生体吸収率を向上させる新技術BioSorb™︎を用いた水溶性CBD原料の紹介


1. BioSorb™︎とは

BioSorbとはカンナビノイドを水分散型にし、生体吸収率を向上させる新しい技術である。Bioには100%天然由来の原料を使用していること、Sorbには生体吸収率を向上させる新しい技術という意味が込められている。

1-1. 難溶性物質の吸収経路

CBDやCBN等の難溶性物質は水に溶けず、初回通過効果により経口摂取では限られた生体吸収率になることが科学文献で示されている。これらの課題を克服するために、新たな配合技術であるBioSorbが開発された。

栄養を吸収している小腸の絨毛表面の外側は「非拡散水層」と呼ばれる水性の膜で、内側はリン脂質を主成分とする脂質二重膜で覆われている。

最初は水系、次に油系へという流れでの溶解が進み、吸収されている。脂溶性の物質は非拡散水層を、水溶性物質は脂質二重膜の透過がしづらくなる。

通常、油溶物は胆汁酸等と混ざってミセル(親水性と疎水性を兼ね備えた分子が水中で集まって球状になった粒子)となって非拡散水層を通過し、その後油溶物がリン脂質膜を透過し吸収される。しかし、ミセル化されず吸収される前に排泄されるものも多い。

カンナビジオール、カロテノイド類、ポリフェノール類、脂溶性ビタミン類やコエンザイムQ10などは水に溶けず、そのまま経口摂取しても、油に溶かしても吸収率が低い事が知られている。

1-2. 吸収率向上の技術

油溶物が非拡散水層を通過するためには「水分散化」と「微細化」の2点が重要になる。

油溶物が「水分散型」の形体なら、非拡散水層を透過し、その後は自身の高い脂溶性によってリン脂質膜を透過し吸収されるそのために、脂溶性物質ををミセルと呼ばれる球状の液滴にあらかじめパッケージングしておく。

そうすると、ミセルは吸収部位に到達するまで生理活性物質を封じ込めるため、吸収表面に最大限に到達してから生理活性物質が放出される。

また、粒子を100nmほどに微細化することで腸壁を通過しやすくする。

BioSorb™︎ は静岡県に本社を置き、革新的な技術と研究に取り組むペトロユーロアジア社が開発。長年、株式会社カネカの還元型、酸化型コエンザイムQ10を水分散型にするなど、10種類以上の水分散型粉末を開発し、世界中で販売している技術力の高い企業である。

2. CBD・CBNの機能性

カンナビノイドとは麻に含まれる生理活性物質の総称で、特にCBD(カンナビジオール)やCBN(カンナビノール)などはストレスや不安の軽減、不眠の解消などの効果が期待されている。

身体にはエンドカンナビノイドシステム(ECS)と呼ばれる、身体の恒常性(ホメオスタシス)の維持に関わる仕組みが備わっている。恒常性とは、体外の環境変化に対して、体内環境を一定に保たれていることを意味する。

恒常性の維持は、身体に分布する受容体(細胞の表面にある錠前のようなもの)に物質が作用することで行われる。

例えば、カンナビノイドが作用する2つの主要な受容体はCB1とCB2である。CB1は脳、生殖器、脚筋、肺など、CB2は脚骨、脾臓、大腸・膵臓に分布する。

他にも5-HT3、GPR55、TRPV1、A2Aなどの受容体が現在科学的研究の対象となっている。

リガンドとは特定の受容体(レセプター)に特異的に結合する物質で受容体の鍵のようなものである。CBDやCBNはリガンドの一種で、受容体にはまり込んで反応を引き起こす。

リガンドにはアゴニスト(作動薬)とアンタゴニスト(拮抗薬)がある。アゴニストは受容体に結合して活性化する。アンタゴニストは受容体に結合し、他のリガンドが結合して反応を引き起こすのを阻害する。

例えば、CB1受容体は脳や中枢神経に分布し、活性化すると高揚感、睡眠導入、食欲増進などの影響をもたらす。

CBNはCB1受容体のアゴニストであり、結合すると身体に高揚感がある。一方でCBDはアンタゴニストであり、CBNなど他の生理活性物質の結合を阻害するため不安やイライラなどを解消し、気持ちを落ち着かせる。


3. 自社の取り扱うCBD原料

自社は米国・オレゴン州にも法人(OFF US Inc.)を持っている。提携工場で徹底した品質管理のもと、第三者機関の分析によって、この度政府より発表された新しいTHCの法規制に準拠する形で製造したCBD原料を輸入している。

3-1.  U.S.Hemp Authority認証

以下は取得している認証や商品仕様であるが、U.S.Hemp Authority認証について解説をする。

U.S.Hemp Authority認証とは、商品の製造に対して高い品質基準を設け、消費者や小売業者にヘンプやCBD製品への信頼を与えるための業界の取り組みである。

ケンタッキー州で設立された米国ヘンプ協会が2016年に、農産物としてのヘンプの業界全体の基準を策定するための組織的な取り組みとしてスタートした。

栽培・製造・保管・販売における要件が細かく定められており、代表的な項目を抜粋する。

・合成カンナビノイドや生物工学(バイオ発酵)を利用したヘンプは使用が認められない。
・栽培者は、廃棄物や浸食を管理し、湿地帯や水路、その他の非農耕地が劣化しないように保護しなければならない。重金属、農薬、pHなどの土壌検査を徹底して行うこと。
・分析に使用する試験所は、ISOの認定を受けている必要がある。
・最終ロットの製品は、以下の潜在的な汚染物質の検査を受けなければならない。農薬、重金属、残留溶剤、微生物、マイコトキシン。
・すべてのヘンプ製品は「内容を真実かつ明確に示すラベル」を付けなければならない。これには、カンナビノイドの含有量の表示などが含まれる。

https://hemptoday-japan.net/12202#index_id5

3-2.  原料の製造と輸入の流れ

以下の流れで製造したCBDアイソレート原料を輸入している。

・ヘンプを収穫
・粉砕してペレット化し、1000kg容量の袋で保管
・ヘンプを超臨界Co2を用いてCBDを抽出
・クルードオイルの完成
・余分な脂肪、ワックス、クロロフィルを除去
・蒸留・精製によって不純物を取り除く
・ブロードスペクトラムの完成
・溶剤(へプタン)を反応器に入れ、冷却してCBDを結晶化
・残留溶媒を蒸発で除去するためコンベクションオーブンで加熱
・分離されたCBDの結晶を粉砕し微粉末にする
・CBDアイソレートの完成
・CBNは上記工程で製造した原料に熱や光を加え、分解を促進して製造
・品質検査のために分析する、販売のためにパッケージとラベルを貼る
・第三者分析機関(ISO17025取得)でTotal Δ9-THCが限度値以下を確認
・関東信越厚生局麻薬取締部に製造バッチ毎に輸入許可の申請と許可取得
・食品での検疫ならびに税関申請手続き

3-3.  法令の遵守

また、この度政府より発表された新しいTHCの法規制については以下で解説をしている。

CBDやCBN等のカンナビノイド原料の輸入にあたっては、THCが含まれないことを第三者機関の分析で証明することが求められており、アメリカのFDA(食品医薬品局)と厚生労働省の認定分析機関にて、1ppm基準にてΔ9-THCの検査を実施している。

Total Δ9-THCは以下の計算式で算出する。

Total Δ9-THC = Δ9-THC + Δ9-THCA × 0.877

上記の結果を当てはめると、Total Δ9-THCは「1ppm + 0.877ppm = 1.877ppm」以下であることがわかり、残留上限値10ppm以下の適法となる。

その他のリスクについては以下で解説をしている。

3. BioSorb™︎ CBD・CBNとは

前述のBioSorb™︎ を使用して、CBD(カンナビジオール)やCBN(カンナビノール)を水分散型へと加工し、生体吸収率を高めたものがBioSorb™︎ CBD CBNである。

3-1. 商品の特徴

①100%植物由来成分を使用(プラントベースド)
全て天然の原料を使用しているため、オーガニック・ビーガン嗜好の方にもおすすめ。海外から輸入する水溶性CBDはポリソルベートやグリセリン脂肪酸エステルなどの人工の界面活性剤等を使用している場合がある。

②長期の分散安定性
1年以上の安定性を保証している。液体に溶かした際に沈殿や分離することで、液体中でCBDの偏りが発生し、飲用時の見栄えが悪い、成分分析書で正しい測定結果が出ない、ラベルに記載した量のCBDを摂取できなくなるなどの問題を防ぐ。

③高いCBD濃度(30%-35%)
CBDの含有率が高い水準。含有率が高いほど原料を使用する量が少なくて済むため、混ぜる液体へ与える味や色への影響が少なく、一般的にコストパフォーマンスも高い。5-20%程度の含有率が一般的。

3-2. 商品概要

・風味  :ほとんど無味無臭 
・溶解性 :水に溶ける 
・抽出方法:Co2 
・包装容器:アルミパウチ 
・保存方法:未開封のまま高温多湿を避けて室温で保存してください。
・原材料 :カンナビジオール(米国・オレゴン産)、食用油、デキストリン/増粘剤(アラビアガム)、乳化剤 
・栄養成分:エネルギー726kcal、たんぱく質0.3g、脂質66.8g、炭水化物30.8g、食塩相当量0.11g (100gあたり)

4. 商品に関する研究開発

4-1. 生体吸収率

BioSorb™︎ を開発したペトロユーロアジア社がコエンザイムQ10を水分散型にした際、同技術を用いて生体吸収率が3倍程度になっていることが分かる。

・ペトロユーロアジア株式会社と株式会社カネカが共同で清泉クリニック整形外科に試験を依頼。
・通常のコエンザイムQ10と水分散型コエンザイムQ10を、それぞれ20代の健康な理学療法士(男性8名、女性2名)若者5名ずつに空腹時に、ソフトカプセルとして短回経口投与をした。
・投与前、投与から3、6、9、12、24時間後の6回血液を採取。集めた血漿を凍結したまま株式会社カネカテクノリサーチのLC-MS/MSで血中濃度の変化を確認した。
・AUC(血中濃度-時間曲線下面積)を計算すると水分散型コエンザイムQ10の方が通常のものよりも、3倍近く高いことがわかった。

還元型コエンザイム Q10 水分散型粉末の単回経口投与後の血中濃度動態

上記はコエンザイムQ10の事例であるため、CBDやCBNについても現在、研究開発を予定しているが、生体吸収率の向上が予想される。

4-2. 即効性

自社での研究実績がないため、CBDを水分散型にしている他社の論文を引用する。

血中濃度が最大化になるTmaxは通常のCBDは摂取後3時間、水分散型CBDは1時間で、3分の1に短縮されていることが分かる。また生体吸収率は1.7倍になっている。

・絶食状態の健康なボランティア16名を対象に、ランダム化二重盲検クロスオーバー設計で自社製品(SEDDS-CBD)の薬物動態プロファイルを評価することを目的。
・SEDDS-CBDと中鎖脂肪酸トリグリセリドで希釈したMCT-CBDを比較。
・CBDの投与用量は25 mg。GMP条件に準拠して製造したハードカプセルを使用する。
・SEDDS-CBDはMCT-CBDよりCmax が4.4倍、AUC0–8h /AUC0–24hが、それぞれ2.85/1.70倍高くなった。
・Tmax はSEDDS-CBD(1.0時間)の方がMCT-CBD(3.0時間)よりも大幅に短くなった。
・いずれの投与後も安全性に関する懸念は認められなかった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31426272/

4-3. 分散安定性

以下は自社のBioSorb™︎ CBDを純水に溶かし、溶液に光を入射、反射した光(後方散乱光)を6週間に渡って測定した際のグラフである。

液中での分散が安定していると、粒子にばらつきがないため、後方散乱光強度は一定になり、不安定だと上下に動きが出る。

グラフが一定であることから分散安定性が保たれていることがわかる。

水溶性CBDの安定性の向上を行うため、粒子径やゼータ電位の測定を基に、原材料や製造工程を工夫している。

粒子径はCBDがミセルを形成する上で非常に重要で、一定のサイズを下回ると、体内の酵素や吸収組織との接触面が増えるため、吸収率も高くなる特徴がある。

一方で粒子が小さすぎる場合、粒子の表面積が増えることで高濃度の原料を作りにくい、化学反応による色の変化が早くなるなどのデメリットもある。また安全性を懸念する意見もあり、EUの欧州委員会では100nm以下の大きさの粒子の割合が50%を超える場合「ナノマテリアル」と定義し、規制している。そのため、平均粒径が100nm前後になるように開発をした。

ゼータ電位とは分子間の電荷による反発力を示す。炭酸飲料、ジュース、水などの溶液によってpH(水素イオン指数)が異なるが、ゼータ電位はpHに影響を受ける。ゼータ電位の絶対値が最大となるようにpHを調整すると、凝集や沈殿しにくくなる。

4-4. 機能性と推奨摂取量

弊社はBioSorb™︎ を活用したCBDとCBNの最適な配合量や比率を検討し、気分の高揚やリラックス感の両方を促進する商品の開発を行っている。

モニターイベントを実施し、BioSorb™︎ CBN・CBDを以下の条件で摂取いただいた。

・実施は2023年の8月
・対象者は10人。4が女性で6名が男性。年齢 20-40代
・CBDや大麻経験者は3名、未経験者が7名
・週1日以上をお酒を飲む人が6名、それ以下の頻度の人は4名
・飲料はカフェオレ、ジャスミン茶、レモネード、オレンジジュース
・1杯あたり容量は200ml
・1杯にBioSorb™︎ CBNとCBDを組み合わせて25mg含有
・全員が4杯飲み、1杯目を飲んでから1時間後にアンケートを取った

「何杯目で効果体感がありましたか?」という質問に以下の回答を頂いた。

合計10名へのアンケート結果
・1杯目以降(25mg)1名:10%
・2杯目以降(50mg)3名:30%
・3杯目以降(75mg)4名:40%
・4杯目以降(100mg)2名:20%
・体感がなかった・わからなかった 0名:0%
※平均2.7杯(25mg × 2.7杯 = 67.5mg)で 効果を感じることが分かる。


全く体感が無いという人は含まれておらず「飲んだ時の感覚を言語化するとどのようになりますか?」という質問には以下の回答をいただいた。

・口数が自然に増える、緊張がとける
・食欲が増した
・眠気が引く、眠くなる
・ふわっとする
・高揚感がある
・思考するのが難しい
・持続性は15~20分ぐらい

アルコールと同じく効く人とただ眠くなる人がいた。眠気以外の副作用の報告は無かった。

母集団が多くないことや、段階的に摂取を行うなどの条件で実施したため、より正確な結果が得られるような試験デザインで今後は実施していきたい。

GABAやテアニン等の別成分との機能性の比較、CBDやCBNの配合比率なども今後の研究テーマである。

5. 商品の用途例

BioSorb™︎CBD CBNはオイルやベイプなど油脂を使用しない剤形で商品化する際、また即効性が必要な商品を作る際に有効に活用できる。例えば以下のような活用が想定される。

5-1. リラクゼーション飲料

飲食店にヒアリングすると、ポストコロナでは、企業の接待や宴会、二次会などの外飲みは減少傾向にあるという声が多い。

国税庁の資料(2024年)によると成人一人当たりのアルコール摂取量は平成5年のピーク時と令和4年を比較すると、75%以下に低下しており、アルコール離れが進んでいることが分かる。

また、WHOによるアルコールの有害な使用を低減するための世界戦略(2010年)により、広告規制、安売りや飲み放題の禁止や制限、課税や最低価格制による酒の価格引き上げなどが提言されており、国連のSDGs(2015年)でも「薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する」コミットメントがなされている。

これらの影響もあり、厚生労働省は2024年2月に健康障害を減らすため、飲酒に関する初のガイドラインを正式決定した。高血圧やがんなどの疾患毎に発症リスクが高まる酒量を純アルコール量換算で示した。

大手飲料メーカーと商談する際も「タバコのようになったらどうしよう…」「何か代わりの物を作らないと」という危機感を感じていることが分かる。アサヒと電通が共同で仕掛ける「スマドリバー」というノンアルや微アルなどアルコール量を選択して飲むことができる店舗、GABAやテアニンを配合したコカコーラの「Chillout」始めとして、ノンアルコールや機能性飲料の開発販売が始まっている。

サントリーの資料(2023年)によると自宅内での飲用率、飲用頻度が上昇した、2012年〜2022年の10年間で約1.4倍にノンアル市場が成長したとの考察がある。

これまでの飲む人の健康目的・休肝日という意味合いでのノンアルではなく、飲む人も飲まない人も共存して交流の場を楽しむことができるような、新しい食文化の普及が進んでいる。

新技術BioSorb™︎を用いた水溶性CBD原料はリラクゼーション飲料の開発に役立てることができる。

5-2. 睡眠サプリメント (入眠用)

ポストコロナの生活環境では、リモートワークやスマホ使用時間の増加などによって、不眠患者が増えていることが問題視されている。

経済協力開発機構(OECD)の発表によると、日本人は世界各国と比較して睡眠時間が短いことが分かる。睡眠不足に起因する日本の経済損失額は1380億USDとも言われており、国内総生産(GDP)比で見ると調査対象国の中では最下位である。

https://morningpitch.com/innovation_trend/30725/

解決策としてGABA・テアニン・グリシン・ラフマなど機能性成分を活用した睡眠サプリメントが商品化されているが、体験した筆者の感覚としてCBDやCBNは特にその中でも群を抜いて睡眠への機能性が高いと感じる。

通常のCBDを使用すると吸収に時間がかかるが、BioSorb™︎CBDを用いると即効性があり5-15minで効果を感じることができる。

そのため熟睡に通常のCBDを使用し、入眠に水溶性CBDを使用して2種類の商品化をしている事例がある。

上記はグミの事例だが、カプセルやチョコレートなど剤形を問わず活用できる。

6. まとめ

自社の機能性原料「BioSorb™︎ CBD・CBN」を中心に、詳しく紹介をしてきました。原料を試してみたいという方、共同研究を実施したいという方など、はぜひお問合せを頂ければ幸いです。


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