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アートの晩餐|無数の廃材が語るもの

私が美術展に行って、心に残ったとっておきの作品をご紹介。
皆さんと一緒に自由に楽しく味わう
「アートの晩餐」。

今回の作品は前回に引き続き、金沢21世紀美術館から。
企画展「Lines(ラインズ)—意識を流れに合わせる」で出会ったエル・アナツイ《パースペクティブス》 2015年です。


エル・アナツイ
ナイジェリアを拠点に、アフリカの伝統的イメージを大胆な手法で発信する彫刻家。金属のボトルキャップを銅線で編み上げた、ガーナの伝統的な織物を思わせるメタル・ワークで、消費文化が生む余剰廃棄物の再生利用も探求してきた。
顧みられることのない素材を使うことで、意義を高め、尊厳の場を与えるとともに、深淵なメッセージも込めている。
「アートとは環境から生まれるもので、誰かが“新しく作る”ものではない」が持論。

高松宮殿下記念世界文化賞HPから抜粋

12メートルもの高さがある作品、会場の床から天井までを覆い尽くす壮大なもの。とにかくでかい。圧巻です。

エル・アナツイ《パースペクティブス》2015 © El ANATSUI 金沢21世紀美術館蔵 photo: KIOKU Keizo

『人の手を介して有機的に絡まり合い、共有した時間の流れがそのまま織物という形で表現されている。持続可能性、臨機応変さ、経済的・環境的課題に直面する地域社会の回復力をテーマに、消費文化が世界に与える影響などを表現した作品』とのこと。


離れてみたら、大きな一枚のタペストリーにしか見えないが、近くで見たらボトルキャップの廃材がひとつ一つ、繋がれている。

とんでもない労力と時間がかけられた作品だとわかります。

一枚一枚が繋がれている

さらに布のとしか思えない弛みやシワまで表現されていて、作品に大海原を思わせる、大きなうねりと躍動感を感じます。

波のうねりか風を感じる

アフリカ出身の作家という背景から、世界史の教科書で見た、黒人奴隷が隙間なく詰め込まれた、奴隷船の図が想起させられました。

また、一方でひとつひとつのボトルキャップの廃材が、世界に生きる私たち一人ひとりの人間にも見えてきました。

世界各地で紛争が起き、分断が深まる一方で、人々のつながりと連帯で社会が成り立っていることに改めて気付かされます。
そして同時に、その一人ひとりが自らのの未来を脅かす廃材を生み出している。そんな消費社会への皮肉みたいなものも感じられます。

この途方もない作品を、作者はどんな思いで繋いでいったのだろうか。
千羽鶴の祈りに似た感覚も伝わってくるようです。

私はこの作品に、人間社会の光と影を同時に見た思いでした。

皆さんはどう感じられたでしょうか?
また、素晴らしい作品をご一緒いたしましょう。

Lines(ラインズ)—意識を流れに合わせる
会場:金沢21世紀美術館
会期:2024年6月22日(土)ー10月14日(月・祝)
時間:10:00ー18:00
料金:一般 1,200円、大学生 800円
休館:月曜日(要確認)
https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=17&d=1822

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