本とわたし
先日、ふと今学んでいるコーチングと選書をかけ合わせたサービスができたらなぁ、と思いこんなことをツイートしてみました。
なぜコーチングと選書をかけ合わせたいのか。
それは、これまで数え切れないくらい本から新しい価値観を学び、刺激を受け、癒され、一歩踏み出すための勇気をもらったからです。
コーチングで自分と対話し、アンテナがより研ぎ澄まされた時、きっと素敵な文章から受ける影響との相乗効果があるのではないかな、と思います。
自分自身が本から受けた影響を思い出していたら、本への気持ちがあふれ出してきたので、今日はそのことを時系列で振り返ってみようと思います。
図書室の窓から見た、どこまでも広がる世界
私は札幌から2時間ほどの、北海道の小さな町で思春期を過ごしました。
今でこそ美味しい野菜や水があり、美しい山並みを毎日見られるふるさとの町が大好きですが、その頃は環境に自分の可能性を狭められている気がして、窮屈に感じていました。
なぜだかは分からないけれど自分に自信がなく、その自信のなさを必死に打ち消すために勉強に打ち込んでいました。心を許せる友人以外とは何を話していいか分からなくて悩んでいた記憶もあります。
そんな中、町の図書館がすごく大好きで、おすすめの本を教えてくれる司書さんの存在が私の世界を広げてくれました。
思春期の頃、繰り返し読んでいた本はこの5冊。
悩みながらも自分なりの価値観をまっすぐ表現していて、「普通」「世間体」にとらわれない主人公に憧れました。説教臭さは全然ないのに、悩んでいる時間があるなら、まず何かやってみようと駆け出したくなる一冊。
大げさでなく、「今日いちにちが楽しくなるかどうかは自分次第」という価値観をくれた本。生徒会長に立候補した時、海外でのホームステイに挑戦した時、好きな人に初めて告白した時…「えいっ!」と新しい世界に飛び込むたび、力を押してくれた一冊です。
友達づきあいに悩んだり、劣等感に落ち込んだりした時、そのヒントを探したくて心理学の本を食い入るように読んでいました。ユングの性格分析に特に興味を惹かれました。
「骨ごと溶けるような恋」をして、一途にずっと一人の人を想い続ける主人公の母・葉子さんが素敵すぎて…。この本を流れている空気感がすごく好きで、日曜の昼下がりに日当たりの良い部屋で読むのがとても心地よかったです。
「ねぇ、この本すごいんだけど!」と部活のメンバー数人みんなで度肝を抜かれた短歌集。10代特有のドキドキ感と、閉塞感と、焦りと、希望と…全部自分のことを書かれているような気持ちになりながら、繰り返し読んでいました。短歌の持つ余白の素晴らしさに気づいたのもこの一冊がきっかけでした。
夜の地下鉄で、昼下がりの図書館で、出会った言葉たち
念願叶って始めた札幌での大学生活、最初の2年間は人生で最も本を読まなかった期間かもしれません。
友人と夜中まで話したり、恋愛したり、やりたいことを始めたり、内省する時間もないまま駆け抜けた2年が過ぎ、就職活動に差し掛かった頃から、自然と読書の習慣が復活していきました。
自分がこれからどうやって生きていくのか、漠然とした不安を抱えながら、夜の地下鉄で、昼下がりの図書館で、大学の中庭で、様々な本を読みました。
当時読んだ中で、印象に残っているのはこの3冊。
その当時、恋愛小説を多く読んでいました。恋人たちが「さよならデート」をする表題作は、駅の待合で思わず泣きそうになりながら読みました。石田衣良さんの文章、主人公に対する優しさがにじみ出ていて好きです。
第一志望の会社に落ち、その後まもなく失恋し、気持ち的にどん底に落ちていた時に読んで、「人としてのあり方」を考えさせられた一冊。当時色々な友だちにそばにいてもらったけれど、それでも一人になると心細くて、そんな時のお守りのような存在でした。
当時憧れていた年上の友人に教えてもらい、言葉の美しさに感動した散文詩集。この本を開くと、どこにいても森の中で静かな朝を迎えているような気持ちになれます。今回紹介する本の中でも1番と言っていいほど読み返して、私にとって本当に特別な一冊です。
日常に足りないものを、言葉で補っていたあの頃
札幌で始めた社会人生活。当時、本当に忙しくて朝早くから終電近くまで働いて、家に帰ったら寝るだけ…ということも頻繁にありました。
会社では出せない感情を補うように、お気に入りのエッセイをカフェで読むのが休日の定番でした。
好きなカフェはたくさんあったけれど、中でも大きな窓から市電が見える「アトリエモリヒコ」と、レトロなマンションの一角に佇むブックカフェ「書庫303」で過ごす時間が至福でした。よく読んでいた本はこちら。
松浦弥太郎さんの心温まるエッセイ。一人暮らしを始めて、暮らしを楽しくするためのヒントもこの本からたくさんもらいました。どんなに疲れていても、この本のページをめくると何だかその日が良い1日だったように思えるような、不思議な力を持つ一冊。
札幌発のリトルプレス。「日々が旅。地図は、あなたの中に」というコンセプトで、編集者のお二人が大切にしてきたもの・アンテナに引っかかったものが紹介されています。同じ街にこんなに素敵な感性を持った人がいるなんて…とドキドキしながら読んで、この本がきっかけで町歩きが好きになりました。
本屋のアンテナを通して本に出会う喜び
やがて転勤で札幌から関西へ。
大阪のブックカフェ併設型書店「STANDARD BOOKS STORE」に、素敵な歌集・詩集が揃う「葉ね文庫」、神戸の個性的な古書店「honeycombBOOKS」、「1003」、「トンカ書店(現・花森書林)」…
関西はとにかく魅力的な本屋さんが多くて、そのアンテナを通して思いがけない本に出会うことが楽しかったです。
この頃見つけた大切な本はこちら。
本当に大好きで何度も読み返している一冊。私はどんな風に在りたいんだろう、そのためにはどんな風に働きたいんだろう…そんな問いが湧いてきて、大企業から心から魅力的だと思える照明を作っているメーカーに転職することを決めました。
遠い存在だったアーティスト達の存在を身近に感じさせてくれるアート小説。原田マハさんの小説を読んでから、美術館巡りがより楽しくなりました。
読んでいると心がやわらかくなる短歌集。天野さんの短歌を読んでいると、時間も場所も超えて色々な感情を味わえます。感性を解放したい時に読み返しています。
ブックコーディネーターの内沼晋太郎さんが手がけてきたブックプロジェクト・仕事に対する考え方がまとめられた一冊。この本を読んで好きなことを形にしたくなり、読書会の主催を始めました。
異国の地で、言葉と向き合う
夫の転勤でアメリカに住むことに。
急な変化に驚き、専業主婦という立場に少し宙ぶらりんな気持ちになったけれど、本とカフェと家族がいれば田舎でも楽しめることが分かった1年半。
アメリカでは日本以上に自分の価値観について尋ねられる機会が多くて、そんな時に私は本を読んで感じたことをよく話していました。
旅行するたびに個人経営の書店を訪ねていたのですが、中でもミネソタ州ミネアポリスの「Open Book」という本やライティングに関する複合施設は素晴らしくて感激しました。
読書する時間もグッと増えて、英語・日本語ともに言葉と向き合う時間がとれたこと、今振り返っても良かったです。
この時好きだった本はこちら。
「あたらしいわたし 禅100のメッセージ/廣瀬裕子・藤田一照」
エッセイストの廣瀬裕子さんが、僧侶の藤田一照さんに禅の考え方についてたずねた問答集。人生に何が起こるか、ではなく私自身がどうあるかが大切なんだと、改めて気付かせてくれる一冊。
カリフォルニア発のライフスタイルマガジン。この雑誌を初めて見つけた時の高揚感が忘れられません。
We believe: An ordinary life can be extraordinary, there is beauty in imperfection, and that magic can be found in the everyday.
「普通の生活だって特別になりえる。不完全の中に美しさがある。そして素敵な魔法は毎日の中に見つけられる」
このコンセプトも素晴らしいし、毎日を楽しむためのTipsや自分を愛するための考え方を読者から募って編集している姿勢も素敵。
川内さん自身の国連での勤務、パリでの生活の様子が生き生きと綴られている一冊。本編はもちろん、あとがきのこちらの言葉に何度も勇気をもらいました。
昨日、今日、明日を生きる中で経験した出会いと別れ、聞いた言葉、見た風景、耳にした歌、手痛い失敗や勘違い、歓喜や挫折のすべては、一見すればバラバラのように見えるかもしれないけれど、「今日」をきちんと生きていれば、いつしか点と点がつながって、未来の岸辺に続く道になる。今日をちゃんと生きていますか?
本を片手に、自分の道をつくっていく
こうやって振り返ると、その時々に課題はあったけれど、良いタイミングで素敵な言葉に出会いながら乗りきってきました。
帰国し、就職して早2年。希望していたHRの仕事につき、コーチングを学んでいる今も悩みは尽きません。
だけど、自分との対話をサポートしてくれるコーチがいて、多様な価値観を認めあえる仲間がいて、そして力をくれる本があるから日々少しずつ前に進めています。
もし今、目の前の課題に不安を感じていたり、自分が目指す方向に一歩踏み出したいという方がいたら、コーチングと選書の力で少しでもサポートできたら、本当に嬉しいです。
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