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<漫画>デビュー(とよ田みのる)
とよ田みのる先生の快作『金剛寺さんは面倒臭い』の完結後、初の最新作『デビュー』が、スピリッツ51号に掲載された。
読み切りのストーリーテリングが素晴らしいとよ田先生のことなので、ワクワクしながら読める日を待っていた。
とよ田先生の読み切りについては、短編集が2冊出ているので、ご興味のある方はぜひ読んでみてほしい。
全33ページ。
カラーページもついていて嬉しい。
スピリッツ40周年記念ということで、特別ゲスト掲載となったようだ。
「神(いちばん好きな作家さん)」に影響されて漫画家を目指す、漫画大好きな主人公(男の子っぽいけど女の子)・零(れい)が、七転八倒でタイトル通りにデビューするまでがストーリー。
この零ちゃん、名作『ラブロマ』の主人公の姉…のスター・システムで、本作は『ラブロマ』のパラレルとして読んでもOKっぽい。
漫画好きなら「ニヤッ」とか「クスッ」となる小ネタが色々と盛り込まれているが(しかもタイミングよく意外な方向から来るので、つい笑ってしまう)、これがラストシーンにしっかりとつながっているところが、なんともとよ田先生らしい。
そして、「あの先生(と作品)」への、絶大な愛を感じる。
掲載誌だって小学館刊行だし。
零の家庭環境は「漫画家を目指す人あるある」だと思うが、わたしもかつて零と同じ立場だったころには、同じように頭をかかえてたことが何度もあった。
読んでいてちょっと、その頃の焦燥や寂しさや無力感を思い出した。
だから、零が好きな漫画を読んで心のエネルギーをチャージする姿に、キュッと心をつかまれる。
時の流れとともにもろもろを巻き込みながら進むストーリーは、決して単調には終わらず、テンポ良く流れる。
涙も辛さも喜びも楽しさも狂気すらも、すべてが内包されて、きちんとコメディになる。
零が一念発起して作品にとりかかる前に書き出した「標語」が、実はとよ田先生ご本人が「ご自分に向けて書かれたもの」だと知って、とよ田先生の漫画愛を感じまくってもだえた。
この偉大な漫画愛こそが、『金剛寺さんは面倒臭い』という「漫画でなければ読めないエンターテインメント」を堪能できる快作にしたのだ。
『デビュー』には、あの藤田和日郎先生もこんな感想をツィートしていた。
漫画家の漫画はあんまり読まないのですけど(なんだかいたたまれなるようなカンジでねえ……。すまんね。)
— 藤田和日郎 (@Ufujitakazuhiro) November 16, 2020
コレは楽しかった。
なによりも、とよ田さんは、33ページの読み切りで、面白漫画を描くための秘中の秘と言うべき秘訣をバラしちゃってるんだもんね。すごい。
「デビュー」
やられた!(><) pic.twitter.com/eNBoKUeqKE
「熱き血潮の漫画家」のおひとりである藤田和日郎先生に負けないくらいの漫画愛を、わたしもしっかりと感じた。
楽しかったです、とよ田先生!
また必ず、新作でお会いしたいです。
漫画が大好きで、よかった!!!!
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