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地方の過疎化と都市一極集中

 皆さんこんにちは。カラフルデモクラシー、細々とですが活動しています。9月は「地方の過疎化と都市一極集中」をテーマに話をしました。話の内容の報告は改めてしますが、まずは私たちがあらかじめ勉強した情報をnoteを読んでくださる皆さんにも共有させていただこうと思います。

地方の過疎化と都市一極集中とは何ぞや

 日本では昭和30年以降の高度経済成長期に、地方の若者がより仕事のある都市部に流出する現象が起きました。その結果、特に大都市部では人口が増大し人口の「過密」問題が発生しました。
 一方若者が流出した農村漁村では人口の減少により、税収が低下し、例えば教育、医療、防災など、その地域で生きていくための基本的な条件の確保に支障をきたすようになってしまいました。また、産業の担い手が減ってしまうことで、その地域の生産機能も低下していってしまいます。
 このように都市には人口が集中し、地方には人がいなくなってしまい、そのことでそれぞれに様々な問題が発生してくるのではないか、という問題が地方の過疎化と都市一極集中です。

「過疎」とはどんなところなのか

 過疎とは以下のような人口要件・財政要件を満たす市町村のことです。
・人口要件   次のA,B,Cのいずれかに該当する。
 昭和35年から平成7年までの35年間の人口減少率が
 A. 30パーセント以上
 B. 25パーセント以上(なおかつ平成7年の高齢者比率が24パーセント以上)
 C .25パーセント以上(なおかつ平成7年の若年者比率が15パーセント以下)

※ 高齢者=65歳以上、若年者=15歳以上30歳未満
・財政力要件 
 平成22年度から平成24年度の三か年平均の財政力指数が0.49以下。
 平成29年度の改正により追加条件があります。

日本にはどのくらい過疎地域があるのか

 平成29年度時点で、過疎市町村の数は、全国1718自治体の47パーセントに当たる817自治体あります。過疎市町村の人口は1087万人余りで全国人口の8パーセントにすぎませんが、その面積は日本全体の半分以上を占めています。

過疎地域が抱える問題とは

 現在の過疎地域の人口減少は、高度成長期ほどの激しさはないものの、引き続き若者が流出することによる減少に加え、自然減(死亡者数が出生者数を上回る状態)による減少も重みを増しています。同時に全般的な高齢化が進んでいます。
 また、かつて基幹産業であった農林水産業が担い手不足により著しく衰退した上に、最近の経済環境のもとでは、過疎地域への新たな事業所などの進出は見込めません。
 そのほかにも、人口減少や高齢化、産業経済の衰退で地域社会の活力は著しく低下し、さらには医師不足など住民の命にかかわる問題も深刻化しようとしています。
 公共設備の整備も不十分な部分も多く、下水道、情報通信設備などのインフラ、医療・保険や生活交通などの基本的な部分での都市地域との格差も指摘されています。

過疎地域の役割とはなんだろうか

 そんな過疎地域を残す意味とは何でしょうか。実際に今、過疎地域はどのような役割を担っているのでしょうか。
 一番の大きな役割は、過疎地域の森林や農地、農村漁村による、国土の保全、水源の涵養、自然環境の保全、などの多面的な機能です。
 平成30年度に行われた過疎問題懇談会によるアンケート調査によると、過疎地域の役割について以下のような結果が出ました。

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過疎地域の社会的価値に関するアンケート調査(概要)より

過疎化の背景にある日本全体の人口減少

 過疎化の背景には日本全体の人口減少があります。日本は2008年をピークに人口減少に転じこれから本格的な人口減少社会に突入していくといわれています。何も手を打たなかった場合、2010年には1億2806万人であった日本の総人口は2050年には9708万人となり、今世紀末の2100年には4959万人まで減少すると試算されています。これは明治時代の水準と一緒です。
 今後、日本の人口減少は3つのプロセスを経て起こるとされています。ひとつづつみていきましょう。


第1段階 2040年までは「老年人口増加+生産・年少人口減少」となり、減少の速度はさほど早くない。
第2段階 2040年から2060年までは「老年人口維持・微減+生産・年少人口減少」となり、人口は横這い・微減が続く。
第3段階 2060年以降は「老年人口減少+生産・年少人口減少」となり、大幅に人口が減少する。


 この推移はあくまで日本全体で見た時のものであって、地域ごとにみると都市部ではまだ第一段階にいるのに対し、すでに地方では第2段階、第3段階に差し掛かっているところも多いです。この格差の理由が都市部への人口流出による地方の過疎化です。

地方からの流出の背景

 それではなぜ、人々は地方から流出していってしまうのでしょうか。さらに細かく見ていきましょう。日本の人口減少は細かく分けると三つの時期に起きています。一つ目は先述の高度経済成長期。その後第一次石油危機の到来により、日本経済が安定成長期に入ると、地方から都市部への人口流出の流れは一時落ち着きました。しかし、バブル経済期になると再び人口流出が始まります。この時はバブル経済崩壊によって都市部の経済が停滞し、逆に都市部への人口の回帰がみられました。第三の流出期は2000年以降の時期です。円高による製造業への打撃、公共事業の減少、人口減少などによって、地方の経済や雇用状況が悪化したことが要因でした。
 注視すべき点としては、一回目、二回目が大都市圏の「雇用吸収力の増大」(仕事が増えた)ことによる「プル型」であったことに対し、三回目の人口減少は地方の経済・雇用力の低下が原因となる「プッシュ型」になっていることです。プル型では積極的理由から地方から都会に人々が向かっていたのに対し、プッシュ型の人口流出では消極的な理由から人々は都会に向かっています。都市部には地方よりも雇用力があるとはいえ、非正規雇用が増大しているなど、必ずしも魅力的な労働環境にはなっていません。
 さらに、流出しているのが若者であるために、地方は将来子供を産む可能性のある「人口再生産能力」をもった世代を失っていることになり、人口は加速度的に減っていっています。

消滅可能性都市って?

 2010年から40年までの間に「20~39歳の女性人口」が5割以下に減少する市区町村は将来急激な人口減少に見舞われると予測され、「消滅可能性都市」と呼ばれます。一般社団法人北海道総合研究調査会の推計によるとこのような自治体は896あり、全体の49.8%に上るとされています。都道府県別にみると消滅可能性都市が8割以上を占めるのは、青森県、岩手県、秋田県、山形県、島根県、の五県に上ります。5割以上になる都道府県を数えると24都道府県にも達します。

田園回帰って?

 一方、今まで地方から流出する一方だった若者ですが、最近地方で暮らしたいと考える若者が増え、田園回帰と呼ばれています。総務省の田園回帰に関する調査研究会の都市住民に対するアンケートでも、農村漁村地域に移住してみたいと答えたのは全体の30.6%で、20代と30代が特に多い結果となりました。ただし、実際にどの程度の人が移住しているかというと正確な調査はなく、わかっていません。しかし手掛かりとなるものとして、2014年度、自治体の支援策を使うなどして移住した人が1万1735任だったことが分かっており、この数は2009年からの5年間で4倍以上になっています。また、あくまで自治体の支援を使っての移住者のみの数字なので、自力で移住した人もいると考えると、地方への移住者が増えていることは間違いなさそうです。

関係人口って?

 関係人口は新しい人口の考え方です。観光以上定住未満の、多様なやり方で地域とかかわる人を指します。地域に関わるには住んでいることが必要条件、という価値観を壊し、住んでいなくてもかかわることができる!というこの考え方は、過疎化解決を考えるうえで未来への可能性を秘めた考え方として注目されています。関係人口には様々なタイプが考えられますが、大きく分けて4つのグループに分けて考えることができます。
① 地域のシェアハウスに住んで、行政と協働でまちづくりのイベントを企画・運営するディレクタータイプ。
② 東京でその地域のPRをするときに活躍してくれる、都市と地方を結ぶハブ的存在。
③ 都会暮らしをしながら、地方にも拠点をもつ「ダブルローカル」を実践する。
④ 「圧倒的にその地域が好き」というシンプルなかかわり方。


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https://share-study.net/university-local-economy/ より

 この図では階段を上がれば上がるほど関係の度合いは強くなりますが、関係人口の考え方では必ずしもより上の段に行くことを目標とはしていません。また、関係人口になる側は必ずしも一つの地域の関係人口になる必要はなく、複数の地域の関係人口になることができます。このため、定住人口のように、限られたパイを自治体が取り合うようなことにはなりません。

一極集中のメリットは?

 地方が過疎化によってさまざまな問題を抱える一方、都市部も過密によって、高齢者施設の不足や、公共交通機関の慢性的な混雑、防災的な観点など、様々な面で問題を抱えています。
 でも、メリットもあるのではないでしょうか。都市部への一極集中のメリットとしては以下のようなことがあげられます。
 東京には日本の大企業の7割が本社を置いています。その理由としては①仕入れ、販売など取引に有利(40%)、②中央省庁との接触が便利(20%)、自社の支社・営業所・工場の統率に便利(10%)、④人材確保・金融取引に有利(10%)、⑤情報発信力が強く影響力がある(10%)となっています。
 東京などに一極集中することで東京圏民で2000~3000万人級の巨大市場が形成されています。労働市場も東京に集中しており、東京で日本全体の4割の大学生が学び、就職時には7割の若者が東京に仕事を求めてやってきます。
 また江戸時代から400年以上首都機能を保持してきた東京のブランド力は高く、東京にオフィスを構える企業、各種団体へのプラスイメージにつながっています。世界でも、ニューヨーク、パリ、ロンドンなどと並んで、TOKYOの知名度は高くなっており、外国人観光客も多くやってきます。

一極集中のデメリット

 先に述べたように、一極集中にはデメリットもあります。もう少し詳しく見ておきましょう。
 一番大きなデメリットは危機管理の観点からです。東京の港区、中央区、千代田区で構成される「都心3区(42.2平方キロメートル)」のなかに、政治、行政、経済、情報、教育、文化などの中枢的な機能が集中しているといわれます。例えば首都直下型地震が発生したとすると、首相官邸、各省庁、国会、裁判所などの国の三権をはじめとする機能が停止し、日本全土を麻痺させる可能性があるのです。また、その損害は数兆円規模にもなるといわれています。
 また、都市部では出生率が低くなることも分かっています。原因としては地方出身者にとっては親が地方にいるために手助けをしてもらえないこと、また地方に比べて近所付き合いが希薄であることなどが考えられています。
 このような大都市圏での出生率の低下は日本に限らず多くの国で報告されている共通の現象ですが、日本では若者の流入が大規模に進んだため、日本全体の人口減少に拍車をかける結果になっています。
 また、今こそなんとかもっているものの問題になりませんが、東京都もやがて人口減少の第三段階に入ります。そうなったとき、高齢化による問題が地方よりも困難な状況で降りかかってくるかもしてません。


 この記事は事前配布した資料の内容をほぼそのまま転載しました。これらの情報をもとに九月のカラフルデモクラシーでは話をしました。皆の話の内容は次の記事にしたいと思います。ぜひ読んでください。

参考資料

総務省過疎問題懇談会 資料   
全国過疎地域自立促進連盟 ホームページ   
YAHOO!ニュース THE PAGE 記事  
関係人口をつくる  定住でも交流でもないローカルイノベーション
著者  ローカルジャーナリスト・ 田中輝美       木楽社
地方消滅  東京一極集中が招く人口急減
著者  増田寛也      中公新書



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