内包物を抱きしめた人生だって、ありよりのあり
しばらく前に、サブピアスを失くしたと書いた。わたしは右耳にピアスホールが二つあって、メインピアスの隣に小さなサブピアスをつけるのを自分のなかで定番としている。
一週間に三度はつけていたサブピアスを失くしてしまった。0.15カラットのダイヤモンドがついたホワイトゴールドのピアスだ。
すっかり右耳が寂しくなってしまっていたが、少し前に新しいダイヤモンドのピアスを購入した。前髪が薄くなりそうなほど悩んで、悩んで、0.21カラットのプラチナ製のものを。
購入したのはあるジュエリーショップ。以前、ネックレスをつくっていただいたことがあるお店だけに、わたしにしては気がねなくお店の方に相談できる。
お話を聞いていると、両耳で0.5カラット程度のダイヤモンドピアスは人気があるという。片耳売りにも対応しているとのことで、0.15カラット〜0.25カラットあたりの一粒ダイヤモンドピアスをいろいろ見せていただいた。
そのなかに一つ、お値段が控えめなのにほかのものより少しだけ大きく見えるピアスがあった。
「そちらは0.2カラットアップなので、サブピアスとしてはけっこう存在感があります」
わたしのような素人の目にはとてもきれいに見える、素敵なものだった。
しかし、お店の方は続けた。
「ただ、内包物が一つあります。ルーペで見るとしっかりわかるんですが、ぱっと見ではわかりません」
わたしもルーペをのぞかせてもらったが、たしかになにか見える。
とはいえ、ルーペなしで見ると美しいダイヤモンドだ。
ダイヤモンドは天然の産物だから、不純物を内部に含んでいるものがある。この内包物はインクルージョンとも呼ばれ、ダイヤモンドの個性とされることもあるそうだ。
まるで人間みたいだと思う。人だって内にいろいろなもの秘めていて、それはときに不純だったり、傷だったりする。わたしたちはAIじゃない。
お店の方も言っていた。
「内包物があるダイヤモンドっておもしろいんですよ。天然ならではの個性ですよね」
そうして、わたしは悩みに悩んだ結果、ルーペで内包物が確認できる0.21カラットのダイヤモンドピアスを購入した。
セールストークにのせられてしまったかなあ、なんて思いながらカフェで休憩していると、若い男女グループの会話が聞こえてきた。
「それは、ありよりのありでしょ!」
うーん、うまいこと内包物入りのダイヤモンドを買ってしまったかもしれない。
でも、内にある傷や不純物がひそかにきらめく人生を歩んでみたいわたしにとっては、ありよりのありだ。