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彼女たちのキッチンとクローゼット

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『料理×ファッション×小説』 をテーマに書いた小説をまとめています。 不定期更新ですがよろしくお願いします。
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記事一覧

日曜日のマイコ/とっておきのバッグとエビグラタン

日曜日のマイコ/とっておきのバッグとエビグラタン

地下鉄のシートの真ん中あたりに座った瞬間、目の前の人がおや、という顔をした。
「(あ、どうもすみません)」
マイコは最近バッグを新調したばかりで、今日は都心の百貨店で春夏の新作を見に行った帰りだった。
お行儀が良い、というよりも一癖あるそのバッグを買うまでマイコは散々迷っていたが、結局その癖が好きになってしまったマイコは迎え入れることにしたのだったが人を驚かせるようなもんだったかと思うと少し萎縮し

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土曜日のミキ/レインシューズと煮込みハンバーグ

土曜日のミキ/レインシューズと煮込みハンバーグ

ミキは失敗をしない人だ。

正しくいえば失敗を恐れて用意を周到にする人だ。
雨の予報が少しでもある日はレインシューズを履くようにしているし鞄には必ず折りたたみ傘が入っている。

「この前急に雨に降られて革靴ダメになっちゃって」

という友人の愚痴にそっかあと頷きながらどこかホッとしている自分がいることに自分という人間の底意地の悪さを感じる。
レインシューズを履いてて良かった、折りたたみ傘を持ってて

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金曜日のカオリ/しわくちゃのブラウスと焼きネギの豚汁

金曜日のカオリ/しわくちゃのブラウスと焼きネギの豚汁

とんじる派かぶたじる派か。

急な問いに口に運ぼうとしたサンドウィッチに集中していたカオリは慌てて顔を上げる。

「え、あ、はい?」
「いやだから、とんじる派かぶたじる派か地域で呼び方違うよねって話」
「あー、自分とんじるですね」
「へえ」
「でもさ、ぶたじるの方がうまみある感じない?」

何故か、声を掛けられて新年度開始から一緒にご飯を食べるようになって2週間ちょっと。カオリは若干の疲れを感じて

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木曜日のリン/ほつれたワンピースと花のしゅうまい

木曜日のリン/ほつれたワンピースと花のしゅうまい

リンの家の最寄り駅には、徒歩一分で到着するスーパーがある。
そこは24時まで営業していて、食品も雑貨も充実している。
なによりリンが気に入っているのは洋服のお直し屋さんが入っていることだった。
リンは洋服を集めるのが好きだが、裁縫の腕はからきしダメだ。
特に古着を中心に買うことが多いリンにとって、お直しは重大なテーマである。
試しに、とファスナーが効かなくなったボリュームの大きいスカートも、店員さ

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水曜日のナルミ/スプリングコートとタルタルソース

水曜日のナルミ/スプリングコートとタルタルソース

ナルミという名前は漢字で書くと成実、となる。
ナルミはその名前の通り大した成果を上げたのかと言われると「大器晩成型ですね」とわざとふざけて後ろ頭をポリポリと掻いてしまうような人間だった。
親も大した事を考えてこの名前をつけたもんだ、と思う。同時にどんなことを達成して欲しかったのだろう。今更聞くのも恥ずかしく疎くて、なあなあにして過ごしている。

水曜日の電車は若干疲れの色が濃くなる。
今朝はつり革

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火曜日のアヤカ/gelato piqueと中華風コーンスープ

火曜日のアヤカ/gelato piqueと中華風コーンスープ

アヤカが目を覚ましたのは、夕方五時半のチャイムの音のせいだった。
町内の子供に早く帰りましょう、と促すそのやさしい声はどでかいスピーカーを通すことで割れてしまっていて、若干耳障りだった。
「(こんな時間まで)」
枕元に置いてあった仕事用の携帯を見るとうんざりするぐらいの通知が入っていたが、アヤカ宛ての緊急性の高い話はなく、ほっとしてもう一度枕に顔をうずめる。
調子が悪いと気づいたのは、火曜日の朝に

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月曜日のマリ/白ニットとカレーうどん

月曜日のマリ/白ニットとカレーうどん

マリはいつも通りに定時で仕事を終えたあと、最寄り駅から徒歩五分のスーパーに立ち寄っていくらか割引されていた豚バラ肉を買えて上機嫌でいた。
ゆでうどんはかごの中。油揚げは家にある、贅沢をして青ネギを入れたいところだがまだ白ネギの在庫が多いので我慢。
あと他に入れる具材はーーと考えたところで、多くしすぎても雑多になりそうな気がして手に取るのを辞めた。
結局、豚バラ肉とゆでうどんを通勤用のバッグに入れて

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