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今は「たからもの」でいいじゃない

娘とは、親から見て子である女性を指す。妹とは、親を同じくする年下の女きょうだい。このあたりのことは、日本語を操れる人のほとんどが理解しているだろう。

ところが、うちの双子の娘たち(6歳)はいまいちこれをわかっていないことが判明した。私が「誰それの弟が……」なんていう話をしていたとき、彼女たちがすかさず「弟って男の子?」と聞いてきたことがあった。「息子ってなに?」と夫に尋ねていたことも。

家族の関係を表す言葉が覚えきれていないのだ。ということで、「親」「娘」「息子」「妹」「弟」に加え、「おじいちゃん」「おばあちゃん」あたりの語とそれが指すところの人を教えてみた。彼女たちは、ふんふんと聞いていた。

しかし。しかし、だ。

「ママから見て、長女ちゃんと次女ちゃんはなにかなー?」と質問してみたところ、予想外の答えが返ってきた。

双子「たからもの!」
私 「……」

ぜんぜんわかってない。私が娘たちに向かって「長女ちゃんと次女ちゃんは、ママの宝物だよー」としょっちゅう言っているものだから、そのままそれを覚えてしまったのだ。一般的に正解とされる答えは「娘」なのに。

夜、寝かしつけのときに「ママの宝物なんだからね」。いっしょに工作をしながら「長女ちゃんも次女ちゃんも大好き。ママの宝物だよ!」。彼女たちが赤ちゃんだった頃から、私はずっと言い続けてきた。自分の愛情をしっかり伝えたかったからだ。

そのため、娘たちは自分と親である私との関係を「母と娘」ではなく、「ママと宝物」と思いこんでいるよう。このままだと、「娘」という言葉とその意味するところを覚えるのにちょっと時間がかかるかもしれない。

でも、私自身の子ども時代を思うと、母から愛情ほとばしる言葉を受け取ったときは嬉しかったものだ。母は私によく「ちなみちゃん、だーいっきっ!」と言っていた。大好き、という言葉を舌足らずな調子にしたそれは、私にとって幸せのかたまりみたいだった。子ども心にもほわほわと響き、ものすごくいいものに思えた。

「娘」とはなにか、「親」とは誰を指すのか。そういうことは、娘たちも成長する過程でいやでも覚えていくだろうし、ほかの言葉だって自然と使えるようになるに違いない。

それよりも今は「宝物である自分」をうんと味わってほしいと思い直した。彼女たちに「『娘』ってなんだっけ?」と繰り返し尋ねられても焦らずにいよう。

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