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アリバブダイアリー9.「出会い」

学生生活を過ごしたワンルームマンションの部屋には、海に大型客船が来るとウォーと唸り声のような汽笛が聞こえ、私はそれが一番のお気に入りだった。真新しく味気ないちゃぶ台で一人ご飯を食べ、同じ場所に布団をひいて寝る事に違和感を感じながら生活をしていた。作りものでままごとの部屋に迷い込んだみたいな気がしていた。

しばらく経ったある日、夫と駅前のビルの前で出会った。彼は坂の多い街でマウンテンバイクに乗って通勤していて、帰り道に何か硬い針のようなものを踏んづけてタイヤをパンクさせてしまい、どの程度のダメージなのか確かめる為自転車から降りてしゃがみ込みタイヤを触っていた。


スーパーマーケットで買物を済ませた私がそこを通りかかり、狭い道幅ですれ違う人を気にしながら自転車の様子を見ている彼と話したのが私達が初めて交わした会話だった。彼は荷物をたくさん抱えて通る私や他の通行者にすみませんねと何度も言っていたので、私は彼をなんだか可哀想に思って一度通り過ぎたが引き返し、彼に話しかけた。


「私が住むマンションはすぐそばにあるので、大家さんに話してそこの1階で様子を見てみてはどうですか。」そう話しかけた後、私は大胆な行動をしてしまった私自身に驚いてしまったが、彼は「ありがとう。助かるわ〜。」と無邪気に笑った。自転車を押しながら坂道を歩き互いに自己紹介をした。

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