読み解き読書レビュー「おチビがうちにやってきた!  未来が見える!? 2才のちなつはトクベツな子」(ネタバレあり)

この本に込められている問いかけは何でしょう。
それは
「誰かにとってのトクベツになるにはどうすれば良いか?」
ということではないでしょうか。

それは難しいことではありません。
なにもかも平均点の平凡な人でも大丈夫。
その人のことを思って奮闘することです。
いつも一緒にいることです。
好きになることです。
つまり、相手をトクベツな存在だと思うことなのです。

本のサブタイトル、
「未来が見える!?2才のちなつはトクベツな子」
というのは

“未来予知”という普通の人が持っていない
トクベツな能力を持っている、
というだけではなく、
実咲にとって、
ちなつは”トクベツな存在だ”ということが
掛けられているんですね。
唯一無二のかけがえのない大切な存在、
という意味の”トクベツ”ということです。

このサブタイトルをつけることで、
「誰かのトクベツになるにはどうすれば良いか?」
という問いの答え、

「相手をトクベツな存在として大切にすれば、
自分自身も相手にとってトクベツな存在になれる。」

ということを暗に伝えているのかも知れません。

実咲が、ちなつにとってのトクベツになりたいと
思っていることが分かるのは次のシーンです。

ひとつは、
『ちなつちゃんにとって私が
「なくてはならない人」
になるんだって思ったら、
こんな平凡な自分でも、トクベツになれた気がした。』(p56)
というところ。

もうひとつは、
ちなつちゃんのお姉ちゃんの名前が”千秋”だとわかって、
“ちゃきちゃん”と呼ばれているのが、
もしかしたら自分ではないかも知れない
と疑い始めたとき、

『(私って何なんだろう)ちなつちゃんにとって、
私は、千秋ちゃんのかわりでしかなのかな・・・』(p104)

と悩んでいる部分です。

さらに、この本では同時に
「自分がトクベツな存在になるにはどうすれば良いか?」

という問いかけもあるのではないかと考えました。

つまり、
目立ちたい、
個性を発揮したい、
自分らしさを持ちたい、
という気持ちですね。

これについては、
トクベツなことをしなくても、
好きなことを一生懸命やるだけで十分にトクベツな存在なんだ、

というメッセージも読み取れるでしょう。

成績も優秀でスポーツ万能な男の子である颯太が、
成績、身長体重、運動能力、どれをとっても、
とことん平均値の女の子である
実咲に対していったセリフ、

「まいごの話もそうだし、毎月図書館でおはなし会の手伝いをしているっていうのもそうだけど・・・・。そういうのって、点数とか出ないから目に見えにくいだけで、もし数値化できるとすれば、美咲はぶっちぎりの一位なんじゃねえの?」(p170)

というのから読み取れます。

ちなみに、
“ちなつ”が未来予知の能力を発揮するための3つ目の条件について、
本文では伏せられていますね。

その答えは、わたしは
「トクベツな人と一緒にいること
=大好きな人と一緒にいること」

ではないかと考えました。
あなたはどう考えましたか?

ちなつちゃんの特殊能力とは何か。
その発動条件とは?
ちなつちゃんを狙う黒い組織との攻防など、
ハラハラドキドキもあって
読み物としても面白いですし、
“トクベツになりたい”というメッセージも
隠れていて読み応えがありました。

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