気になって仕方がない事
あれはまだ梅雨入りが発表された割に、そこまで雨が降らないなあと思っていた時の事。
通勤途中、その道すがらに建ってある一軒のアパートが目に入る。
その日は、梅雨の割にやっぱり晴れていて、けれども午後からだったか、深夜だったかに雨が降り出すという予報が出ていた時であった。
そんな予報が出ているにも関わらずアパートのその部屋のベランダには、一枚の掛け布団がぶわっと干してあった。
ああまだ今は朝だし、きっと昼頃には取り込もうと思って干したのだろうなあ、なんて思いながら私は仕事に向かう。
夕方過ぎまで働いた帰り道。
今朝に見た天気予報通り、暗くなった空からは沢山の雨がザーザーとこぼれていた。
折り畳み傘を開き、急いで帰路につく。
その時ふと、視界に既視感のあるものが目に入った。今朝に見た掛け布団だ。
ザーザーと降り頻る雨の中、先程まではパリッと乾いてやろう!なんて意思表示が見えてしまうほど好天の中に干されていた掛け布団が、今は見る影もなく雨に打たれている。
これ、持ち主さん発狂ものだな…私なら寝る時の布団がびしょ濡れになってしまったら、いくら自分のせいであっても物凄く落ち込むと思う。
夏場冷え切った部屋で着る布団ほど気持ちのいいものはないから。
時は流れあの日から早いものでもう2週間は過ぎようとしている。
その間にも悪天候は続き、毎日のように雨は降り続いた。しかし、どういう訳かあの日から今日に至るまでの間、あの好天の日にぶわっと干された掛け布団は取り込まれる事なく
未だにあのアパートの1室のベランダに当たり前のように干されている。
その当たり前さが私には凄く恐ろしくて、凄く自由な気がして、一体いつになればあの掛け布団はあの部屋に吸い込まれていくのだろうと、そんな日が本当に来るのかを妄想をしながら、今日もまた通勤途中にアパートの1室を見上げていた。
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