呑みの合間の、優しいスープ
そのお店は、もう、ない。
ずいぶん前になくなってしまった。
そこは、わたしがまだお酒の味を覚え始めたころに、ずっと通い続けていたお店だった。
東京の下町の某所、ちょっとわかりづらいところにあったその店は、大将がツテを使って仕入れる珍しくも美味しい日本酒と、それらに合うよう丁寧に作られた酒肴、女将さんの優しい接客が売りの、割烹居酒屋。
通い始めた当初は、日本酒の味なんてぜんぜんわからなかったけれど、いろいろとアドバイスをもらって少しずつ体験するうちに、だんだんと「自分の好