D2Cブランドとは?D2Cの意味やメリット、今後の展望について解説!
D2Cブランドという言葉を聞いたことがある方の中には、それがどのようなビジネスモデルでありどんなメリットがあるのかよく分からない場合が多いかも知れません。
D2CとはECサイトを使い、企画、製作、販売などを全て一つの会社で運営する販売形式のことです。
コストカットや顧客との関係構築がしやすいなどのメリットがあり、多くの業界で参入者が増加する傾向にあります。
新しいモノの売り方として注目されるD2Cの特徴や、今後の展望について紹介しましょう。
この記事でわかること
D2Cブランドの特徴やビジネスモデル
導入するメリット
今後の業界の展望と課題
こんな方におすすめ
D2Cブランド立ち上げを検討している方
D2Cのマーケティング戦略について知りたい方
D2Cの仕組みを詳しく知りたい方
1.D2Cブランドとは
D2Cとは、「direct to customer」(ダイレクトトゥカスタマー)の略で、直訳すると「消費者に向けて一直線」という意味になります。
データを活用したマーケティングや、SNSを駆使したコマーシャルと集客を用い、小売店を通さず直接(direct)欲しい人(顧客=customer)に自社製品を届けるモノの売り方です。
D2Cブランドの概要
実店舗を持たない
先行投資が少なく少人数でも開業できる
未経験やフリーランスからでも参入しやすい
アパレル、食品、コスメティックと親和性が高い
直営店を持ったり、商品体験会を開く企業も一部存在しますが、ほとんどが自社サイトによる電子商取引のみで販売を行っています。つまり、店舗の家賃などを負担する必要がありません。
そのため、D2Cブランド立ち上げには先行投資としての資金が少なくて済み、デザイナー、ディレクター、庶務担当などごく少人数で会社を始められることが大きな特徴です。
開業資金が節約できるため、新進気鋭のデザイナーやフリーランスとして働くパタンナー、副業でハンドメイド作品を販売していた方などが始めやすいビジネスモデルでもあり、新規参入のハードルも低くなっています。
またこの形式は、服飾業界や食品業界で効力を発揮しやすい特性を持っています。そのため、日本でのD2Cブランドという言葉そのものが 、アパレルブランドを指して使われる場合も多くなっています。
とはいえ、D2Cブランド商品はアパレルや食品だけでなく、化粧品やペット商品など多岐に渡る分野で様々な商品とサービスの販売に利用されているのが現状です。
1-1.D2Cのビジネスモデルを解説
製品の企画、製作、製造、宣伝、販売まで、他企業を挟まずすべて自社のみで行うビジネスモデルがD2Cの基本です。
これまでのビジネスモデルでは、モノやサービスの企画を売る商社、製造を行う工場、プロモーションを担当する広告会社、店舗を提供する小売業者など、数多くの仲介業者を経由することが一般的でした。
D2Cでは中間企業とのやり取りを必要としないため、スピーディーに企画を進め、低価格で販売できることが特徴です。
あるいは、InstagramやtiktokなどのSNSを最大限に活用し、アピールしたい顧客へダイレクトに情報を届けていることもビジネスの形態として特筆すべきポイントです。
大手とD2Cの比較
2.D2Cの定義
先の内容を踏まえて、D2Cというビジネスモデルには、2つの定義の存在を指摘することができます。
小売店を持たない
小規模で少量の生産を行う
それぞれ詳しく説明します。
2-1.小売店を挟まない
D2Cの定義の一つ目は、小売店などを挟まず自社ECサイトを通じて商品販売を行っていることです。
大手企業やブランドは、新製品の通販にAmazonや楽天といった大規模販売プラットフォームを利用するケースが多い傾向にあります。
これは自社ECサイトを立ち上げるより、もともと高い集客力を持つショッピングモールに出店する方が売り上げに繋がりやすいからです。
ですが大手のモールにはデメリットもあります。同業者の競合店舗が多いため、自分たちの製品に注目を集めづらいという点です。
D2Cブランドはこのような既存のモールを利用せず、独自の販売拠点を使い、SNSを使ってアピールすることで、効率よく集客を行っている点が重要なポイントになっています。
2-2.小規模で少量の生産を行う
D2Cの2つ目の定義は、大量生産・大量消費から脱却し、小ロットやオーダーメイドによって、顧客が本当に欲しいと思っている商品を売るということです。
大手メーカーが新商品を開発企画する場合、自分たちのブランドコンセプトに沿うもの、自分たちが売りたい商品を積極的に売ろうとする傾向にあります。
ですが、D2Cブランドは顧客が欲しがっているアイテムに着目し、ニーズを叶える品物を提供することにこだわります。
そのため、ニッチな顧客層をターゲットにすることが可能になり、ブランド同士の棲み分けが確立されることで、着実に収益を上げることが可能です。
あるいは、一つの会社でコンセプトの異なるブランドを複数を運営し、広く浅く顧客を得ている場合もあります。
3.D2Cブランドの4つの特徴
ここからは、D2Cブランドのビジネスモデルの4つの特徴をそれぞれ解説します。
3-1.中間業者を介さない
D2Cブランドでは、店舗を業者から借り受けたり、プロモーションに広告会社を利用するなど、中間業者を利用することはありません。そのため、コストカットに繋がるなどのメリットが生まれます。
ですが、中間業者に業務を依頼しない分、社内で一人一人が担当する作業が多くなるというデメリットもあります。具体的には、デザイナーがディレクターも兼任したり、事務担当者が広報やサイト構築を行わなくてはならないなどです。
特にサイトの運営には最低限のITスキルが求められるため、全く知識のない方には対応が難しくなるでしょう。
3-2.製品開発からプロモーションまでを一貫して行う
D2Cブランドでは、中間業者を介在させないため製品開発、プロモーション、販売をすべて自社で行う必要があります。
一般的に新作のアイテム、例えば服を開発するには以下のような工程が必要です。
新製品の企画を社内で立ち上げる
企画を元に外部のデザイナーに依頼して、デザインと仕様書を作成してもらう
デザイナーの作成したデザインを元にパタンナーが型紙を作成
試作品を作り、チェックと修正を繰り返す
最終的な仕様を縫製工場に発注
完成
デザイナー、パタンナー、縫製に関わる作業は外部の人材やフリーランスの方に依頼することが多く、手数料や契約料が発生し、販売する製品の価格に反映されます。
D2Cブランドでは自社のスタッフがこうした一連の業務をこなすため、一般的なアパレルブランドよりも低価格で販売することが可能です。
高品質な新商品をリーズナブルに販売できることが、ビジネスモデルの2つ目の特徴といえます。
3-3.データを活用したマーケティング施策
製品開発を行う際、顧客に意見を募ったりアンケート形式の調査を実施して結果を商品に活かしていることも、D2Cブランドの特筆すべきポイントの一つです。
D2Cブランドには何よりも買い手のニーズを知ることが大切になります。市場のトレンドよりも消費者が個別に持っている興味や必要性の方が、商品を作る上で重要だからです。
マーケティングには多くの方法が存在し、複数のデータを同時に解析することが必要になります。D2Cブランドでは、リピーターや潜在顧客からのリクエストを活用することで、顧客が本当に欲しいものを作り上げることができます。
SNSを活用した情報収集を行い、服飾ブランドの場合ならデザインのみならず、生地の特性や機能性などどのようなニーズが存在するのかを把握して、有効な施策につなげます。
3-4.顧客とのコミュニケーションの重視
D2Cブランドでは顧客の要望を重視しているため、情報収集と併せて顧客とのコミュニケーションに力を入れています。
購入してもらった商品に対してフィードバックをもらうことで改良や新製品開発に活かすこともできますし、アフターフォローをしっかりすることで確実にファン層を増やしていけます。
熱心なファンは自分からブランドの発信をしてくれるため、プロモーション戦略としても顧客との関係構築は重要な要素といえます。
4.D2Cブランドの3つのメリット
D2Cブランド立ち上げには、3つのメリットがあります。まずマーケティング戦略の自由度が高いこと、顧客データを有効活用できること、顧客との関係構築がしやすいことです。
このような特徴は、小規模な会社や新規立ち上げ、他業種からの参入の場合により効果的です。ここからは、D2Cブランドのメリットについて説明します。
4-1.自由度の高いマーケティング戦略
D2Cブランドでは、企業規模がコンパクトなために、マーケティング戦略の自由度が高くなり、自社商品を欲しがっている人にピンポイントで製品をアピールすることができます。
マーケティング戦略には複雑で細分化された業務をいくつも連携させていく必要があります。
なぜなら、市場は製品やサービスでほとんど飽和状態であり、単純に自社商品の特徴や価格を表示するだけでは消費者の心に響きません。自分たちがアピールしたい客層に合わせた広報のやり方を模索する必要があります。
例えば、若者世代にはテレビを観る習慣が無い人が増えています。にもかかわらず、テレビCMを中心に10代向けのファッションやコスメアイテムを宣伝しても、情報が必要な層に届く確率が低くなってしまいます。
ブランドが目指す購買層が普段どのような方法で情報を得ているのかを見極めて、必要なコマーシャルを発信することが不可欠です。
D2Cブランドは、商品ラインナップや生産数を必要最低限にし、顧客層も限定的に設定することが可能なため、マーケティング戦略を立てやすいメリットがあります。
また、広告を発信する際にも、比較的短いサイクルでコンテンツを変更することで、どのテイストが消費者に受けるのかというデータを多く取得することも可能になります。
企業規模の小ささがターゲットを選定しやすくさせ、顧客のニーズに関する情報収集が簡単になるため、マーケティング戦略の自由度が高くなっています。
4-2.顧客データの有効活用
D2Cでは顧客データを収集しやすく、集めたデータを次の商品開発や売上向上のために柔軟に活用することができることもメリットです。
例えば販売が終わった製品の中で、どんな特徴を持っているアイテムがより支持されたのか、アパレルなら生地の種類や微妙な色合いまで詳細に確認することができます。
こうしたデータは新製品開発に活かせますし、顧客へフィードバックすることで更に精度の高い商品ニーズを得ることが可能になります。すると固定ファンが逃げにくくなるため、ブランドの地位確立に繋がります。
大手メーカーでは、消費者や市場に関するデータが大量にストックされたまま適切に利用されないことがあり、有効活用されず放置されている顧客データのことを、データレイクと呼ぶことがあります。
D2Cは情報の無意味なストックを無くし、必要に応じて適切に活用できることがメリットです。
また、顧客データは次のような対策にも活かせます。
売り上げデータを活用し、優良顧客に割引やクーポン配布などの優遇措置を取る
顧客に対しきめ細かいケアを行う
顧客のグレードをリピーターより上位のアドボカシーに成長させることができる
アドボカシーとは擁護する人という意味を持ち、セールスにおける最終目標の一つは、商品やブランドの擁護者を増やすことでもあります。
アドボカシーはブランドとの親和度が極限まで高くなっているため、容易に離れて行くことはありません。つまりアドボカシーの存在は会社の固定収入に近いものであり、事業の運営と維持に大きな影響を与えます。
大手企業では難しい繊細なアフターフォローも、規模の小さなD2Cなら取り組みやすくなります。加えて、次に述べる顧客との関係構築にも深く関わってきます。
顧客との距離感が近く、顧客ニーズを正確に把握できるからこそ、売り上げデータを元に最適な振り返りとプラン修正を行って、売れる新製品開発に繋げられるのも大きなメリットです。
4-3.顧客との関係構築がしやすい
D2Cブランドでは、顧客との距離が近いため関係性を構築しやすいこともメリットの一つです。
SNSを通してユーザーとコミュニケーションすることを重視しているからです。商品開発やプラン修正にユーザーからの意見を取り入れているため、ユーザー側にも自分も一緒に作ったブランド、という意識が生まれます。
このような距離感の近いブランドと顧客の関係性こそが、D2Cと大手の最も大きな違いを形作る要因です。
購入していただいた製品について感想をもらったり、不具合がある場合にすぐ対応したりすることで、お客様からの信頼を獲得し長く愛用される商品を提供し続けることができるようになっているからです。
D2Cブランドのメリットまとめ
5.D2Cブランドの成功事例
日本で成功しているD2Cブランド一覧の中で、特に知名度の高い有名ブランド3つを紹介します。
5-1.FABRIC TOKYO
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株式会社FABRIC TOKYOが展開しているメンズスーツやオーダーシャツのブランドです。採寸のための店舗を展開しつつ、色合いや生地の種類はウェブ上で好みのものを選択することで、手軽にオーダーメイドスーツを購入することが強みとなっています。
スーツのオーダーサービスは、大手紳士服メーカーでも取り入れているものですが、FABRIC TOKYOの成功の秘訣は、ビジネスウェア全般のフルオーダーを扱っている点にあります。フォーマルスタイルだけでなく、オフィスカジュアルなアイテムの一点物製作を依頼することができるのが大きな特徴です。
働き方やライフスタイルに合わせて、ビジネスシーンだけでなくプライベートでも使える高品質なウェアを提供するために、述べ10万人以上を対象に培った独自の採寸技術を駆使します。顧客の体型や体質に合った最適なデザインを作り出し、着心地や見た目というあらゆるポイントで高い顧客満足度を実現しました。
採寸店舗では、紳士服の生地や形状について深い知見を持ったスタッフによるアドバイスを受けることもできます。自分だけの一着が欲しいビジネスマンによって支持されるブランドといえます。
5-2.Anker
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Anker japanが展開している充電器やモバイルバッテリーのブランドです。国内だけでなく、欧米にも高いシェアを持ち充電機器を牽引する世界的なメーカーとなっています。
Anker japanでは比較的早くECサイトを使った商品販売を行っていましたが、スマートフォンの普及や他社のD2Cビジネス参入増加の波を受けて、今までと同じ売り方では良い商品であってもお客様の目に届くことはないという課題に直面しました。
そこで、高性能な純正品と同様なスペックを半額以下で提供できる商品開発を開始し、リピーターのいる充電器ブランドづくりという方向へ目的をシフトしました。
Ankerのバッテリーや充電器の機能性は、他社製品と比較してさほど大きな違いがあるわけではないようです。しかし、その僅かな違いにこだわることで、品質の良さを求めているユーザーの心をしっかり捉えることができました。
自社のECサイト上には、バッテリー一つを探すためにかなり詳細な条件設定が組まれています。出力の違い、ポートの数以外にも、ソーラーチャージが可能かカーアクセサリとして活用できるかなど多岐にわたる機能性が網羅されています。その中から満足できるアイテムを探すことができることも、ブランドの強みの一つといえるでしょう。
5-3.LYFT
日本有数のフィットネスインフルエンサー、エドワード加藤氏が運営するフィットネスウェアのブランドです。短期間で成功を修めたことで知られるD2Cブランドであり、創業1年目で既に新商品は数分で完売、イベント時には数百人が会場を訪れるという高い人気を誇っています。
立ち上げ当初、代表の加藤氏が日常的なトレーニングの配信、世界大会の経験、フィットネスモデルとしての活動を通してSNS上に多くのフォロワーを獲得していました。そのため、フォロワーの方に向けて発信する商品を開発するという、D2Cの理想的な成長過程を通過してきた過去があります。
既存のファンのニーズを熟知していたこと、商品の機能性やデザインがトレーニングをこなす人たちのニーズに見事にマッチしたことが、急速な売上向上に繋がりました。
D2Cブランド戦略に不可欠な世界観作りに力を入れており、優れたデザインのサイト構築が可能なECプラットフォームを利用することで、ブランドの持つ特徴を魅力的に発信することができたことも特徴です。日本のD2Cブランドの成功例として典型的な事例ということができるでしょう。
6.D2Cブランドの今後の展望
D2CブランドはECサイト全体の売り上げを牽引する存在として注目されており、個人事業主から大手企業まで多数の業界から参入するケースが増えています。
しかし、単純に売り上げ向上の戦略として導入することが正しいのか、本当に自社の利益に繋がるのかなど、今後の展望を疑問視する声もあがっています。
そこで、新しい消費の形としてのD2Cブランドの今後のあり方について考察します。
6-1.Eコマースの普及によるD2Cブランドの伸び
D2Cブランドの売り上げは、2015年以降上昇を続けており、まさに右肩上がりの状態が続いています。
原因として、Eコマースの普及というD2Cブランドの得意分野を後押しする風潮があったことが大きいといえるでしょう。ネットショッピングに代表されるEコマース全体の売り上げは、日本国内のみならず、アメリカや中国と言った経済大国を中心に世界規模で拡大し続けているからです。
今後もネットを基盤とした商取引の需要が高まり続けるのなら、D2Cブランド業界が発展していく余地は大いに残されていると予測できます。
特に、消費者にとって買い物の意味がモノ消費からコト消費へと変化している現状を鑑みても、顧客満足度の高い製品を作り出すD2Cというビジネスモデルにはアドバンテージがあるといえます。
第二次世界大戦終了以降の大量生産時代を経験し、消費者はモノを所有することよりもモノによって得られる体験(コト)に重きを置くようになっています。服には、その服を着ることで感じられる快適さこそが重要です。D2Cという顧客データを活用した商品開発は、こうした状況への親和度が非常に高くなっています。
D2Cの今後の展望まとめ
Eコマースの普及率伸び続ける限りD2Cの優位性も確保される
コト商品のニーズに対応しやすいアドバンテージがある
6-2.顧客体験を重視したD2Cブランドの差別化競争
D2Cブランドの多くが抱えている課題が、自社製品のオリジナリティ確立だとされています。株式会社ネオマーケティングが実施したアンケートによると、D2Cビジネスに関わっている人材の約4割が他社との差別化ができていないと感じており、同じく4割近くが顧客データの活用が上手くいっていないと回答しています。
差別化には、顧客データ解析を通じてニーズを深掘りし、ブランドのコンセプトやストーリーを明確にしなくてはいけません。
ブランドストーリーとは、製品の価値を消費者に訴えかけるためのコンテンツのことです。ブランドストーリーを通じて、消費者がその商品を手にした時にどんな体験ができるのかをプロモーションすることができます。
例えば、肌触りがいい、暖かくなるなどの機能性、その商品を使うと気分が良くなるといった情緒的価値、商品を持っていることで自己表現に繋がる社会性の発信など、様々な要素を紹介することです。
他社とは違う顧客体験ができないのなら、ブランドの求心力は下がりファンを維持することができなくなります。これを防ぐために必要なことが、徹底した情報収集と分析、それに基づいたプランニングと実践のサイクルを繰り返すことです。
常に顧客の状態とニーズを知るために動き続けることこそが、自社ブランドが差別化競走に勝ち抜き消費者に支持され続けるために必須なことといえます。
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