ヒトラーと呼ばれたマネジャーは対話という奇跡体験で人生を変えた〜第一章〜
Prologue
現在、ボクは対話の専門家として様々な企業と関わらさせていただいています。
多くの経営者、ビジネスパーソンと対話する日々を送っているボク。
2022年にはこちらの本も出版しました。
ありがたいことに充実した日々を送っているボクですが、今回は無知で未熟でクソダサいことばかりしていた過去を晒していきます。全三章からなる12,000文字超えの自己紹介。
ぜひ、最後まで読んでもらえると嬉しく思います。
Episode1 気の抜けた憂鬱な毎日
25歳になろうとしていた頃、地方都市のある美容室でボクはスタイリストデビューした。
そこから1年程度で月の売上が100万円を超えていた。
ボクよりもずっと先にスタイリストデビューした先輩の売上も、気づかない間に抜いていたんだ。
地方都市の美容室で、デビューしたての若手が達成した数字としては、悪くなかったと思う。
アシスタントの頃、毎日カットを教えてくれた先輩。
そしてお客様には本当に感謝していた。
当時、美容業界ではスピーディーに月商100万円を達成した美容師のことを「ハイパフォーマー」なんて呼んでいた。一応、ボクもハイパフォーマーってやつだった。
けど、そんな言葉を聞いてもボクの心はどこか冷めていた。同年代の有名美容師が雑誌にのっているのを見てもシラけた気分で眺めていたことを覚えている。
シラケていたボクだけど、他人から見たらとても順調に見えていたように思う。
プライベートでは新婚生活を送っていた。
美容師として、一応は順調なスタート。
けど、デビューして1年経った頃から、ボクの心には日々鬱憤が溜まっていた。
これには理由がある。ボクがスタイリストデビューした頃、業界にも大きな変化が訪れていた。ぶっちゃけ、先輩たちがいうほど旨味のある業界ではなくなってきていたと思う。
世代が上の経営者の話を聞くと、「出店したら行列ができて整理券を配った」なんて話は、ザラだった。
しかし、ボクがデビューした頃にはそんなバブル感は微塵もなかった。
みんなが集客というものに頭を悩ませはじめていた頃だったと思う。
これは何も美容業界に限ったことではない。どこの業界でも「昔ほど簡単に売上があがらなくなっている」なんて声がよく聞こえてきていた。
現場で、日々決して甘くはない空気を感じていたボクは、100万円の売上を達成するために頭を使っていた。
今風に言えば「マーケティング」を導入したと言える。
どんな方法かを話すと長くなるから割愛するけど、みんなが必死に何十人もモデルさんをカットするのを尻目に、ボクはまったく違うことをしていた。(当時、モデルさんを50人~100人担当させてからスタイリストデビューさせるのは、どこの店でも普通だった。けど、ボクは4人しか担当していない。)
そして、ここからが鬱憤の本当の理由。
毎月行われるクソ長い定例会議ではいつも決まって「売上げアップ」について話し合われている。
なのに!!先輩も上司も、誰もボクがなぜスピーディーに売上をあげたのか、その方法をひとつも聞かない…
ボクはまったく認められていなかった。
少なくともボク自身はそう感じていた。
Episode2 本気になれそうな話
「オレは認められていない…」
そう感じていたボクにある夜、集合がかかった。集合をかけてきたのは部長と代表。
「なんの話だろう、怒られるのかな?」
そんな気持ちで集合場所の居酒屋に向かった。「怒られるかも」と身構えてしまうのは、20代の終わりまでボクが引きずった悪いクセだった。子どもの頃からいつも怒られていたから、大人からの呼び出しは「怒られるに決まっている」という思い込みができあがっていたのだ。
話を居酒屋に戻そう。
「怒られるかも…」と身構えていたボクに告げられたのは「新店の店長をしないか?」という話だった。
隣の市に居抜き物件がでる、そこに新店を出す。その新店の店長としてボクが候補になったのだった。
話を聞いた瞬間、喜びの気持ちがわき起こってきた。本当に嬉しかった。
「認めてもらえていないと思っていたのが、やっと認めてもらえた!」
そう感じたから?
いや、残念ながらそんな素直な理由で喜んだわけじゃない。
ボクが喜んだ理由は「代表や他のスタッフたちから物理的距離のある場所で、新しいことが試しまくれる!」だった。
脳内には一瞬で最高のイメージが広がった。自分が試してきて、うまくいっていたマーケティングプラン
「お店全体でこんな風にお客様を迎えたい」と思っていた接客。
さらには誰にも邪魔されることなくチャレンジできる時間。
ボクの脳内では「最高やん」というフレーズがリフレインされていたんだ。
「淳之介、新店で店長していく覚悟はあるか?」こう代表に最終確認されたとき、ボクは即座に「覚悟あります。やらしてください」と答えていた
そこから、ボクの中では新店を成功させるために必要な情報収集。その情報をもとにしたイメージ固めがはじまっていた。たしか、オープンまでには6か月間くらいはあった。
だから、そこまで慌てることもなかったんだけど、それでも心は浮足立っていた。
Episode3 話が違う!
「新店は自分の理想のお店にする!」
そんな野望のような想いをいだき、ほどよい緊張感とワクワクを感じて過ごしていたときだった。
支店の店長が退職するという連絡が回ってきた。その支店はボクの目から見たらかなり問題を抱えていた。
利益は出ていた。けど、会社のブランディングを破壊していたのだ。また、その店舗で働く後輩たちに良い影響を与えているとは言い難かった。
詳細は省くけど、「代表が店長に権限を与えすぎているのが問題」だとボクは思っていた。それは教育や経費、運営のあらゆることに対して。
また、代表は「会社を組織化していきたい」とよく口にしていた。
その言葉と真逆のことをしている経営者に。そして、その店舗に対して何もできない自分にボクは苛立っていたんだ。
だから、お世話になった先輩が退職すると聞いたときも「しょうがない」としか思えなかった。
がっ、しかし!!!
この退職がボクの未来を変えた。売上をあげていた店長が退職したことによって、隣の市に新店を出すという話が消えた。
出店取りやめの理由は「人が足らないから」
めちゃくちゃベタな理由にボクは悔しくてしょうがなかった。
さらにボクの心に追い打ちをかけるような話がやってきた。
「店長が退職したのだから、次の店長はお前だ。もともと店長をするのは決まっていたから問題ないだろ」
話が違う!あまりにも違う!
ボクは店長をしたかったのではない。
「店長という地位に一ミリも興味なんかない!この人(代表)はいったい何を言っているんだ?ボクは新しい店で、新しいシステムを築きたいんだ!」
同じ店長でもボクにとってはまったく意味が違う。ワクワクのイメージは一瞬で消え去った。
ボクが引き継ぐことになったお店は、もともとは大人の女性をターゲットとしたお店。チープなアジアンテイストにならないようにと、エントランスに大理石を敷き詰めて「バリをコンセプト」としていた。
しかし、引き継ぐ時点でバリ風の面影は一切なく、エントランスには大きなTV。セット面にはかなりの本数の"空の酒瓶"が並べられていた。さらには店内にダーツなんかもあった。
つまり退職した店長が権限をフル活用して、バリ風のお店をBARみたいな美容院に変えてしまっていたのだ。
この美容院の店長になったその日から、ボクにとって地獄の日々が始まった。
Episode4「お前、店長だろ?」
前任の店長が店を去る最後の夜、引き継ぎ時に店を見張ることからボクの店長業務はスタートした。
何十万円もする観葉植物がお店にはたくさんあった。その観葉植物は会社が購入したものと前任の店長が私物として購入したものが混ざっていたんだ。
前任の店長が退職する際に、間違って会社で購入した観葉植物をもっていかないように見張ることが、店長業務の第一歩だったんだ。
「明日から店長として店に行きます」と代表に伝えたら「今夜から行ってくれ。お前店長だろ?」の一言で、店長としての初仕事が「見張り」になってしまった。
ボクはこの時、内心怒りまくっていた。
ただでさえ不本意な異動でムカついていたのに、代表が一番可愛がってきた人間の(お世辞にも良い状況での退社とは言えない)最後を、ボクが見張らなくてはいけない。
「これはあまりにも酷すぎる…」
「トップとしての責任逃れもはなはだしい…」
ボクは怒りに満ちたまま見張りを終えて「完了しました」と代表に報告に行き、バイクを飛ばして帰宅した。
その日の夜、ボクはなかなか眠ることができなかった。とにかくムカついていたんだ。そして、なんだかよくわからない気持ちを感じていた。
そんな中、たった一つの決めごとをした。
「決して代表を許さない。そして、必ず店を以前の活気あったときのように売上をあげる」と。
怒りは人を大きく突き動かす原動力になる。
誰にでも怒りが原動力になるわけじゃないかもしれない。だけど、ボクにとってはそうだった。
そして、ボクは生まれつき怒ると冷静になるタイプだ。
冷静になればなるほど、頭の中に戦略が広がってくる。
自分の中でおぼろげながらもゴールが見えてきて、それと同時に店長二日目にやるべきことも見えてきた。
まずは、お店をバリ風に戻す。
そして本来のコンセプト「大人の女性のための美容院」に戻す。そのためには、まずはお店の大掃除からだ。
脳内の中でやることが決まって、ボクは眠りについた。
Episode5 ミッションを胸に刻む
翌日、スタッフへの挨拶も早々に切り上げ「これから当分は掃除で忙しくなる」と告げ、とにかく店をピカピカにしていった。
そんな中、代表からさらに驚く言葉を聞かされる。
「自分たちでできる掃除は精一杯しました。しかし、前任の店長がモノを移動させたりしていたせいで、修繕が必要なところがあります。そこは、どうしても自分たちでできないので、業者を入れて直してください」
ボクは店の売上をあげていくことに集中していた。
そして、そのために必要な当然のお願いをしたのだ。
するとまさかの一言をボクに放った。
「まだ、売上をつくっていないよな。
売上をつくる前からお金の話は違うだろ。
だから、そんなお金は出せない」
ボクは知っていた。前任の店長が店を自分好みにカスタムする費用に会社は300万円くらい出していたことを。ダーツの機械だって無料じゃない。
それにあのダーツの機械ってわりと月々の電気代もかかる。
なのに「店を元通りにしたい」という、普通のお願いに対してこの返答。
あまりにも、あまりにも前任の店長とボクに対しての扱いが違う。
ボクは普段汚い言葉を使わないようにしているけど、この時は代表に対して確実にこう思った。
「このボケ、脳みそ腐っとんな💢」
そして、あらためて「許さない」と誓い、さらに怒りのパワーを増幅させた。と、同時に「お金をかけずに売上をあげる」というミッションを胸に刻んだんだ。
続く👇