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人は「閉じられた空間」を”居場所”と感じる(1/2)
これまで色々書いていますが、今日はコミュニティ・トレーナーとして、コミュニティの源流に立ち返ってみようと思います。
といってもコミュニティという言葉は、ママ友などの小さな集団から、まちづくりや村おこしなどの大きな集団を指していて、個々人で認識が異なっています。
そんな中、コミュニティについて書いてみても「結局コミュニティって何?」という疑問を解決することができないのではないか。
ということで今回は、コミュニティの本質を理解するために、私たちが小さい頃から耳にしていた「クラブ」について書いてみようと思います。
なぜクラブになのか。
「クラブ」という言葉を聞くと、サッカークラブや囲碁クラブ、老人クラブといった比較的小さな集団のことをイメージする方が多いのではないのでしょうか。まさにその通りで、クラブとは小さなコミュニティのことを指します。
そのためクラブについてしっかりと理解することは、コミュニティを理解するヒントを与えてくれるのではないか。そんな意味も込めて、今日はクラブについて書いてみます。
今回の目次ですが、「クラブ」を語る上でコーヒー・ハウス(イギリスの喫茶店のようなもの)の存在は欠かせません。そのため、まずはコーヒー・ハウスの歴史を辿りつつクラブの誕生について書いてみたいと思います。
コーヒー・ハウスとは
「クラブ」の起源は、イギリスにあるとされています。
17世紀、イギリスで宗教的混乱が起こり、これまで形成されていた階層(上流階級・平民など)は崩壊してしまいました。
この階層の崩壊によって、様々な社会運動が行われることとなりましたが、一方で、すべての人々が身分に囚われず自由に意見を発信することが出来るようになりました。そのため、多くの人々(特にこれまで意見を述べることすら出来なかった身分の低い人々)が自由に議論をするようになりました。
そんな議論の場を支えたのがコーヒー・ハウスでした。
コーヒー・ハウスでは、当時のエキゾティシズム(異国情緒あふれるの意)の表われであった”コーヒー”と”タバコ”を提供していました。コーヒーを片手にタバコを吸う。そしてたまたま隣り合った人と議論をする。当時のイギリス国民の間ではこれらがカッコいいとされていました。
現代でいう「スターバックスコーヒーでMacbookを開きながら作業をする」といった所でしょうか。とにかく超カッコよかった訳です。また、ゆっくりと腰を据えて休憩することが出来る場でもあったため、様々な人と会い、ゆっくりとお話するには最高の場所でした。
こうした「(良い意味で)出会いの場」は、徐々に口コミで話題となり、イギリス全土のみならずヨーロッパ全域に広がっていきました。
※上記は、最古のコーヒー・ハウスとされている(らしい)「パスカ・ロゼズ・ヘッド」について書かれています。気になる方はこちらもどうぞ。
話を戻せば、多くの国民がこぞってコーヒー・ハウスに通うには「出会い」、「議論」の他にもう一つ理由がありました。
それは、仕事に関する最新情報を提供していたという点です。
コーヒー・ハウスでは、毎日多くの職業の人達が情報交換をしています。そのため、「なんか最近○○で事故あったらしいよ」や「今度、向こうから船が来るらしいよ」といった最新情報が自然と集まりました。そこでコーヒー・ハウスは、こうした情報をまとめて、”最新ニュース”という形でお客さんに提供するサービスを始めました。
当時は貿易や海事に係るニュースが中心であったようですが、こうした”情報のプラットフォーム”としての機能性を果たしていたことも、コーヒー・ハウスが広がった要因です。世界的に有名な保険会社ロイズもこのコーヒー・ハウスが発端とされています。
常連さんの誕生
「出会い」、「最新情報」、「カッコいい」などの理由からイギリス国民の生活の拠点となったコーヒー・ハウスですが、時間とともにコーヒー・ハウスの常連さんが誕生していきます。
常連さんは、毎日決まって同じ席でコーヒーを飲みながら、他のお客さんとの会話を楽しみます。そのためコーヒー・ハウスの中には、その人がいつも来る時間帯になると、自然とその席を空けるお店もあったといいます。
そんな常連さんも、毎日様々なお客さんと会話を交わしていると、
「いつも来るあの客は俺と考えが合う」
「たまに来るあいつは俺と合わない」
というように次第に議論する相手や情報交換をする相手を選ぶようになっていきました。
こうした”お客さんを選ぶ常連さん”がちらほらと出てきたことで、これまで個人が楽しむ場であったコーヒー・ハウスに、いくつかのグループが形成されることとなりました。高校入学時はバラバラであったクラスがいくつかのグループに分かれていく、といった感じでしょうか。
コーヒー・ハウスの中で複数のグループが出上がり、議論を交わすメンバーが固定化されていく中で、ふと、あるグループメンバーの一人がこんなことを言い出します。
「いつも決まったメンバーだったら、もうコーヒー・ハウスじゃなくても良くね?」
ということで、常連さんを中心に形成されたグループは、コーヒー・ハウスを飛び出して、特定の場所を借り切ったり、建物すべてを買い取ったりして、グループ専用の議論(活動)場所を作るようになりました。
この場所では、限られたメンバーだけが出入りを許可され、入りたいという人が現れた時、みんなでその人を審査して、入会を許可する、という方法が取られていました。俗にいう会員制というものです。こうして、コーヒー・ハウスをキッカケに多くの会員制のグループが形成されていきました。
これが初期の「クラブ」であるとされています。
コミュニティに閉鎖性はつきもの
以上がクラブの歴史的な経緯です。
つまり、当初、オープンな(公開性をもった)場であったコーヒー・ハウスをキッカケとして、クラブという閉鎖的な小さなコミュニティが形成された、ということです。
何が言いたいのかというと、コミュニティは閉鎖的なものであるということです。いや、むしろ閉鎖的だからこそコミュニティは活性化する。「みんなが集まる場をつくりたい」と思っていても、結果としていくつかの閉鎖的なコミュニティが出来上がってしまう、ということです。
行政が「地域住民が集う場を作りたい」と思って、交流センターを作っても、結果として人が集まらないのは、この閉鎖性をというものを意識していないからです。
そのため、これからコミュニティを作られる方も
「いずれコミュニティは分断される」
「少人数で集まることが出来る場も作っておく」
という事を意識した方が良いのかもしれません。
コミュニティについて
・クラブは小さなコミュニティ
・クラブの歴史はコーヒー・ハウスから
・オープンなコミュニティを作ってもいずれは小さく分断される
・コミュニティは閉鎖性がつきもの
次回は、コミュニティと閉鎖性についてもう少し掘り下げてみます。
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