書評『ネット怪談の民俗学』
近年、ネット上で怪談やオカルトが盛り上がりを見せているのをひしひしと感じている。
YouTubeで怪談、オカルトというワードで検索をかければ、多くの動画がヒットするし、その中には数十万回の再生数を得ているものも多い。
今や、ネットはYouTubeを中心に、数多くの怪談や都市伝説で埋め尽くされている。
古来より、恐怖は凄まじい勢いで、人々の間を拡散していくものだ。スピードが売りのインターネットと怪談は元来相性が良かったのであろう。
では、ネットと怪談の蜜月はいつからスタートしたのだろうか?
その歴史を丹念に紐解き、一冊の書籍に見事にまとめたのが、今回書評する『ネット怪談の民俗学』である。
2ちゃんねる(現5ちゃんねる)に代表される、匿名掲示板誕生以前のネット発怪談からスタートし「コトリバコ」など、インターネット掲示板全盛期に誕生した、有名怪談から「バックルーム」などのSNSからブームに火がついた、最新ホラーもしっかりとカバーしてある大作だ。
(個人的には「きさらぎ駅」に代表される、異界駅の歴史変遷が書かれた箇所を非常に興味深く読んだ)
本著では、民俗学が専門の筆者の力量がいかんなく発揮され、きちんとしたエビデンスとデータを用いて、感覚に頼らずに、ネットに残った膨大なデータを資料として、アカデミックなアプローチで精査した結果「ネット怪談」を学術的研究本にまで、成功している。
小泉八雲の「怪談」から始まった、恐怖の研究は、学校の怪談・都市伝説・心霊スポットなどを経て、インターネットの世界にまでその知見が及ぶようになった。その、膨大なネットの海を見事にサーフし『ネット怪談の民俗学』という書名がこれ以上ないくらい、しっくりくる一冊に仕上げた、筆者の努力と力量に賛辞を贈り、今回の書評を終了させていただきたい。
ジョルノ・ジャズ・卓也
友人でありライターの草野虹氏と「虹卓放談」というPodcastをやっています。よろしければこちらも視聴していただければ幸いです