がひとつなのに蓋が複数あって、どうしろというんだろう。

でもまあ、あって困るものでもないから、予備としてもらっておこうか…。
ということになり、多重配送された鍋たちはフランスへ戻っていき、わたしの手元にはガラスとステンレスでできた蓋がふたつ、残った。

この蓋たちはどうしたものか…と思っていたが、わたしが使う鍋類がほぼ欧米メーカーのため、意外にもこの蓋たちは他メーカーの鍋やフライパンにも合うことがわかり、これはこれで得をしたかな…と思っていた。

そして、時はすぎて2021年の大晦日。
わたしのもとには新潟は燕市から、銀色に輝く行平鍋がやってきた。
そう、日本から「お取り寄せ」したのだ。

その美しく輝く鍋は「料理友」として親しくさせていただいている、うりなみ師匠が夢中になっておられる「ジオ・プロダクト」のもの。

師匠が製品を使用中に撮影した写真の美しさにどうもときめいてしまい、迎えることにした。
この鍋を迎えるにあたっては「ひとつ買ったら、ひとつ入れ替え」の「わが家ルール」に従って事前に鍋をひとつ処分し、万全の体制で手にした。

…美しい。
取っ手と本体の接合部が構造上ちょっと掃除しにくいっぽいけど、これはいい。

この銀色に輝く行平鍋で味噌汁でも作ったら、さぞかし風情な感じに…。
行平鍋には蓋がないが(その代わり注ぎ口はある)、すぐに食べるなら問題ないだろう。

……ん???
………でも待てよ????

この大きさは……アレだよ…アレに違いない…。
と、ふと、余っている「イタリアのガラス蓋」をはめてみたら、これが見事にぴったり。

数年の時をこえて、鍋と蓋は出合ったのだ。

行平鍋に、蓋がついた。
はるばる海を越えて北米へやってきた大和男子は、イタリア出身の花嫁と結ばれた。

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実は、支配人は「なぜか」わたしが希望したサイズよりひとつ小さいものをオーダーしており、そのおかげで鍋と蓋が出合えたらしい。
希望通りのものが来ていたら、こうはならなかった。

「大は小をかねる」が家訓のわが家だが、支配人は「なんとなく、ひとつ小さいのを選んだ」ということだった。

これはたぶん、鍋蓋が行平鍋を呼んだのだろう…と思う。

時間をこえて出合った鍋と蓋。
なんだか微笑ましくていい。佇まいも悪くない。

さて、この新婚さんにどんなものを作ってもらおうか?
きっと、アツアツの美味しいものができるに違いない。

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Commy
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