わたしの空想読書旅行|#自粛明けにやりたいこと
旅に出る時、どの本を持っていくか、本棚の前で考える時間が好きだ。
電車の中、飛行機の中。
移動中ってどうしてあんなに読書がはかどるんだろう。
体も、思考も普段の日常からどんどん遠ざかって、まっさらな気持ちで目の前の景色や文章に触れる、シンプルな自分になる。
今年のゴールデンウィーク、旅に出ることはできないけれど、どこに行って何を読みたいか、空想読書旅行をしてみたいと思う。
初夏の北海道、過去のかけらを慈しむ旅
今、どこに一番行きたいか?と聞かれたら、迷わず北海道と答える。
生まれてから24歳までを過ごした大切な場所だから。
実家のあるニセコエリアに帰るまで、電車と飛行機を乗り継いで6時間はかかる。
3冊は読めるなぁ。何を持って行こう。
自宅から羽田空港へ向かい、空の上で読みたい本はこちら。
大好きな詩人、長田弘さんの一冊。
今日、あなたは空を見上げましたか。空は遠かったですか、近かったですか。雲はどんなかたちをしていましたか。風はどんな匂いがしましたか。あなたにとって、いい一日とはどんな一日ですか。
窓の外の青空を眺めながら、子どもの頃の情景や自然の美しさを描いた詩文集に、初夏の北海道への旅に心が弾んでくる。
北海道へ帰ったら、ニセコへ帰る前に、札幌の町をたっぷり味わおう。
私は、場所と記憶を紐づける性質があるらしく、特に大学の4年間と新卒入社した後の2年間を過ごした札幌の街を歩いていると、懐かしさに嬉しいやら切ないやら、と胸がいっぱいになる。
札幌駅の鐘の広場。
北海道大学のローン。
北海道立近代美術館に、三岸好太郎美術館。
西11丁目にあるカフェ、アトリエモリヒコ。
懐かしい友人たちに会えたら、夜はピープル・ピープのパフェを食べて、眠りにつきたい。
ーーーーー
札幌を満喫したら、翌日は朝からニセコへ向かう。
札幌からニセコまでの車窓の移り変わりはとてもダイナミックだ、と思う。
札幌から小樽へ、少しずつ空が広くなって、やがて一面に海が広がる。
海の青をたっぷり味わったら、次は緑。
余市の果樹園や田園風景を過ぎたら、山の力強い木々たちが目に飛び込んでくる。
そんな風景を楽しみながら、読みたいのはこちらの一冊。
「Suica」のペンギンの生みの親でもあるイラストレーターの坂崎さんが、本と恋と料理について綴ったエッセイ集。
坂崎さんが好きだった人や本について、記憶を切り取った文章を読んでいると、すごく優しい気持ちになる。
そして、自分の過去の記憶もよみがえってくる。
いつも「今が一番楽しい」と思って過ごしていたいけれど、過去を大切に慈しむ時間があってもいい。
ふと、万華鏡を思い浮かべた。筒のなかには細かい色紙の紙片が入っていて、筒をのぞきこむと、美しい模様が浮かびあがる。くるり、くるり。筒を廻すたび、模様は変化する。同じ模様には二度と出会えない、そしてどれが一番美しい模様なのかは、筒を廻し続けないとわからない。そしてそれを見ることができるのは、ただ自分ひとりなのだ。
むしろ、そんな万華鏡の一瞬のように、大切に思い出せる過去があるって幸せだな、と思いながら、実家のある街へ帰っていきたい。
ニセコに戻ったら、必ずいきたい場所がある。
有島記念館に併設されているブックカフェ。
ニセコ連邦と羊蹄山の眺めを楽しみながら、高野珈琲店の酸味が印象的なコーヒーをいただく。
そして、思う存分、何もしない時間を楽しむのだ。
ーーーーー
実家で家族との時間をたっぷり過ごしたら、少し後ろ髪をひかれながら帰路につく。
温かい時間の余韻を味わうように、読みたいのは「贈りもの」をテーマにした角田光代さんの短編集。
生まれてから死ぬまでに、私たちは、いったいどのくらいのものを人からもらうんだろう。
その答えは出ない。
きっとこれまで歩んできた道のりの中で、数え切れないほどの贈り物をもらってきたんだな、としんみりしながら日常へ戻っていく。
少しでもその贈り物を、誰かに渡していけたらいいな。
そんなことを思いながら。
ーーーーー
あきらとさんの #自粛明けにやりたいこと に参加しました。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?