わたしの「分」をさがして
Instagramで素敵な口紅に出会った。広告的に表示された投稿に、わたしの目は釘づけになってしまった。
そこにはクレ・ド・ポー ボーテの「ル・ルージュプレシュー」が映っていた。
ケースも美しければ、こっくりとした色出しも美しい。「これは塗ったら夢見心地な感じの口紅なのでは……?」と思い、お値段を見てびっくり。
13200円。
さ、さすがクレ・ド・ポーさま、とひれ伏しそうになった。いつも使っている口紅が3本買える。13200円。大事なことなので2回言いました。
貧乏性のわたし、これを買ってしまったら商品名のとおり大切にしすぎて使えなさそうだ(précieux=「大切な」を意味するフランス語)。
ふだんはMACの「リップスティック(クリームシーン)」を塗りつけてお化粧を仕上げている。こってり色がのるのでさっとパッと血色がよくなる。色もちもいい気がする。
もちろん、MACも素晴らしいのだけれど、あれからクレ・ド・ポーが気になって仕方がない。以前、使ったことがある化粧下地も、とてもよかった。
でも、ふと思うのだ。
「わたしの唇に13200円の色をまとう価値はある?」と。
わたしは唇のお手入れが雑というか、夜寝る前にリップクリームを塗っておしまい、なのだ。一応、お化粧のときにはリップ下地を使うけれど、それでじゅうぶんなのか自信がない。あ、余談ながら、THREEの「リップコンシャスプロテクター」を使っている(すごくいい)。
ときどき皮がめくれてしまう唇に一万円超えの口紅を塗るのはなんとなく後ろめたい。映えないだろうな、と予想もできる。
日本語には「分不相応」という残酷な言葉だってある。わたしの暮らしぶりに、13200円の口紅はそぐわない。
こういうふうに一本の口紅をめぐってぶつぶつ呟いては、真剣に自分の「分」を見極めようとしていたのが最近のこと。
……ここまで書いておきながら、優美なあの口紅にチャレンジはしないと思う。きっとわたしにはもったいない逸品だから。
ただ、いつかこういう美しい口紅を持っても違和感のない女性になりたいという目標はできた。
一週間ほど前から唇のお手入れをいつもよりは念入りにしている。憧れにはパワーがある。