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「ひとり親世帯の命綱」児童扶養手当の増額と所得制限の緩和を 4団体が訴え 

 子どもの貧困対策やひとり親支援に取り組む4団体が11日、厚生労働省で記者会見を開き、児童扶養手当の増額と所得制限の緩和を訴えた。
 
 要望では、次の3点を求めた。
1) 児童扶養手当の子ども1人の満額支給を1万円増額し、4万4140円から5万4140円にすること
2) 児童扶養手当の子ども2人、3人以上の多子加算額も、それぞれ1万円増額すること
3) 児童扶養手当の満額支給の所得制限を現行の160万円から200万円(収入ベース)とし、一部支給の所得制限を現行の365万円から400万円(収入ベース)とすること
 
 一部報道では、政府案として、①児童扶養手当の増額は2人目以降の子どもが対象となる多子加算で、3人目以降の加算を6000円あまりから1万円に引き上げる②児童扶養手当の満額支給の所得制限を現行の160万円から190万円に、一部支給の所得制限を365万円から385万円に引き上げる方針が示されている。

ひとり親家庭の貧困率は44.5%、支給額は据え置き

 子どもの貧困解消に取り組む公益財団法人「あすのば」の代表理事小河光治さんは「児童扶養手当はひとり親家庭の命綱」と切り出した。2021年の厚生労働省の国民生活基礎調査によると、日本のひとり親家庭の貧困率は44・5%と世界でもワーストクラス。一方就労率は8割を超えており、働いても生活が立ちゆかない状況だ。
 
 小河さんは「次元が異なる少子化対策の中で、ひとり親を取り残していいのか。まずはひとり親から支援を充実させていかなければならない。子どもが1人のひとり親は半数以上にのぼる。政府案ではこれらの人たちに届かない」と訴えた。
 
 児童扶養手当の支給額は長年にわたり据え置かれている。子ども一人あたりの満額支給額は1983年は3万2700円。2023年は4万4140円で40年間に35%しか増えていない。一方、最低賃金(全国加重平均額)は40年間で411円から1004円へと、2・4倍に伸びた。
 
 所得制限の基準額も1998年は満額支給204万8千円、一部支給407万8千円と現在よりも高い水準だった。2002年、小泉純一郎首相(当時)による行政改革で所得と手当の関係の見直しがはかられ、満額支給130万円、一部支給365万円に引き下げられた。

11日、超党派の国会議員による子どもの貧困対策推進議員連盟でも、児童扶養手当の増額が課題に挙がった=東京都内

「空腹で学校に行けない」「修学旅行の費用を出せない」

 全国36のひとり親支援団体からなる「シングルマザーサポート団体全国協議会」副代表の佐藤智子さんはシングルマザーの置かれている厳しい状況について事例を紹介した。
 
 加盟団体の食料支援アンケートでは子どもが1人、2人の母子世帯でも、とても苦しいという声があるという。
 
 「お代わりしたくてもしない子がいて、支援のお米があるよというとお代わりをする」
 「不登校気味だったが食料支援を受けて空腹が満たされるようになり、学校に毎日通えるようになった」
 「修学旅行の費用が出せなかったので、ひとりだけ学校で自主学習をしていた」
 「お弁当を持たせられないので、昼休みはトイレにこもっている」
 北海道の団体からは「子どもが一人でも、生活が苦しく、厳冬期でも暖房はつけない。何とか食費を捻出しようと母はお昼を食べずに、子どもの食費に回す努力をしている」という報告もあった。
 
 佐藤さんは「短期的な給付金でなく、長期的な支援が必要です。空腹で学校に行けない子どもがなくなり、修学旅行の費用が出せるように、児童扶養手当の支給額を第1子から上げてください」と結んだ。
 
 

ひとり親世帯の子ども達の様子について報告するシングルマザーサポート団体全国協議会の佐藤さん(右から2人目)=東京都内

「がんばって収入を増やすと手当が減る」
 

公益財団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは10〜11月、困窮世帯に米や餅などを送る「冬休み 子どもの食応援ボックス」の申し込みを受け付けた。6743件と過去最高の申し込みがあった。その9割がひとり親世帯だった。
 
 申込者のアンケートでは児童扶養手当の増額を求める声があった。
 「児童扶養手当をもう少し増やしてもらえれば、子どもが、自分がやりたいことを縛りなく行う事ができて、そこから将来につながると思う」
 「児童扶養手当が足りません。年齢が上がると、お金もかかります。2人目以降の金額が少なすぎます。増額をお願いしたいです」
 
 所得制限緩和についても「がんばって収入を増やすと手当が減る。いつまでも貧困から抜け出せない」という声があった。
 「最低限の衣食住が守られるように」という切実な声もあった。
 
 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン国内事業部の田代光恵さんは「児童扶養手当が少ないから子ども達の権利が侵害されている」と指摘した。
 

児童扶養手当は「ひとり親世帯の命綱」と話す小河光治さん(左から2人目)=東京都内

2割弱の子どもが冬休みに3食食べられない

「あすのば」の理事で、日本大学教授の末冨芳さんは「子どもの貧困対策推進法ができて10年が経過したが、子どもの貧困の解消にはほど遠い。その一番の要因が、児童扶養手当が低いままだということにある」と述べた。
 
 今後5年程度の国のこども政策の方向性を定める「こども大綱」案には「今この瞬間にも、貧困によって、日々の食事に困るこども、学習の機会を十分に得られないこどもや、進学を諦めざるを得ないなど権利が侵害された状況で生きているこどもがいる。こどもの貧困を解消し、貧困によるこうした困難をこどもたちが強いられることのないような社会をつくる」と盛り込まれた。
 
 こども家庭庁の審議会の委員も務める末冨さんは「衣食住すら保障されない子ども達がひとり親に集中している。冬休みや夏休みに夕食が食べられない子どもの比率はひとり親世帯では17%。相対的貧困率が11%といわれているが、それを上回る2割弱の子ども達が今から来る冬休みにご飯が食べられない。物価高の中で、ますます大変なことになるだろう」と話し、「すべての子どもたちに生きる権利を保障するための児童扶養手当の増額が今行われなければ、こども大綱の意義すら信頼されないのではないかと強い危機感を持っている」と強調した。 
          (阿久沢悦子)


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