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おなかいっぱい胸いっぱい、花火の夜

急きょ、一泊旅行に行ってきた。双子の娘たち(6歳)と夫との、家族旅行だ。

夫の都合により、夏期休暇の日程が前倒しになってしまい、今夏の計画が大きく変わった。

8月に予定していた旅行に行けなくなったかわりに、近場へ小旅行することにした。

よし、琵琶湖にしよう。

ちょうど「大津志賀花火大会」が開催される日だ。見たい。近隣のホテルにかけあってみたら、特別室なるものが予約できた。ちょっとお高いけれど、仕方がない。

酷暑のなか、滋賀県へ向かう。娘たちにとってははじめての花火大会だ。2歳のときに大きな花火大会を観覧したことはあるものの、彼女たちの記憶には残っていないそうだ。

ホテルについてすぐプールで泳いでお腹を空かせていた娘たちは夕食をぺろりと平らげ、わたしたち親をせかす。

「ねえねえ、花火、まだ?」

鮎にビワマスに小ぶりだけどアワビに……。
おいしゅうございました!
近江牛をさっと焼いて。
やわらかく、甘く……。最高でした。

あわただしいなかでも、おいしいお料理たちをさらりと、すばやく堪能するのはわたしの得意技である。双子育児をするうちに身につけた。

さあ、いよいよ花火大会へ。ホテルのお部屋からも見えるのだけれど、やっぱりあの大きな打ち上げ音が聞きたい。あれも花火大会観覧の醍醐味だと思う。

ホテルを出、食後の腹ごなしもかねて湖畔を歩く。

この花火大会に娘たちを連れてくることは、わたしの小さな夢だった。

8年前、同じ大津志賀花火大会に来たわたしは、とても悩んでいた。仕事をしながら子育てすることについて考えはじめるべきか、判断できなかったのだ。

当時のわたしは30代なかばにさしかかっていた。子どもを持ちたいと思うなら、そろそろ真剣に考えなくてはならなかった。

ただ、仕事じたいに対して壁を感じていた頃でもあった。そんな時期に子どもを望むのは、なんだか「逃げ」のように感じられた。育児に奮闘している方たちに失礼な気がして、わたしなんかが子どもを考えていいのだろうかと思い詰めた。

もやのような気持ちを抱えていたわたしを連れ出してくれたのは夫だった。

「花火大会いこう。近江舞子の水泳場で上がる花火はおすすめやで」

そのときに撮った写真がこれだ。

改めて見ると「なんやこれ、へたすぎるやん」と
衝撃を受けました。

昔から写真を撮るのが苦手なわたしだけれど、これはまたとんでもなく下手くそだ。カメラロールにはこんな写真ばかりが残されていた。

今年はきれいに撮れるだろうかと思いながら、打ち上げ開始を待った。

爆音とともに花火が打ち上げられ始めると、娘たちは大騒ぎだった。

「なに、すごい! きらきら! どーん! ってなってる! こんなんなるの?!」

まだ少ないボキャブラリーで、大きな花火を見た興奮を表現してくれる。家の近くでやった手持ち花火とは比べものにならないダイナミックな光に驚き、心を奪われているのがよくわかる。

8年前、子どもを持っていいのかわからないまま同じ花火大会を見た。その4か月後に双子を授かり、1年後に出産した。

そうして産んだ娘たちとまた琵琶湖畔で花火を見上げている。なんだか感慨深い。

水面に映る花火は風情があって素敵です。
8年前よりうまく撮れたのでは?
フィナーレ近く。
大輪の花火が心まで明るく照らしてくれました。

今年の花火は、ずいぶんきれいに撮れた。わたしが成長したのか、iPhoneが進化しただけなのかはわからない。

それでも、娘たちは健やかに育ってくれているし、わたしも心穏やかに暮らしている。

世の中、わからないままでいいこともあるんじゃないかと思う。


#夏の写真

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