「あを」を求めて、私はそっと海にいく|瑠璃紺
白崎海洋公園
(和歌山県日高郡由良町)
オフィスの少しくすんだ窓から、空を流れる雲を見る。
今の職場の境遇に、大きな不満はない。
評価はいささか身に余る。
ただ、このままでいいのか。
この小さな窓の向こうには、もっともっと広い世界がある。
そこへの気持ちが抑えられない。
転職は、今や珍しいことではない。
ただ、積み上げた評価と立場を失う恐れを拭いきれない。
一歩踏みだす勇気が欲しい。
***
そんな時、私が訪れるのがこの海。
和歌山県の中部、湯浅御坊道路広川インターチェンジから車で約30分。
紀伊水道に突き出た岬に白崎海洋公園はある。
岬の端の展望台に登ったら、
真っ白な石灰岩の岩礁と
明るい日差しに照らされて
瑠璃紺に輝く海がそこにある。
この明るい海は、私の背中を押してくれる。
未来は今の積み重ね。
今できることをやるしかない。
そんな一歩を後押ししてくれたのだ。
かつて四国高知の友人が、
「高知は険しい四国山地で、
愛媛や徳島と隔てられているけれど、
大海原でアメリカ大陸と繋がっている」
と言っていた。
「絶海の孤島」など、人を拒むイメージのある海も
見方を変えれば道である。
ここから景色を見渡せば、
そんな前向きな感覚も何だか少しわかる気もする。
(つづく)
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